週刊あはきワールドへようこそ! 2011年7月13日号 No.240

術伝流 養生の一本鍼~慢性疾患に効く長寿の鍼~ No.13


坐骨神経痛、慢性でも、まず、つらさ軽減


術伝(和方養生技術伝承塾) 金子芳幸 

(1)はじめに

 今回は、坐骨神経痛を取り上げます。3カ月以上続いていますので、慢性期になります。しかし、つらさがひどく、とりあえず、そのつらさを軽減したほうがよいだろうと思いました。それで、まず、応急処置をしたという例です。

(2)坐骨神経痛の特徴

 坐骨神経痛は、患側の殿部中央がベコベコに虚しているのが特徴です。そして、その奥の筋肉がとても硬くなっています。

 一般的に、神経痛系の病の特徴は、神経が脳・脊髄の高さから皮膚表面に立ち上がってくるところに、筋肉の機能性病変が見られることです。表面は、フニャフニャに虚した過弛緩型の機能性病変になっています。奥は、カチカチに硬い過緊張型の機能性病変になっています。この点は、三叉神経痛など、ほかの神経痛系の症状でも同じです。

 坐骨神経は、殿部中央の大坐骨孔(梨状筋下孔)のところで、体の奥から皮膚表面に立ち上がってくるようです。

 過緊張型の機能性病変になった状態の筋肉では、常に異常な活動電位が観察されるという研究があります(伊藤和憲先生)。おそらく、その異常な活動電位が、近くをとおる神経に影響して、神経に異常な電気現象が発生してしまうのではないかと考えています。そして、その神経の異常な電気現象がきっかけになって、神経痛の症状が出ているように思います。神経活動も電気現象ですし、神経はランビエの絞輪もあるので、完全にまわりから絶縁されているわけではないと思いますし。

 坐骨神経痛でのツボの出方は、殿部中央以外は、腰痛や膝痛と同じで、腰痛のときの腰〜殿部の出やすいところ、脚裏の外より、中央、内よりの3本のライン、足首まわり、足甲などに出ます。

 応急処置や慢性期の養生の手順も、基本的に、運動器系、とくに、下半身の場合と同じです。  

(3)症例

 3カ月ぐらい前から、 坐骨神経痛か、左足の大腿部から足先までがしびれているという人。車にのるときにも足を投げ出して運転している状態とのこと。

 3か月続いているということで慢性期ですが、症状がはげしいので、とりあえず、つらさを少しでも軽減することにしました。

 うつ伏せになってもらい(写真1),足甲4~5間に出ていたツボに引きました(写真2)。


        写真1                  写真2                  写真3








 つぎは、いちばんのポイントである殿央部。長めの鍼を奥まで入れると、骨にあたったかという感じを受けるほどの硬さでした。押手を刺手でたたいたりしながら、邪気を引き出し、奥が温まるまで刺鍼しました(写真3)。押手で刺手を、按摩の切打のような感じで、すばやく、こまかく、たたくと、邪気がぬけやすいです。


        写真4                  写真5
 そして、大腿部。まずは、承扶の外側の足徹腹。ここは、腸脛靭帯の裏側にあてるような感じで刺鍼すると、改善しやすいです(写真4)。


 大腿部の2番目は、風市(写真5)。

 それから、腸脛靭帯の裏側のラインが溝状に凹んでいたので、そのライン上に出ていたツボに、順に刺鍼していきました(写真6、7、8)。


        写真6                  写真7                  写真8








 そして、下腿。下委陽に刺鍼したら、すごい量の邪気だったので、足の小指をそらしてもらいました(写真9)。こうすると、指のほうに邪気が誘導されやすいからです。続いて、その延長でフクラハギの中ほど(写真10)、終わるあたり(写真11)に出ていたツボに刺鍼しました。


        写真9                  写真10                 写真11









       写真12

       写真13
 それから、くるぶしまわりで、踵の骨の上の陽大鐘(写真12)に刺鍼しました。

 そのあと、ゆっくり起き上がって、足踏みをしてもらったら、「ラクです」とのことでした。ラクになったところで終えたほうがいいので、仕上げに入ることにしました。やりすぎて、つらさがぶりかえすこともありますし。
 足甲の丘墟に刺鍼して仕上げました(写真13)。

 つぎの日に、紹介者から「 操体の気持ちよさも、鍼のインパクトの強さも感じられたようで、今朝は晴れやかな顔つきをしていました」とメールがとどきました。刺激量がおおすぎたかなと心配でしたが、つぎの朝に晴れやかな顔つきなら大丈夫だろうと一安心しました。
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