2011年6月15日号 No.237

■震災時に鍼灸マッサージ師ができること その7


慢性期における被災地支援の可能性

災害鍼灸マッサージプロジェクト代表 三輪正敬

 地震から3カ月が過ぎました。当初、外では雪のちらつくような2畳の守衛室、特別にお借りできた電気ストーブをそばに寄せて次々と治療をしていた岩沼市民会館は、6月3日に避難所としての役割を終えており、現在の災害鍼灸マッサージプロジェクト(以下、災プロ)の拠点の一つ、南三陸町では半袖で活動できる気候。季節は移りましたが、いまだ東北全体で8万人を超える方々が避難生活を強いられています。報道にもある通り、慢性期に入った今後の医療面では、公衆衛生・予防医学が課題となって参りますが、このような中で、私たち鍼灸マッサージ師には何ができるのでしょうか。

 現在、災プロで検討しているのは以下の3点です。

1.避難所や役場での治療の継続
2.仮設住宅や自宅避難者への、在宅支援の形態によるフォロー
3.雇用の創出

1.避難所や役場での治療の継続 について

 これまで通り、避難所や役場での治療を続けていくことが求められています。仮設住宅を待ち望みながら耐えている方々、あるいは何らかの理由で入居することができない方々の長期化する避難生活における心身の健康状態の向上に、鍼灸マッサージは有効であり続けるでしょう。役場も、その機能が破壊された町では、他県の職員が応援に入っており、“行政の安定”がすぐには望めない状態のところもあります。こういった自治体の職員の方々への施術は、復興支援の屋台骨を支えることとなります。

2.仮設住宅や自宅避難者への、在宅支援の形態によるフォロー について

 仮設住宅や自宅避難者へ、保険診療を用いた在宅支援の形態を導入することにより、長期的なフォローが可能になるのではないでしょうか。医師団も同様の活動を行うと思われますが、広範囲となるはずであり、たとえば手の届かないところへは鍼灸マッサージ師が、施術に加え血圧測定などを行いこれを報告し、健康管理に寄与していく体制も、被災地では有効と考えられます。ただこれは、地域に密着している分、我々のような一過性のボランティアではなく、地元の先生方によってなされることが理想でしょう。

 また、実現にはいくつかの課題が残ります。まず、同意書の問題です。依頼する医師の理解を得る必要があります。気仙沼では、災プロの気仙沼担当リーダーの先生がPCAT(日本プライマリケア連合学会)での活動を経て知り合った地元医師と現地にて直接話をすることで、協力していただけることになりましたが、通常はなかなか容易ではありません。

 次に、地元には地元ならではの要望、問題、ニーズがあり、これらは我々外部ボランティアにはなかなかわからないことが多い点です。そもそも地元の先生は必要と感じていらっしゃるのか、必要と感じていらっしゃるとしても、どの程度協力していただけるのか、など、細かい配慮と、時間をかけた精査が求められます。

 一方で、利害の一切絡まない、外部ボランティアだからこそ、地元医師と地元鍼灸マッサージ師や、地元鍼灸マッサージ師同士のパイプ役となれることもあります。このパイプ役を行い、在宅支援の下地作りに貢献することができればよいのでは、と考えております。

3.雇用の創出 について

 これは私たちの活動目的の一つである「地元の鍼灸マッサージ師への支援」に沿って挙がっている案件です。治療院や訪問先が被災されたために一時的に仕事先を失った状態の地元の先生方のフォローができないか、というものです。2.に紹介した、保険診療による在宅支援のチームに入っていただくことができれば年単位での仕事となり、有効でしょう。

 また、南三陸町の活動では、震災の影響で著しく仕事が減ってしまわれたという宮城県内の先生に交通費を渡すかたちで活動に加わっていただいております。ただ、こちらは臨時の措置であり、団体の予算上からも、長期にわたっての支援は不可能なのが現状です。

 以上、「避難所や役場での治療の継続」を除き、検討中の段階ではありますが、さらに議論が重ねられることを期待しつつ、一つのモデルとしてご紹介させていただくことにしました。

<被災地に芸術を>

 なお、災プロは、演劇集団「キャラメルボックス」の宮城県中部での公演をバックアップさせていただくことになりました。阪神淡路大震災の後、「路上でも上演できる作品を」というコンセプトのもとで作られた作品を、9月初旬、岩手から宮城の被災地を中心に上演する予定とのことです。被災者の方々の心身の苦痛を除くことが私たちの役割でしたが、その先の、いわば“栄養する”役割にも携われること、望外であり、うれしく思います。

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