週刊あはきワールドへようこそ! 2011年10月19日号 No.253

■症例報告

蜂刺されとアキレス腱炎と膝蓋軟骨軟化症に
施した焼鍼治療の症例

寺子屋お産塾 田中寿雄

1.蜂刺され

 「痛ぃ、蜂に刺された。」真向かいの玄関先から奥さんの声が聞こえた。普段の温厚な人柄と不釣合いな様子に応急処置の必需品、経筋鍼・もぐさ・キネシオテープの3点を持って出た。

状況:右肩鎖関節付近に掌を当てていた。
治療:「病院に行くまでの応急手当て」と告げて、刺された部位を取り囲むように経筋鍼でチョン・チョン・チョンと熱刺激を2周した後、刺された部位にチョン・チョンと2回熱刺激。最後に患部を直灸用もぐさで覆ってキネシオテープで貼付。

 治療に戻ると、悲鳴を聞いていた受療中の女性が「蜂に刺された時、鍼って効くのですか?」と怪訝そうに問いかけたが、応急処置として焼鍼治療ともぐさの貼付はきわめて有効である。

 その日の夕方、「手当てを受けてしばらくすると痛みが治まり、違和感もなかったので病院は行かなった」と礼に来られ、翌日「おかげで何ともないです」とのことで略治した。

2.アキレス腱炎

愁訴:左アキレス腱炎(男性、56歳)。
 
経緯:2年前から左アキレス腱の下部にシコリを自覚していたが痛みはなく放置。昨年6月、仕事中に痛みが自覚されたので整形外科を受診。「アキレス腱炎です。治すにはストレッチしかない」と説明を受け患部に注射。

 今年1月、山登りに出かけた折、激痛に襲われ半年ぶりに整形外科を受診して前回と同様処置を受ける。治療後痛みは消失したが1カ月を過ぎる頃から再発し、以後半年間に同様治療を4回受診。

 しかし、治療後1カ月ほど経過して再発する痛みが酷くなり、歩行は患部に負担がかからない歩行しかできず、立仕事は中断を余儀なしで階段の昇降が特に辛い。

診断:入江FTによる経別脈診で肝経脈の異常。左右の肝経脈・掌・患部を診ると左肝経脈・左掌の下焦部(図1)・マジックで印したアキレス腱部位(図2)にStを感知。図中の×の部位は最もStが強く、磁石を当てるとS極はSm・N極ではSt、実と診断(図3、図4)。


           図1                       図2

           図3                       図4
















治療:左盠溝・左瞳子髎に0番鍼を3㎜刺鍼してIPコードを10分間結線(左肝経別治療)。次に、熱鍼でマジック上をチョン・チョン・チョンと2周熱刺激をした後、×印の部位にチョン・チョンと2回の熱刺激(図5)。最後に患部を直灸用もぐさで覆って貼付(図6)。


           図5                       図6









 治療後、医師からアドバイスされたストレッチの様子を尋ねると「壁に手を付いてアキレス腱を伸ばすストレッチをやっていましたが、翌日は痛みがさらに酷いので今はやっていません。自己流は加減が難しくて駄目です」。それなら、先ほどアキレス腱に施術したように、プラス・ドライバーを熱して処置すればよいとアドバイス。

 夕方電話があり、「帰宅の折少し楽でした。ドライバーでするのは毎日でもいいですか?」。

第2診(2週間後)
 開口一番「朝晩の2回しています。楽になりました」と一安心されている様子。

治療:初診時と同様に処置する。術後、「今のような熱加減ですね。もう少し熱くしてやります」。

 焼鍼治療はチクッと感じる熱さが適温で、白い斑点の火傷痕になれば熱し過ぎであり低温では効果は半減する。治療は1~2分であるため、功を焦って過剰刺激に陥りやすい。薬物療法と同様に物理療法も質と量が著効・有効・無効の分岐点となることを肝に銘じるべきだろう。

第3診(2週間後)
 「階段の昇降は少し違和感がありますが、歩行と立ち仕事は支障がなくなりました」。入江FTにて患部を調べるとシコリにはStが感知され、母指と中指で強く挟むと痛みを訴えた。前回と同様に処置する。

 治療後、患部に装着していたもぐさを調べると特有の香りが消失していた。1週間~10日ごとに新しいもぐさに交換が必要とアドバイス。もぐさは病状の程度に比例して損傷され、その結果として薬理作用は著しく低下する。

 先人は「もぐさは毒消しの作用がある」と指摘したが、装着後のもぐさを煎じると、毒を吸収しているのが納得できる。つまり、新しいもぐさを煎じた時には芳しい香りが部屋に漂って心地良いが、装着後のもぐさはエグイ匂いに閉口する。

3.膝蓋軟骨軟化症

愁訴:膝関節痛(男性、24歳)。
 
 新入社員として研修期間を終え、先輩と会社回りの営業に従事し始めた6月初旬、右膝関節痛が発症し整形外科を受診。膝蓋軟骨軟化症と膝関節靱帯炎症と診断され、患部にヒアルロン酸と痛み止めの注射。

 以後2カ月間、1週間に1度の受診を続けたが、治療後4日間痛みは治まるものの、症例2と同様に再発した痛みはますます酷く、左膝関節まで痛みが自覚され出してMRIの検査。診断結果は特に異常なし。

診察:入江式経別脈診部で腎経脈部がSt。そこに円筒磁石を置くと心包経脈診部にStを感知。次に左右の腎経脈・掌・愁訴診をすると右腎経脈・右掌の下焦・左右の膝関節部にStが感知された。
   
治療:右大鐘R ― B 左外関、左京骨 R ― B 右大陵と1寸0番を3㎜刺鍼してIPコード結線(入江式経脈治療)、8分後抜鍼。

 経脈治療後、膝関節部にStが強く感知された部位に×印をして磁石を置いてFTを試みると、内側部はN極でSt・S極でSm(瀉が適する)。外側部はN極でSm・S極でSt(補が適する)であった(図7、図8)。


           図7                       図8









 外側部のマジック線上をチョン・チョン・チョンと1周後、2カ所の×印にチョンと1回の熱刺激。次に内側部の線上をチョン・チョン・チョンと2周した後、×印にチョン・チョンと2回の熱刺激(熱刺激の1回は補、2回は瀉となる)。

 初診の9月5日以降、4日目ごとに同様の処置をしているが、×印の部位は変動が見受けられ、その都度反応部位に熱刺激をしている。

経過:初診時、膝が曲る角度は背臥位で膝窩に握り拳がなんとか入る程度で、治療効果は前後の膝関節可動域を判定基準とした。後発の左膝関節痛は意図的に治療対象外としているが、右膝関節痛と同様の改善が見受けられている。

 9月17日(4回目)、治療前(図9)と後(図10)に背臥位で膝関節屈曲度を調べた。踵の位置(鍼管の位置)が3.5cm上位になったことから、膝の屈曲が改善したことがわかる。


           図9                       図10









4.まとめ

 鍼灸医療が正当な評価を得るために、業界および個人レベルで様々な努力がされており、スポーツ鍼灸というネーミングが誕生したのも表れの一つであろう。その普及活動に尽力されている鍼灸師の方々が、治療に焼鍼を併用されて効果を確かめていただきたいと願っている。椎骨の変位から発症する腰痛・膝関節痛や、靱帯・筋肉の炎症等の疾患に効果が期待できるからである。

 今回は標治法の症例であるが、焼鍼は経脈の方向性を利用すれば本治法に組み込むことも当然可能である。

P.S.
 焼鍼については、週刊『あはきワールド』第245号の「症例報告」を参照ください。


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