筋力が衰えて姿勢が悪くなり円背が強くなると、肩甲骨が脊柱から離れた位置に移動し、広背筋が引き伸ばされたまま、僧帽筋や菱形筋は緊張して肩をすくめた状態が長く続く。大胸筋が筋緊張して上腕骨の内転・内旋も起こる。では、座位になったとき、少しでも姿勢をよくするには、どうしたらいいだろうか。
今回はそんな座位での姿勢をテーマに勉強会を行った。私なりに学んだことをまとめてみることにする。
まずは顔を上げること
肩をすくめているときは、肩甲骨と鎖骨が外側方向に挙上し、反対に胸骨は内下方に落ち込んでいるような状態である。まずは顔を上げて胸を張らせることが重要である。患者の後ろに回って胸骨を下から擦り上げるように軽擦し、肩関節前面を軽く保持しながら両肩を後ろに引き起こすようにして上体を起こす。このとき、肩を真横に引いて広げるのではなく、すくめている肩をさらにすくめるように大椎の方向に向かって一旦動かして、自然に肩が動く方向に動かすと胸を開きやすい。これだけでも上がっていた鎖骨の角度が少し下がり、前方に出ていた肩甲骨が後方に戻りやすくなる。
肩甲骨は広範囲に移動している
上肢帯は肩甲骨と鎖骨からつくられ、胸鎖関節とのみ体幹と連結している。上肢帯は上腕骨が大きく動けるように広い可動域をもつが、そのためには、肩甲骨が肋骨の上を滑るようにスムーズに動くことが大事である。しかし、肩甲骨の下部を覆って上腕骨に停止する広背筋が引き伸ばされていると、肩甲骨の動きも悪くなるので背中が丸いままでは腕が上がりにくいのである。そんなときは広背筋をよく軽擦して筋肉の血行を促進し、少しでも筋肉の長さを元に戻すことによって、肩甲骨の動きが良くなってくる。
また、腕が上がらないときは、肩甲骨の動きを制限している僧帽筋や菱形筋、引き伸ばされた広背筋などを指腹で軽くつまんで、硬くなっている箇所を探りながら結合識マッサージをすると、かなり痛いがスッと血行が良くなり、上がりにくかった腕が上がりやすくなる。
しっかり座るためには筋力が必要
『あはき師のための在宅ケア実践マニュアル』(p113~p115)で紹介している「腰椎の捻り運動」と「肩関節の運動」は、上腕骨や肩甲骨の動きを改善し、座位を保つ筋力をつけるのに大いに役立つので、とても参考になる。ただ、円背が強い患者の場合、「腰椎の捻り運動」が行いにくいときがある。そんなときは無理をして身体を捻ろうとせず、両肩を後ろに引き起こし、患者の脊柱の一番後弯した部分を術者のお腹に当てて支え、左右に水平回旋させるだけでもよい。円背であっても座位になって手をベッドにつくことのできる患者には、自分でベッドを押し返してもらうと、骨盤を起こして脊柱を伸ばせることがある。目の前に手すりがあればそれに掴まって腕を引くと、同様に背中が伸ばせる。少しでも骨盤を起こしておへそを前に出すのを繰り返すのもいい訓練になる。
大胸筋の緩め方
また、前傾姿勢で大胸筋の緊張が長期間続くと、そのまま筋肉が硬くなって上腕骨が常に内転・内旋した状態になってしまう。座位で上肢の施術が行いにくい拘縮の強い患者の場合、仰臥位で大胸筋の緊張を緩和するには、無理に引き伸ばそうとするのではなく、筋肉が収縮している方向にさらに縮ませるように動かすと逆にフッと筋緊張が緩んでくる。大胸筋の起始部である胸骨や鎖骨を軽擦して、ダイレクトにほぐすのも効果がある。
また、先に菱形筋からアプローチしていくのもよい。手の平返しの術を使って肩甲骨の下に手を滑り込ませ(前述p67~p68)、四指を肩甲骨内側縁に当てたらそのまま四指を軽く屈曲・伸展を繰り返し、徐々に菱形筋の緊張を緩めていく。そうすると肩甲骨が少し外方に動いて腕が開きやすくなるので、大胸筋を引き伸ばす方向に動かしやすくなる。
腕を開くカギは螺旋状!
円背で関節拘縮のある患者は、前腕屈曲・回内、手関節屈曲位で、腕が胸の上に載ったまま寝ていることが多いが、このような状態では座位になってもなかなか胸を張ることができない。仰臥位で患者の母指が術者の合谷に当たるように施術者の母指と示指を患者の橈骨茎状突起の前後に当てて挟み込み、術者の中指・薬指・小指は患者の手背に沿わせ、橈骨に長軸圧をかけてネジを締めるように橈骨を螺旋状に押し込みながら回外方向へ回すと、関節を痛めることなく段々と腕が開いていく。腕全体の緊張が改善していけば、座位になったときに腕の重みで自然に腕が伸ばせるようになってくる。
伏臥位の効果
寝返りが打てる患者の場合、思い切って伏臥位にしてみると、かなり後弯していた脊柱でも目の前でフッと緩んでくることがある。伏臥位を長時間取り続ける必要はなく、首や胸の下にクッションなどを入れて息苦しくないように配慮し、10分ほど腰背部や脚をマッサージすれば十分である。再び仰臥位になったときには少し背が伸びたような状態になっているだろう。
円背が進むと脊柱が後弯するにつれて骨盤も後屈位になり、腹部を圧迫して、消化・吸収にも支障をきたしてしまう。少しでも座位の時間を設け、正しい姿勢を保って、自律神経機能の改善、消化機能の改善を促すことが重要である。
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