週刊 あはきワールド 2011年8月24・31日合併号 No.246

災害時に鍼灸は何ができるのか

「災害と鍼灸」シンポジウム開催される


「災害と鍼灸」シンポジウムの様子。各演者の発表後、演者は壇上に勢ぞろい。フロアの質問に答えた     



 「災害と鍼灸」をテーマにした「災害と鍼灸」シンポジウム(社団法人全日本鍼灸学会共催社会鍼灸学研究会)が8月20日、東京都江東区の東京有明医療大学 HANADA HALLで開催された。6題の発表や指定発言などが行われた。



       嶺聡一郎氏

1席目は嶺聡一郎氏(名古屋医専)による「東日本大震災における日本の災害時鍼灸医療の実態」。嶺氏は東日本大震災による被害に対して、日本の鍼灸医療がどのような活動を展開したかを鍼灸治療を用いた被災地支援活動を行った団体にアンケート調査し、その結果を発表した。福島県鍼灸師会や災害鍼灸マッサージプロジェクト、AMDAなどの活動が紹介された。


      樋口秀吉氏
 2席目は樋口秀吉氏(宮城県鍼灸師会会長)による「東日本大震災の現地から、宮城の実情と鍼灸ボランティア」。宮城郡松島町に住む樋口氏は治療院で診療中に被災。その直後の様子や、壊れた治療院を修理し、「被災者支援プロジェクトチーム 東洋医療 ボランティアセンター基地局」を立ち上げ、そこを基点に鍼灸ボランティアを展開していった様子をスライドを紹介しながら発表した。



       三輪正敬氏
 3席目は『あはきワールド』で「震災時に鍼灸マッサージ師ができること」を8回連載している三輪正敬氏(災害鍼灸マッサージプロジェクト代表)による「被災地支援における鍼灸マッサージ団体の役割」。三輪氏は、鍼灸マッサージが災害時に果たせる役割や、災害鍼灸マッサージプロジェクトがどのようなことに留意し、撤収まで行ってきたか、という活動の特徴、さらには活動を通して見えてきた課題などを紹介した。


   マイケル・O・スミス氏
 4席目はマイケル・O・スミス氏(National Acupuncture Detoxification Association:NADA)による「PTSDと鍼灸」。スミス氏は、2001年のワールド・トレード・センターの911事件や2005年のハリケーン・カタリナなどの災害時におけるPTSDの治療に活用されているNADAの耳鍼治療について解説。3~5穴に置鍼して、一度に6~50人を治療するというNADAの耳鍼治療への会場の関心は高く、「なぜその5穴なのか」「どのように刺すのか」といった質問が数多く投げかけられた。


      小野直哉氏
 5席目は小野直哉氏(財団法人未来工学研究所、京都大学大学院医学研究科)による「災害と鍼灸―キューバや米国を例として―」。小野氏は東日本大震災における医療システムの現状を分析したうえで、「今後予想されるネクスト・クライシスを考慮すれば、既存の医療システムでは持続可能な医療の展開は困難である」とし、「新たな医療モデルを構築するうえで、伝統医学や相補・代替医療を有効活用し、近代西洋医学と併用する“ハイブリットな医療”=“統合医療”の考えが必要になる」とした。さらに、災害支援に鍼治療等の伝統医学や相補・代替医療が用いられている先進事例として米国やキューバの例を取り上げて日本の「新たな医療モデル」への探索的検討を行った。


      伊藤和憲氏
 6席目は伊藤和憲氏(明治国際医療大学)による「災害時の鍼灸支援と医療連携のあり方―AMDAにおける医療活動を通じて―」。AMDA(The Association of Medical Doctors of Asia)は紛争や災害時に緊急人道支援活動を行う医療組織で、東日本大震災ではその支援活動の中に鍼灸治療が導入され、伊藤氏らが鍼灸師として、その活動に参加。伊藤氏はその活動の様子や、また支援活動を通して感じた災害時の鍼灸支援と医療連携のあり方について解説した。


      坂部昌明氏
 また、6人の演者の発表後、指定発言者として、坂部昌明氏(森ノ宮医療大学)が「制度面からみた災害支援のための鍼灸」と題して発表。坂部氏は「制度上、被災地住民に対する医療支援として鍼灸は非常に有利である」とし、その理由として、「往診が許されていることと、自己の裁量による施術が可能である」という2点を挙げた。さらに、「被災三県に派遣された法医学者は国からの補償のもと業務に従事していた」ことを紹介し、その根拠法令として「警察官の職務に協力援助した者の災害給付に関する法律」や「地方公務員災害補償法」を挙げ、「これらは鍼灸師にも適用される可能性が高く、こういった制度の利用も積極的に検討する必要がある」とした。



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