週刊あはきワールドへようこそ! 2011年7月20日号 No.241

意識と鍼灸 第28回


鍼灸と意識(その15)

《特別テーマ》現代における健康問題について②

東京九鍼研究会 石原克己

5.自己治癒力への働きかけ

 病気と治療の問題は、この「自己治癒力」を外して考えるわけにはいきません。私たちの「命」の中心(自己の本質・真我)や潜在意識は、様々な外界の変化に適応していったり、そのアンバランスを調整するために、自己治癒力(復元力・真気)を発動させています。1日1日の疲れは、その場か夜寝ている間にこの治癒力により回復します。しかし、疲れが蓄積してくると、より一層治癒力を発動させます。その発動された現象が、いわゆる「症状」というものです。治療、癒しにおいては、この「自己治癒力の過程」を妨げず、逆に、最大限上手く利用することが大切となります。つまり、生命体の治癒能力の過程を、「時間」と「場」の中で観察しながら、適宜必要な処理をすることを意味します。私は、この適正な自己治癒力を引き出す処理の内容を三つに分けて考えています。

1)自己治癒力を妨げているものがあればこれを除く
 自己治癒力を妨げているものとは、「恐れ」、「怒り」、「不安」、「緊張」、「こだわり」などの心・感情の面や、「飲食の不摂生」、「外傷後遺症」などからくる「気滞」、「気鬱」、「痰湿」、「食積」、「血瘀」、「瘀血」や「水滞」などが含まれます。

 これらの問題があれば、それを患者さんとのコミュニケーションの中での気づき(涙を伴うことが多い)、ライフスタイルの改善や、治療行為でもって取り除けるよう導いていきます。そうすることによって妨げているものが緩和されたり取り除けますと、患者自身の自己治癒力が引き出せるようになってくるからです。

2)自己治癒力が過剰、過敏な場合、その本質に迫る
 過剰、過敏な自己治癒力とは、「アレルギー」、「喘息」などのように過剰、過敏な防衛反応をいいます。これらに対しては、1)述べたように、ある病気への「恐れ」、「不安」、「怒り」等から過剰、過敏反応がある場合は、病気に対して正しい理解の仕方を伝え、納得していただかなければなりません。また、バランスを取るためには、必要に応じて、この反応を生み出している大本を強め(虚している場)、過剰・過敏な気の動きを静めることが必要となってきます。

 また、例えば人間関係の不振による落ち込みや、隠れていたトラウマの発生で引き起こされたアレルギー、広場恐怖症…では、感情の吐き出しを施すかノートに書いてもらうことで少し緩和します。そこからさらに深く、自他の受容・愛と許しにもっていくことでかなり改善させることができます。

 風邪による高熱(39~40℃)が、2~5日続いている場合に、これは解毒反応の現れだということで、水分、塩分、ビタミンB1、Cなどを補えばいいというわけにはいきません。生命力と症状を観察しながら、適当な発汗法か内・裏の熱を清めるための解熱方法を取る必要性が出てきます。

 また、一定の精神的緊張と疲労の蓄積が重なることがわかっている場合は、その間に時々休養して、疲労を解除しておく必要があります。あまり蓄積しすぎた状態で精神的緊張がほどけますと、一度に自己治癒力の発動が起こり、血圧、血流に大きな変動が起こって、高血圧や瘤を持っている方などは、脳卒中や心筋梗塞という形で倒れる場合があるためです。

3)自己治癒力が衰えている場合、これを補う
 自己治癒力の衰えとは、東洋医学でいう「気虚」、「血虚」、「臓腑の虚」などを言います。このような虚からくる「不安」「恐れ」「憂鬱」や、一般に虚弱な人、免疫力低下症候群などに対しては、自己治癒力を高める方法、東洋医学でいう「補気」「補血」「補法の手技」などという治療の必要が出てきます。

 以上、自己治癒力に関して簡単に述べましたが、この治癒力は、現代医学的にいいますと、免疫系の役割を筆頭に、自律神経系、ホルモン系の働きによるホメオスタシス、フィードバックシステムという概念と重なります。

6.人の存在の見方(魂の成長)からの健康観

 今まで述べてきたことを踏まえて、私の基本的な考え方を図によって述べます。

 図1は、人の存在の見方(魂の成長の段階)と健康観との関係を模式化したものです。成長の過程は、この人間としての心身二元の段階から、つまり人間秩序の範囲から宇宙秩序を認識した段階まで、表でいうと、AからEへの螺旋的成長のプロセスをとります。これからそれを説明します。


                  図1 人間の存在の見方(魂の成長)と健康観
















1)Aの段階:心身二元
 ここには、現代医学の「心身二元論的」考え方が入ります。人間社会の秩序に認識をおいているため、身体的評価のみか、あるいは心理的評価のみを気にする患者さんや医療関係者などの人々がここに属します。この段階では、「何故、健康ではないのか」という問題に対する意識は浅く、依存が強く自立も困難です。東洋医学的治療を試みている人でも、この考え方に沿っている人は、ここに属します。

2)Bの段階:心身一如
 人間社会の秩序に認識をおいていますが、Aの段階とは違い心身の有機的関係を理解・納得し、日常生活で取り組んでいる患者さん、医療関係者などがここに属します。しかし、まだ、個人的な面のこだわりから抜けられません。こだわりの抜けた人は、即、C、Dの段階へと到達します。特に、心療内科(心身医学)、東洋医学、伝統医学を試みている人の一部や、現代医学のAの段階に疑問を感じたり、脱皮している人々がここに入ります。

3)Cの段階:社会環境と合一
 ここは人間社会の秩序という狭い世界から宇宙秩序を認識し始める段階です。1951年WHOの「健康」の定義では、精神・身体・社会環境の三者の相関関係を認識し、そこに自らを置き、健康について理解しています。近代から現代にかけての衛生思想、保健施設、また現代医学も、心身を二元的にとらえてはいますがこの段階での表現といえます。ですから、この段階は、自然を人間が操作する対象としている自然科学・現代医学の限界でもあります。「何故、免疫機構が減退したのか」「何故、弱い人間や奇形児が増加してきたのか」という問題に対する明確な答えは得られません。人間の自我中心の社会のため人類の退化、弱化現象への抜本的な対策を立てられる状態とはなり得ません。

4)Dの段階:地球生命体と合一
 この段階は、宇宙秩序への認識が、より明確となりますが、その中でも「地球的な段階」での認識です。東洋医学、各国伝統医学は、「心身一如」「天地人合一思想」をもっているため、この観点への理解を示す人が多いのですが、これらは個人的な性格が強く、行動まで一体となっている人はまだ少なく、社会性へのアプローチは希薄な傾向がみられます。これまでのべたAからCの段階では、善悪・美醜等の相対的評価に対する基準を人間中心、あるいは人間独尊社会の法則をもとに行っています。しかし、Dの段階では、その判断基準が、地球環境という法則に従うことになります。つまり、人間そのものを地球生命体と考えますと、人間の一つの細胞が、地上の1人の人間にあたります。そして、人間の肺の役割は、地球の熱帯雨林…というようになります。すると、人間の横暴な行動により他の生命体…山河草木、禽獣虫魚等…を破壊し、死滅に追いやる行為は、癌細胞の動きとなんら変わるところがありません。癌によって人間が死んでしまいますと、癌細胞も死んでしまうように、人間の横暴により地球が破壊されれば、人間も生存不能になってしまいます。

 この段階の意識では一人一人が真自己に気づいてくるため、医学の進歩とともに病人が減り、医療費も減少し、生活も明るく楽しくなってきます。生命の四元(日光・空気・水・食物)に感謝できる行動もとれ、自らの健康は自ら責任がとれ、自立から自律(宇宙の営みと融合)できるようになります。また、この立場では、今までの地球社会の混乱を収拾できるようになりますし、地球生命体・人間・地球上の多くの生命体と共存共栄できる関係性の中で、互いに成長し合えることになってきます。

5)Eの段階:宇宙の本質と合一
 ここは、もっと宇宙の秩序を認識でき、それによって健康の問題も認識できる段階です。使命感をもって生まれてきた人、あるいは宗教的「行」の体験、内観法、臨死体験、至高体験、また宇宙飛行士などの体験を通じても到達できるものと思われます。ここに属する人々は、今の私たちの所属している惑星の地球を含め、大宇宙の本質と一体に宇宙創造の一環として、ガイア、人類の進む道標を与えています。これからの地球社会は、多くの宇宙存在と共創造となってくるため、早急にD・Eの段階の認識まで到達する必要があります。少しでも遅れると、私達人類の生存が危ぶまれます。

7.気づきのプロセス

 以上、AからEまでの段階は、順を追って進むとは限りません。Bから即Dの立場になれる人、AからDに行ける人、ABCDが同居している人など、いろいろなプロセスがあります。その人の気づき如何です。ただ、いえることは、Dの観点(地球生命体と合一)には急いで目覚める必要があります。

 医療関係者は、「自らがどの観点にいるのか」を見直すこと。そして出会った「医療を受ける側の人が、どの観点にいるのか」を把握する必要性が出てきます。その上で、治療者も患者も、共に共有できる「場」を目指して歩んでいく必要があります。また、その中にこそ、魂の成長が潜んでいることに気づくときがくることでしょう。相手が癒されることは、裏を返せば、自分が癒されることにつながっているからです。

 このように、各自の生命の自覚の段階により、健康、病気、不健康の認識が異なってくるわけです。そして、このプロセスを進んでいる人(D、Eの段階)は、遅れている人に審判・判断をするのではなく必要に応じてサポートしていく必要性を感じています。

 次回は、「何故病むのか・病の起こりと癒しのプロセス」に入ります。

以上は、石原克己著『伝統医学のこれから 第1巻』(たにぐち書店)の「第1章 健康と病について」を修正・加筆しております。

■東京九鍼研究会問い合わせ
E-mail:Tokyo9shin.@yahoo.co.jp

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