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2011年10月19日号 No.253 |
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在宅ケア奮闘記 その60 下肢麻痺患者の座骨神経痛は希望の痛み訪問リハビリ研究センター代表 西村久代 白血病で強い薬を服用し続けた男性患者がいる。年齢はもうすぐ70歳。一命を取り止めたのだが副作用で下半身の対麻痺になり、腰から下の感覚が全くなくなってしまった。そして不随に強い痙性麻痺運動が起こる。
少しの皮膚刺激に対して下肢が一気に伸展し、急に屈曲する。それも元野球の選手でキャッチャー。筋肉量が半端じゃない。背は高い。筋肉がゴツイ。力は強い。運動も、足にしがみついて運動をしたというより、しっかりとしがみついていないとベッドの柵に飛ばされ強打しかねない。 そして何より態度が偉そうにしている。ベッド脇にはリフトが常駐しており、オムツを替えるたびにこのリフトでおしりを吊り上げないと何もできない状態であった。 運動神経は復活するこの下肢麻痺の患者。在宅ケアを続けた結果、今ではバランスを整え、杖を使って歩けるようにまでなっている。最初は皮膚の感覚も皆無に近く、下半身のどこを触っているのかが分からなかったのが、今では、足関節から下はしびれていて痛みがある、腰も痛い、背中も痛い、今日は特にジンジンする、と痛みを感じることに困っている。場所の特定ができないでいたのに、今では「そこ。そこが痛い」とハッキリ場所を指定できる。私の今までの経験上、全く感覚がなくても、運動神経は復活する。痛みのプロセスではニューロンの一端で電気を伝達し、脊髄から脳に指令が行き痛みとして認知するのであろう。その電気的内容や量が普通の形態を呈せず過剰なのか不足なのか異状なのかはわからないが、普通とは違うのだろう。 しかし切断されたかに見えたニューロンでさえ、復活してくる。植物的成長速度なので時間をかけてゆっくり待つしかないと思っている。最初はジワーンとしびれるような感覚が、虫がいて咬むようなチリッとするような点々での痛みが出没し、やがてジンジンするような痛みになり感覚が成長して普通の刺激ができる分量にまで落ち着いてくれば痛みもなく普通に歩行ができると信じている。 痛みやしびれは復活の印同じように回復できて自力で歩行ができるようになった患者は実際にいる。全く改善されなかったケースは1名だけである。数人の患者は歩行ができるまでになっている。ただし感覚の復活は時間がかかる。しかし、運動神経は足の裏の感覚がなくても脳から直接の指示をもらうことで歩行が可能になってくるのである。だから、私としては痛みやしびれは復活の印と思っているので、気にしていない。 「ここが痛い。あそこが痛い。なんとかしてーや」 「あっそう。なんともならん。復活してきている途中やから我慢してね」 この下肢麻痺の患者が痛みを訴えても、私が受け持つ分野ではないので無責任でいる。時間が解決してくれるわけだし、それはニューロンの成長だし、成長過程の一部なのだから仕方ないと思っている。 この患者も、もわもわとしていた感覚がしびれになり、そして今は痛みになった。運動とも比例している。歩行している姿勢状態が改善されていく。それと痛みがキッチリと坐骨神経の走路が痛いと限定されてきた。腰椎の2~3番から始まり神経に沿って痛みが紐状に集約されてきた。殿部中央、下肢の後側、下腿三頭筋の合間、第5指に沿って痛みがあるらしい。 これがどのタイミングで消えていくかは予測不明なのだが、ハッキリと普通の体に向かって前進している。だから私にとってはその痛みは希望の痛みであるが、患者にとっては痛いのはつらい以外の何物でもないのかも知れない。歩き方も回復し、痛みも治まるのは遠い事ではない。それを信じて頑張ろう。 ★この記事に対するご意見やご感想をお寄せください≫≫ Click Here!
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