週刊あはきワールドへようこそ! 2011年6月1日号 No.235

良導絡治療ってなぁに 第16回


小児の良導絡

~疳の虫に対する良導絡治療~


日本良導絡自律神経学会 市村由美子

 昔は子供がキーキー声を出してぐずったり、夜泣きして親を困らせていると近所のお年寄りが「カンノムシ」には小児鍼が良いと話していたものです。最近はおせっかいをするご近所さんもあまりなく、小児鍼という言葉も知られなくなりつつあります。

 疳の虫の症状にもいろいろありますが、今回は特に夜泣き、食欲がないといった症状の疳の虫に対して行った治療を紹介します。

1.子供に出やすい症状

 疳の虫は特定の疾患・病名をさすのではなく生後3カ月位から5歳位までの小児が引き起こす種々の症状に対する俗称をいいます。主な症状には、夜泣き、食欲がない、便秘や下痢、しばしば熱を出したりひきつけを起こすなどがあります。原因としては、神経性素因、肉体・精神の発達のアンバランスなどによるものとされ、現代医学的には、小児神経症の一種と考えられています。最近では、親の愛情不足や子供を取り巻く生活環境も大きく関与していると思われます。

1)疳虫
 疳虫は俗に「かんが高い」とか「かんが強い」といわれるもので、小児が異常に興奮しやすくなっている状態をさします。不機嫌だったり、イライラしたり、ちょっとした物音に驚く、寝ている時でも薄目を開けているなどの症状が出ます。また、奇声(かん高い声)をあげたり、行動が粗暴になったり、夜泣き、必要以上に泣くなどの症状も出ることがあります。

 疳虫はこのような神経症状だけでなく、身体症状としても現れます。顔色は一般に青白く、目つきが鋭くなります。いわゆる目が据わったという状態です。目と目及び眉毛と眉毛の間や顔に青筋(静脈の怒張)が現れ、眼瞼のただれや、外鼻孔・鼻の下の発赤なども現れます。そのほか、爪をかんだり、ふやけるほど指をしゃぶったりすることもあります。

 原因としては、神経性素質がもともとあったり、騒がしい環境におかれたり、特に第2子以後は疳虫になりやすい傾向にあります。栄養の不適切、特に糖分の過剰摂取も関係します。乳幼児期における精神と身体の急速な発育の為に生じるアンバランスな状態によって起こる神経症によります。行動意欲があるのに体は動かない、何か欲しいのに言葉が不十分でそれを訴えることができないといった不満やもどかしさが一種の精神興奮を呈し今まで述べたような行動に出ます。大脳の発育が不十分なため、新しい刺激の感受が整理できず、そのために情緒不安定になることが考えられます。


2)夜驚症
 就学前の神経質な小児に多く、睡眠中に突然驚いたり、不思議な行動を取ったりしますが、覚醒はしません。持続時間は数分続いたり、また、数日続くこともあります。

 原因として考えられるのは、空腹や喉の渇き、消化不良、湿疹、中耳炎、窮屈な衣服を着て寝ているなどがあげられます。また、昼間に非常に強い精神感動を受けたり、恐ろしい物語を聞いたりした精神面からも起こることがあります。

3)どもり
 眉をしかめたり、眼を強く閉じる、唾を飲み込んだり、後方へ体を伸展させる、拳を握る、地団太を踏むなどの動作が言語を発しようと努力する際にみられます。4歳頃の言語発達の著明な時期などに起こりやすいとされています。

 原因としては、器質的な言語障害として小脳疾患、脳性麻痺などで起こることもありますが、大部分は神経性習慣で機能的なものです。また、左利きを右に矯正したときに発することもあります。

4)ひきつけ
 全身の筋肉が、収縮して棒状に強直し、眼は引きつり、手は固く握って苦脳状を呈し、瞬間的に意識は消失します。

 原因としては、離乳期前後から2~3歳の幼児に多いものは習慣性痙攣といいちょっとした刺激で起こる場合があります。これは痙攣性体質により便秘で起こることが多くあります。また、39℃ぐらいの発熱で熱性痙攣を起こすこともあります。

2.症例

 対象は、疳の虫症状(特に夜泣き・便秘・イライラすると噛みつく)のある1歳6カ月の男児で、測定期間は、2008年6月5日~2008年6月20日の16日間で、のべ13回良導絡測定をし、症状の改善を目的に小児鍼での治療を5回行い、ノイロメトリーにどのような変化が現れるかを調べました。

ー測定条件ー
①無処置時(子供の気持ちが落ち着いて)と治療直後に行いました。
②30分間外で遊んだ後に、無処置で測定を行いました。
③症状が改善した時と、外で遊んだ活動時のノイロメトリーの変化を比較しました。
 測定機器は、ロイヤルエイトを使用しました。

ー治療方法ー
 治療する際にはノイロメトリー測定後、異常良導絡の興抑点に金粒を貼付しました。治療効果を持続させる目的で、異常良導絡に金粒貼付を行いましたが、違和感を感じるのか、すぐにはずそうとしたため、刺激を弱くするために興奮点には、軽く貼付するのみにし、抑制点には少し圧を加えて貼付刺激をするように心がけました。

 小児鍼は臍周辺の腹部、身柱周辺の肩背部、腎兪周辺の腰部、足三里周囲の下腿部に軽く2~3分行いました。

3.結果

結果① 無処置時と治療直後のノイロメトリー比較(図1)


                               図1


















 いずれもH系が高く、F系が低いパターンを示し、共に変化を見ませんでした。

 平均電流量が高いということは、皮膚通電抵抗が低い状態で交感神経緊張型と見ることができます。

 このパターンは良導絡症候群表にあるように、H系の興奮は、便秘・疲れやすい、肩こりや腹痛の症状が出やすく、F系の抑制は、便通異常、腹部膨満感、不眠、眼の異常などの症状が出るとあります。今回測定した小児の症状とも一致しています。

 パターンには変動がみられませんでしたが、普段は全くしない昼寝を、治療3時間後に1時間45分し、昼食後に排便をしました。この日、お茶など水分はあまり飲まず、再び夕方1時間ほど眠りました。パターンの変動は見られませんでしたが、小児は感受性がとても高いために金粒貼付や、2~3分の小児鍼という軽い刺激によっても、身体へは何らかの変化が起きていると考えられます。

 しかし、治療回数が増すにつれ、ノイロメトリーのパターンにも、治療効果が持続しているような変化が現れ、症状も徐々に安定してきました。

結果② 3回目の治療前後のノイロメトリーの比較(図2)


                               図2


















 治療前・後のノイロメトリーパターンをみると、治療後は今までよりも測定値の変動が大きく、特にF系での変動が大きく現れました。この頃には毎日排便もあり、夜間に起きることも無く、睡眠も十分に取れるようになり症状の改善も見られました。このことからF系の変動が、大きく現れるというパターンは、疳の虫症状の改善と結び付くのではないかと推察されました。

結果③ 1回目の治療後と症状改善時(3回目の治療後)のノイロメトリーの
    比較
(図3)


                               図3


















 3回目の治療後は1回目のノイロメトリーパターンと比較すると、F形の変動が大きく現れ、症状の改善が見られました。

結果④ 遊んだ後の測定(図4)


                           図4


















 外で遊んだ後に測定したノイロメトリーです。今までとは違い、H系が低く、F系が高いパターンを示しました。

結果⑤ 症状改善時(3回目の治療後)と遊戯後の比較(図5)


                               図5


















 平均値は違いますが、H系はほとんど変動が見られませんでしたが、F系では共に顕著な変動が見られました。

 3回目の治療後には、F系に大きなパターンの変動を見ましたが、この頃にはかなり症状の改善が見られました。また、外遊び後に表れたパターンをみると、下肢をよく動かす行動が、F系に刺激を与えたため、大きく変動したと思われました。このことから、小児にとって外で遊ぶという刺激も治療と同じく症状の安定には不可欠であるということがわかりました。

 小児は未発達なので、自分の身体の辛さをうまく表わすことができないために、自律神経不安状態になり、便秘や、眠りが浅くなったりして不調を起こしてしまいます。

 福地は「良導絡による小児科診療」の中で、「小児針治療は、接触刺激と云う皮膚知覚を介して、未熟・不安定な自律神経緊張状態を調査し、自然治癒能力を高める方法なので、非常に弱い刺激でも全身的に奏効する小児には、最も適した副作用のない治療法と云える」と発表しています。このように、疳の虫症状の改善には、小児鍼が効果的といわれていますが、同時に良導絡測定を行うことで効果がより客観的に判定できることが再確認されました。

4.治療のコツ

 急激に発達する脳や身体と心のアンバランスが引き起こすために現れる疳の虫は、症状によって反応の出やすい部位があります。夜泣き、夜驚症など睡眠に問題がある場合、またキーキーと奇声を発したり、人を咬んだり、よくケンカをする場合には、後頭部から頚肩部に反応が現れやすくなります。また、食欲不振、偏食、吐乳、アトピー性皮膚炎の場合には、肩甲間部に反応が現れやすいです。

 これらの反応点と良導絡測定の結果がほぼ一致します。良導絡測定を行うことによって、確実に小児鍼を行うポイントが特定でき、効果を確認することができます。

 疳の虫症状の出ている子どもたちは、とても警戒心が強いです。慌てず、やさしく「痛いことはしないよ」とか、「一緒に遊ぼう」といった雰囲気作りが大事です。特に測定するためには握り導子を持ってもらわなければならないので、子供目線での対応が必要です。

 小児鍼だけでも効果は十分あるのですが、最近の保護者はすぐに結果を求めたがります。どのような変化や効果があったのかを客観的に保護者に理解して頂くためにも、良導絡測定をしておくと説明しやすいと思います。また、すぐに症状の改善が見られない場合は、何回か測定したものを比較検討することができるので、説明しやすいのではないでしょうか? ぜひ一度、小児鍼をされる際に良導絡測定を取り入れてみてください。

[参考文献]
谷岡賢徳 : わかりやすい小児鍼の実際 源草社
福地 孝 : 良導絡による小児科診療 日本良導絡自律神経学会8号
岸田正和 : 関西鍼灸短期大学 特殊鍼法授業ノートより
日本良導絡自律神経学会 学術部編 : 良導絡 治療基礎講座


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