週刊あはきワールド 2011年9月28日号 No.250

術伝流操体 その58

応用篇(9)

カゼや内科系急性症状への対処 

術伝(和方養生技術伝承塾) 金子芳幸 

1.はじめに

 内科系急性症状は、重ければもちろん救急医療にゆだねる必要があります。 東洋的物療で対処できる急性症状は、機能的疾患までです。機能的疾患でも重いものや、器官破壊をともなうものは、救急医療につなぎます。

 が、機能的疾患で軽いものなら、操体をはじめとする徒手療法でも、ある程度の対処は可能です。昔から伝わっている素手による方法があります。ためしにやってみて軽くなれば、様子をみることができます。

 やってみて数時間以内に施術前と同じくらい痛みが復活したら、すぐに救急医療にまかせることも大切です。器質性疾患や、重い機能性疾患である可能性が高いからです。

 軽い人でよく練習してから、重い人を見るようにしてください。

2.基本的な手順

(1)ラクな姿勢になっているか確認
(2)指をキッカケに
(3)背中側のツボへの施術を付け足す
(4)ラクになるまで続ける
(5)仕上げに手の指もみ  


(1)ラクな姿勢か確認
 まずは、姿勢に無理がないか確認します。姿勢に無理があると、効果が出にくいからです。

 服装や敷物などにも無理がないかチェックします。

(2)指をキッカケに
 応急処置なので、末端である手首・足首から先、とくに指を使うことがおおいです。

 井穴や八邪をもんだり、指を反らしたりして、指をえらびます。井穴をはさんで揉み痛みが強いところ、八邪をはさんで厚く揉んで痛いところ、指を反らしてピリピリビリビリした感じが強いところをえらびます。

 えらんだ指を揉んだり反らしたりしてみて、反応が良い手段をえらびます。反応は、症状の軽減のほか、顔の表情、腹への息の入り具合、姿勢の変化なども見ます。

 刻一刻と変化する、受け手の体に合わせて、手段や具合を即時即応させ続けます。続けているあいだ、反らし具合、反らす方向、揉み方、揉みの強さなどを、体の変化に応じて合わせていくということです。

(3)背中などのツボへの施術を付け足す
 症状の出ている部分の背中側をはじめ、頭首胴の背中側に出ているツボへの指圧などを付け加えます。

 背を丸めているときは、その曲がりのいちばん出っ張っているあたりが狙い目です。そのあたりに指をすべらして、ツボをさがします。

 ただし、喘息発作のときは、背は反らし気味で、そのいちばん反っているあたりをさがします。

 頭痛、メマイなど、症状の場所が胴体でないときは、頭首の背中側(~横側)を中心にさがします。

 出ていたツボを指圧したり、皮膚操体したりします。これも、反応の良い手段をえらびます。痛みの強いときには、強めに押したほうがラクになることがおおいです。が、そうでないこともあります。

 このとき、キュウクツそうなところがあれば、声をかけて動いてもらいます。

(4)ラクになるまで続ける
 ラクになるまで続けます。続けているあいだも、顔の表情、おなかへの息の入り具合、姿勢の変化などを観察し続け、ちょうどよい感じをたもつようにします。

(5)仕上げに手の指もみ
 仕上げに手の指もみをします。

 内科系急性症状は、上衝をともなう場合がおおいので、仕上げに手の指もみをしておいたほうが、症状が再発したり、別の症状が出たりする可能性を低くすることができます。

3.よく使う組み合わせ

 症状によって、よく使う指、背中側のツボが、それらの使い方が、ある程度きまっています。

(1)吐き気

      写真1             写真2
 左薬指をかるく反らしながら、左肩甲骨下端あたりに出ているツボをかるく指圧するか、皮膚操体します(写真1)。

 左が効くことがおおいですが、右のこともあります。


(2)耳鳴り、メマイ
 症状のある側の薬指をかるく反らしながら、首の耳より部分~頚椎4番あたりまでに出ているツボに皮膚操体します(写真2)。

 まれに中指のこともあります。

(3)腹痛

      写真3
 薬指を強めに反らしながら、胃の六灸に使う胸椎7~11番あたりのツボを強めに指圧します(写真3)。

 左のことがおおいですが、右のこともあります。また、中指がよいこともあります。


(4)頭痛
 頭痛のあるところと、それと経絡的に関係する指を使います。

 前頭部痛のときは、拇指や示指を強めに反らしながら、症状のあるところや首前側上部に出ているツボに皮膚操体したり、症状の出ているあたりの髪の毛をかるく引っ張ったりします(写真4)。


      写真4             写真5             写真6
 症状の強い側が効果的なことがおおいですが、反対側のこともあります。

 偏頭痛のときは、症状の出ている側の薬指(中指)を強めに反らしながら、 症状のあるところや首横側上部に出ているツボに皮膚操体したり、症状の出ているあたりの髪の毛をかるく引っ張ったりします(写真5)。

 後頭部痛のときは、症状の強い側の小指(薬指)を強めに反らしながら、 症状のあるところや首横側上部に出ているツボに皮膚操体したり、症状の出ているあたりの髪の毛をかるく引っ張ったりします(写真6)。

 症状の強い側が効果的なことがおおいですが、反対側のこともあります。

(5)不整脈

      写真7               写真8
 左側の小指を強く反らしながら、肩甲骨の左下角あたりに出ているツボをかるく指圧するか皮膚操体します(写真7)。場合によっては、示指の骨空をつかい、強めに指圧します(写真8)。

 まれに心臓が右にある人がいるそうですが、そういうときには右を使います。


(6)かるい喘息発作

       写真9                写真10

       写真11                  写真12
 利き手側の母指を強めに反らしながら、利き手側の胸椎3番あたりの華佗経に出ているツボを横から胸椎に押し付けるように強めに押します(写真9)。反応を見ながら(写真10)、良さそうなときに反らした母指を弾くように瞬間脱力します(写真11,12)。その途端に息を吐き、発作がおさまることがおおいです。

 ちょっとコツがいりますので、かるいときに練習するようにしてください。


(7)まとめ
 まとめると以下の図のようになります














4.別のキッカケを使うもの

 3.で説明した、指反らしと背中側のツボの組み合わせ以外の方法もあります。

(1)腹痛に腹への皮膚操体

        写真13
 腹痛のときに、大腸の左側上部の曲がり角あたりに手のひらをあて、かるく温めるような感じで皮膚操体します(写真13)。

 横行結腸から下行結腸への曲がり角あたりです。右側の上行結腸から横行結腸へのまがりかどのこともあるので、左側で変化がおそいときは、右側もしてみます。

 また、同じ側の薬指を反らすと変化が早いこともあります。

(2)気絶に脇腹を拳骨でゴリゴリ

        写真14
 橋本敬三先生が第2次大戦中に爆弾が近くで爆発し気絶した人に使ったそうです。肋骨と骨盤のあいだの脇腹の背中よりを拳骨の四指骨空で、ゴリゴリ強めに刺激します(写真14)。



(3)カゼへの指圧操体

        写真15
 カゼもかるいものなら、指圧や操体でも対処可能です。

 まず、かるく手の指揉みをしたあと、あお向けで、鎖骨の首側~胸上部をゆるめます(写真15)。膻中のすぐ脇の肋間から肋骨1本あがるごとに外よりにツボが出ていて、中府にいたります。順に指圧していきます。

 前頚部(写真16)~横頚部~後頚部(写真17)~後頭骨下縁をゆるめます。後頚部や後頭骨下縁は母指骨空でします(写真18)。


       写真16                 写真17                写真18








 うつ伏せで、肩~肩甲間部をゆるめて(写真19)、上腕前腕をゆるめ(写真20)、手指揉みで仕上げます(写真21)。


       写真19                 写真20                写真21








 時間があれば、腹や大腿の太陽~少陽もします。

 応用編のはじめのころ解説した、操体と指圧の組み合わせを参考にしてください。


       写真22                 写真23

       写真24                 写真25
 橋本敬三先生は、カゼが長引いたときには、腸恥隆起の特に左側に圧痛のあるシコりがある(写真22)と書き残されています。見つかったら、左膝抱え込みと皮膚操体の組み合わせで対処します(写真23)。

 セキが長引いたときには、鎖骨の腹側にスジバリがあることがおおいです(写真24)。そのスジバリに皮膚操体にしながら、母指を反らして、そのスジバリをゆるめます(写真25)。

 この2つは、内科系急性症状とは言えませんが、おまけです。

5.おわりに

 内科系急性症状への操体をはじめ手技による対処を書いてきました。もちろん、こうすると効果が出やすいということで、目の前の受け手の体の様子に合わせていくことは大切です。ためしにやってみる経験をたくさん積み重ねて、効果を出せるようになってください。

 また、はじめに書いたことに関連しますが、内科系急性症状では、手を出してなんとかなるかどうかの見極めも大事です。このあたりも経験を積み重ね、見極めが有効な確率をあげていくようにしてください。

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