三叉神経痛の痛みが消えたら、
声を出すと痛くなった
術伝(和方養生技術伝承塾) 金子芳幸
(1)はじめに
前回までの2回で、坐骨神経痛を取り上げました。今回は、三叉神経痛です。
坐骨神経痛のときに、神経痛症状の特徴として、以下の2つを書きました。
①神経痛症状のツボは、その神経が脳脊髄の高さから皮膚表面に立ち上がってくるところに出やすい
②そのツボの奥で過緊張した筋肉が出す異常活動電位の影響で、神経に異常なインパルスが生じるのではないか
この2つは、三叉神経痛でも同じです。
三叉神経が皮膚表面に立ち上がってくるのは、側頭部と頭頂部の境目で、耳の頭頂よりあたりだそうです。三叉神経痛の人のそのあたりをさがすと、皮膚がブヨブヨしているところがみつかります。そこが三叉神経痛のポイントのツボです。
そこの邪気を経絡的に関連する手甲にひいたり、そこに刺鍼したりするのが、三叉神経痛の鍼灸治療のコツです。
慢性期では、慢性期の養生の型と組み合わせて施術します。
(2)症例
三叉神経痛、および、歯の炎症と痛みのあるという人。
まず、慢性期の養生の型で診察、脈、顔、舌、腹診などをしました。(写真1)。
それから、あお向けで、手順通りに、手の陰陽、横腹、小腹、大腹、足の陰陽の順で施術しました。腹とそれに関係する足のツボをとくにみました(写真2、3)

写真1 写真2 写真3

写真4 写真5

写真6 写真7
うつ伏せも、手順通りに背腰足の順で施術しました。とくに、腹に関係していそうな背のツボと、脹脛のツボをていねいにみました(写真4、5)。
そのあと、座位で、顎関節あたりの痛みとその原因のツボ探しをしました(写真6、7)。
経絡的相関というか、位置的に顎の痛みに関係しそうな手甲のツボをさがしたら、3~4間に出ていました。そこに刺鍼し(写真8)、引き鍼しながら、口を開けたり閉じたり(写真9)、首をねじったり(写真10)してもらいました。

写真8 写真9 写真10
上歯の痛みが残っているということで、手の八邪を調べたら、位置の関係からか、1~2間が硬い状態でした。そこで、合谷に刺鍼しながら、口の開け閉めをしてもらいました(写真11)。そしたら、すこし中央よりに痛みが移ったということで、合谷から親指方向に鍼を向け(写真12)、刺鍼しました(写真13)。痛みは消えました。

写真11 写真12 写真13

写真14 写真15

写真16 写真17
そのあと、三叉神経痛のときによくツボが出る側頭部と頭頂部の境目にツボをさがしました(写真14)。くりかえしになりますが、三叉神経が皮膚表面に立ち上がってくるところあたりです。そして、そのツボに刺鍼しました(写真15)。
それから、口を開け閉めするときにいっしょに動くであろう首にツボが出ていないか調べました。出ていたツボに順に刺鍼しました(写真16、17)。

写真18
そのあと、顎関節のところに出ていたツボにも刺鍼しました(写真18)。
ここまでの施術で、動かしたりするときの痛みはすっかり消えました。が、声を出すと痛みが出るとのことでした。

写真19 写真20
声を出すのに関係するだろうなと、喉から胸にかけて見てみたら、鎖骨から胸骨にかけてが真っ赤になっていました。面積がひろいので、楊枝を輪ゴムで束ねたものを使って散鍼しました(写真19)。その上のノドのまわりがそこにくらべて赤みがまるでないので、変だなと思い、ノドまわりも散鍼してみたら、ノドまわりも真っ赤になっていきました(写真20)。
そのあと声を出してもらったら、痛くなくなったということでした。熱邪が奥にこもっていて、そのため声を出すときに痛かったのだろうなと思いました。

写真21 写真22
仕上げとして、頭に散鍼し(写真21)、手の甲に引き鍼して(写真22)、後始末しました。
声を出すと痛いということで、非常に面白い経験をさせてもらった感じがしました。
全体的には、典型的な上衝という感じに見えました。三叉神経痛による顎の痛み、歯の痛み、声を出すときの痛み、みな上衝した邪気によるもの、つまり、上衝による症状が表位の少陽~陽明に出たということです。そして、長いこと続いていることから、その上衝が恒常的であることになります。その視点にたてば、慢性期の養生としては、腹を改善し、恒常的な上衝をおさめていく必要があることになります。
そういう意味で、東洋医学的な病証の把握も大切なことを思い起こさせる症例でした。