| 2011年11月9日号 No.256 | ||||
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■症例報告 接触法による奇経治療の症例寺子屋お産塾 田中寿雄 突発性右半身の痺れ(私自身)10月16日(日)の昼過ぎ、庭いじりをしている最中に突然右顔面の頬が痺れ出し、続いて右上肢の上腕部・前腕部・5指先端まで痺れた。戸惑う間もなく右下肢も痺れ始め、上肢同様足の5指まで痺れてしまった。3メートルほど先の椅子に座ろうと歩き出すと、ふわふわした状態で雲の上を歩いているような感覚。「いったい何が起きたのだろう?」と思いを巡らせながら擦診すると、右上肢の二頭筋・三頭筋、右下肢の大腿筋膜張筋・大腿直筋・腓腹筋のどれもが硬直している。右頬に痺れを自覚してわずか1分足らずで手足に及んだ症状は、長時間の正座で足が痺れて動けない状況に似て、気分は悪くなかった。 さっぱり見当もつかないまま、寝不足が続くと立ちくらみを経験することはあるが、半身の上下肢が同時に痺れたことは経験ない。どうしたのだろう? と思案していると、10分ほど経過した頃、潮が引くように消失した。ところが、同じパターンで就寝までに3回、いずれも右半身に限定した痺れが10分ほど発症した。 入江式FTで後頭部と後頚部を診察すると異常は感知されず吐き気もない。脳梗塞の前駆症状ではなさそうだと勝手な判断を下しても、「いったい何が原因?」の見当もつかないまま、後頭部と後頚部を経筋鍼でランダムに熱刺激して早い時間に就寝。翌朝の目覚めは普段通りであったにもかかわらず、前日と全く同様の症状が9時30分頃に発症して、前日と同様症状が5回、同じように10分ほどで消失した。 「自然消失せず、そのまま痺れが残ることはあり得る??」と、流石に不安になった。 診察:右半身に及ぶ症状だったので奇経診断を試みた。左右の≪角孫≫にセンサー(写真1)を当ててFTを行うと、左角孫はSm(スムーズ=異常なし)、右角孫はSt(ステッキー=異常あり)。陰陽五行説が説いている左は陽・右は陰から、陽経の奇経脈は異常がなく、陰経の奇経脈に異常ありと診断。 ![]() 図1 図2 診断:任脈 ― 陰蹻脈、治療側は患側とした。 治療:刺鍼はせず紙テープに釘を通して(写真3)釘の頭が経穴に接するように貼付して(写真4、5)IPコード結線。右列欠 B ― R 右照海に、加重穴として気海 B ― R 右照海。右後谿 R ― B 右申脈に、加重穴として下脘 R ― B右申脈と20分間。督脈 ― 陽蹻脈は効果をマイルドにする目的で併用した。(注 : IPコードの結線方向は刺鍼したケースと逆方向になる) ![]() 図3 図4 図5 経過:16日は3回、17日は5回発症したが、治療した翌日は2回となり、症状の消失は5分ほどに短縮した。以後、4日間連続して同様処置を続け、治療2回目の翌日から今日(10月26日)まで幸いにも1度も発症しておらず、一件落着を願っている次第。 まとめ「身体のどこに異常が発生したのだろう?」と、思いを巡らせてもさっぱり分からない心境に似た言葉が『意釈黄帝内經霊枢』(小曽戸丈夫・浜田善利共著、築地書館刊)の海論篇第三十三にある。「血海に邪気が実しますと、いつも身体が重く感じられて鬱々としていますが、いったいどこが悪いのかわかりません。血海の正気が虚しますと、いつもやせたように感じられて、身体が締めつけられるようですが、いったいどこが悪いのかわかりません」 経脈を河川と例えて注ぎ込む海には、水髄海・気海・水穀海・血海の四海があり、今回の症状は血海に変調が起こったのではないか? と自分勝手に納得した次第。 私が実践している接触療法は、刺鍼と比較すると少々手間が掛かる難点はあるが、子供は安心して受診してくれるのも事実である。 ![]() 図6 図7 鍼灸学校を卒業した1977年、鍼灸師として第一歩を踏み出そうとしていた頃、入江正先生の『経別・経筋・奇経療法』が自費出版され、その中の一節が強く胸に焼きついた。 『針灸の場合は末端の技術(というよりテクニックというべきであろうか)だけの摂取に目の色を変える初心者の方が多いようである。 針灸人はもっとロマンを求めてもよいのではないだろうか。空想し推理する。経絡を竹籠に見立てる。トポロジー空間を想定する。針を、電気を、磁石を薬品を思い浮かべる。上下を、左右を、前後を関連させる。そのような発想である。 針灸治療はやっと開発に着手され出した状態といえるかも知れない。従って自由がある、ロマンがある。私はこの自由とロマンに心ひかれるのである』 接触法による奇経治療は上記の文章が少し理解できた気分になった。
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