週刊あはきワールドへようこそ! 2011年3月30日・4月6日
合併号 No.227

■レポート

避難所での鍼灸ボランティア治療活動

東北関東大震災時の福島県鍼灸師会の取り組み

福島県鍼灸師会青年部 今泉洋平


      サービステントを設置して鍼灸ボランティア活動をする福島県鍼灸師会の有志










 東北関東大震災で亡くなられた方々に、心からご冥福をお祈り申し上げます。また、被災された方々には、心よりお見舞い申し上げ、早く元気を取り戻せるよう願っております。

 福島県鍼灸師会では、各地区の会員が県内各所の避難所においてボランティア治療を行っています。ここでは、郡山市のビッグパレットふくしまで行っているボランティア治療と運動指導についてご紹介します。

鍼灸ボランティア治療は2人の鍼灸マッサージ師から始まった!

 ビッグパレットふくしまは、主に原発周辺の富岡町と川内村から避難した住民2,500人が生活している県内最大の避難所です。広い避難所内は、廊下もホールもエントランスも関係なく、細い通路を残して人と毛布で埋め尽くされています。3月の郡山は昼間の寒さが緩んできたものの、まだ朝の冷え込みがあり、氷点下まで下がる日も多くあります。避難所内は場所によって非常に寒いところもあり、とても生活できる環境とは言えません。

 ここでのボランティア治療は、私ともう1人の鍼灸マッサージ師の2人で始めました。この避難所内の救護所は、避難元の役場職員の保健師さんたちで運営されています。保健師さんたちは当然郡山のことに詳しくなく、私たちが病院へ行く方のために病院の電話番号を調べたり、道順を教えたり、救護所で必要な物品の買い出しに走ったりという手伝いを行いました。

サービステントを設置して本格的なボランティア活動へ

 ボランティアを始めて数日間は、様々な手伝いの合間に鍼灸・マッサージの治療を提供する形で行っていました。その後、日曜・祝日には市内にいる先生方5~6名のメンバーが集まりました。そこでサービステントとベッド数台の機材を持ち込み、救護所の一角で本格的なボランティア治療ブースを開設することができました。

 サービステントを設置すると見た目にも目立ちます。次々と治療を希望する方が訪れ、休む暇がないほどになりました。

 治療を受ける避難者の生活は、狭いスペースを分け合いながら冷たく固い床に雑魚寝し、初めはお風呂も週に1回入れればよい方、という過酷な環境です。加えて、不安による精神的ストレス等も重なり、心身は悲鳴を上げています。

 そんな中で治療を受けた方々は、皆満足そうな笑顔をみせ、「楽になった」「軽くなった」「明日も来てくれるのかい?」と声をかけてくれます。そういう笑顔を見て、鍼灸の人を元気にする力を再確認できました。

鍼灸治療に加え、エコノミークラス症候群予防のための運動指導も行う

 また、マスコミ等でも盛んに報道されていて有名ですが、避難所生活ではエコノミークラス症候群が心配です。参加した先生の奥様(介護予防運動指導員の資格をもつ看護師で、高齢者への筋トレ指導の経験も豊富)が運動指導のリーダーとなり、広い避難所内の各所に出向いて、エコノミークラス症候群予防のための出前運動教室を実施しました。

 今回ボランティア治療に参加したメンバーは、偶然にも全員が介護予防運動指導員の有資格者か、養成講座を受講して合格通知待ちの先生方でしたので、治療と運動指導を交代で行いました。

 エコノミークラス症候群について、さかんに報道されているものの、避難者の方々には運動の必要性を認識していない方も多いようです。運動の際にかけ声をかけても、初めはただ見ているだけの方も多くいます。しかし、始めてから1分も過ぎると、見える範囲のほとんどの方が一緒に体を動かし始めます。高齢者だけでなく若い方たちも一緒にです。それだけ体が固まっていて、その体をどうにかしてほぐしたいと感じているのだと思います。運動の後は治療と同じように、皆さん揃って笑顔になり、喜んでくれています。運動後は暗い雰囲気の避難所がパッと明るくなり、こちらも元気をもらえるように感じます。

避難生活者の中長期的な問題は筋力低下

 避難所生活が長引いてくると、問題はエコノミークラス症候群だけではありません。様々な物資が避難所内で手に入ることは、大変良いことですが、そうなると日常生活に比べてより一層体を動かす機会が少なくなります。短期的に問題だったのはエコノミークラス症候群でしたが、中長期的に見ると筋力低下の影響が加わってきます。避難生活が終われば、それぞれ自分の足で立って家事を行い、自分の足で歩いて買い物に行かなければなりません。その時のために、特に高齢者は「立つ・歩く」という運動機能が衰えないような訓練が必要です。今後はエコノミークラス症候群から筋力アップに視点を変えていく必要性を感じます。筋力アップに視点を移すと、これは正に介護予防の視点です。普段行っている介護予防運動指導のスキルが、この状況で生かせるとは考えていなかったことです。

 運動指導では、少ない人数でたくさんの方々に運動してもらう事ができます。避難所で多くの方々の健康を維持するためには、たいへん効率的な方法です。地震発生後2週間目に入ると、被害の小さい郡山市では水道や電話がほぼ復旧して、市民生活はだんだん落ち着きを取り戻し、我々の仕事も通常業務に戻りました。そうすると毎日時間をかけて治療に訪れることはなかなかできません。しかし、運動指導であれば1時間程度でも避難所内を何カ所も回ることができます。そこで、平日は昼休みを利用して運動指導に訪れています。また、この運動指導では、福島県鍼灸師会と親交のある市内の総合病院運動療法科の先生方と一緒に活動しています。我々と一緒に活動してくださる方々がいるのはとても心強いことです。また、救護所を運営する自治体職員の方々にとっても、地元の様々な医療職がサポートに入ることは、わずかでも精神的な支えになっているのではないかと推測しています。

今はALL JAPANで一人一人の持てる力を全て集結させる時

 鍼灸師になってまだ2年の私が評価するのもおかしなことですが、福島県鍼灸師会としては今回の震災に際し、燃料不足など様々な障害があったにもかかわらず、迅速に行動し、避難されている方々へのボランティア治療も非常にスムーズに提供できていると感じます。これは、普段からの会員同士の連携が強力であり、東洋療法研修試験財団の生涯研修への参加、日鍼会の専門領域研修の推進、全国の鍼灸師会でも多い研修単位など、県民の健康を守る使命を目的として活発に活動している成果ではないかと思います。

 今回の震災の影響はとても大きく、避難している方々の生活も全く見通しが付かない状況です。我々のように比較的被災地に近い住民には、被災者の方々を継続的にサポートをしていく使命があります。また被災地から離れた方々にもできることが何かしらあるのではないかと思います。今はALL JAPANで一人一人の持てる力を全て集結させる時です。

 震災被災地は必ず復興します。全国の仲間の力を信じています。

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