週刊あはきワールドへようこそ! 2011年12月28日号 No.262

灸療閑話 第62話


忙中閑話


灸法臨床研究会 福島哲也


   話題のスポット、東京ミ●ッドタウンの夜景
 今年のクリスマス(ただし、イブの24日ではなく25日)は、講習会なども一切なく奇跡的にも忙中に閑を得て、嫁さんと二人で朝から出掛けた。私からのクリスマスプレゼントの代わりというわけではないが、近ごろ話題の東京スカ●ツリー近くでの歌舞伎観劇(平成●村座・浅草)、これまた話題のスポット(東京ミ●ッドタウン・六本木)でのイルミネーション鑑賞、そして某有名老舗ホテル(東京・●ノ門)でのディナーと洒落こんでみた。

 ちなみに、のろけているわけではないので念のため。まあ、「忙しいという字は心を亡くすと書く」ともいわれているように、ときにはこんな時間も必要であろう。

引き寄せの法則?

 今回の歌舞伎の会場が隅田川沿いの仮設小屋だったためか、クリスマス寒波の影響かはわからないが、足元が結構冷えた。

 足の冷えに対するアプローチについては、以前(第28話『意外なツボの意外な効果』)などでも「三陰交+懸鐘」や「照海+申脈」、「湧泉+陥谷」、「爪甲の中央1点」や指端の灸、そして営池四穴を紹介したが、幕間に弁当を食べながら「内外のくるぶしの貫抜き施灸ってのもありだよな!」とふと思いついた。

こんなときにさえも、仕事(鍼灸治療)のことが頭に浮かんできてしまうのは私の悪い癖だ。

 翌日、少し遅れたサンタクロースのプレゼントか、それとも「引き寄せの法則」の影響か、足首(ちょうど内外のくるぶしの辺り)が冷えるという患者さん(Nさん・女性・50歳代前半)がちょうど来院したので、「内外のくるぶしの貫抜き施灸」を試みてみた。灸点紙を2枚重ねにして、左右の内踝尖と外踝尖に施灸をした。壮数で各10~15壮ほどだった(冷えているところは、透熱するまでに時間がかかる)。ここ(内および外踝尖)への施灸では、灸熱はくるぶしの深部(骨の髄まで?)に浸み入る。営池四穴での灸熱伝導現象(下肢内側を通り腹部まで伝わるお灸のひびき)は起こらないようだが、足首まわりの温暖化は思った通り速やかであった。

「引き寄せの法則」とは、宇宙のすべて(『見えない世界』と『物質世界』のすべて)に作用する「宇宙の法則」の一つで、「それ自身に似たものを引き寄せる」という。また、関心を向け続ければ、望むと望まざるとにかかわらず、それは経験として現れるという。

くるぶしのツボ

 自宅に帰り、『鍼灸阿是要穴』を紐解いてみると、内踝や外踝にあるツボについて以下のような記載があった。

踝尖 圖翼ニ出ズ。○下牙痛、内廉轉筋、脚氣、寒熱ヲ主治ス。足ノ内踝ノ尖ノ上、七壮ヲ灸ス。或ハ鍼ヲシテ血ヲ出ス。△足ノ内踝ノ下ニ垂ル尖骨ノ上ニ點穴ス。 

(出典は『類経図翼』。○主治は下歯の痛み、下腿内側のこむら返り、脚気、悪寒、発熱など。足の内踝尖の上に七壮を灸する。或いは鍼をして出血させる。△足の内踝の陥凹に取穴する)

外踝尖 圖翼ニ出ズ。○外轉筋ヲ主治ス。外踝ノ尖ノ上ニ三寸、七壮ヲ灸ス可シ。或ハ刺シテ血ヲ出ス。△外踝ノ尖ヨリ三寸上ニ灸ス。外轉筋ハ足ノ外廉ノ轉筋スルヲ云フ。按ズルニ此レ大概膽經ノ陽輔懸鐘ノ間ニ在カ弥。

(出典は『類経図翼』。○主治は下腿外側のこむら返り。外踝尖の上へ三寸に七壮を灸すべし。或いは鍼を刺して出血させる。△外踝尖から三寸上に灸をする。外転筋は足の外側のこむら返りのことをいう。思うに、これはほぼ胆経の陽輔と懸鐘の間に在るだろう)

脚踝穴 明堂灸経ニ出ズ。○脚ノ轉筋シ時ニ發シテ脚踝ノ上一壮ヲ灸ス。内筋急ハ内ニ灸ス。外筋急ハ外ヲ灸スル也。忍ブ可カラザル者ヲ療ス。△脚轉筋スル者ヲ治ス。脚ノ内廉轉筋セバ内踝二ノ上ヘニ灸シ、外廉轉筋セバ外踝二ノ上ヘニ灸ス。按ズルニ前ニ記ス所ノ外轉筋ヲ治スル外踝尖ノ穴ト互イニ考フベシ。

(出典は『黄帝明堂灸経』。○足のこむら返りが起きたときに、くるぶしの上に一壮を灸する。内側のこむら返りは内くるぶしに灸をする。外側のこむら返りは外くるぶしに灸をする。耐えがたい者を治療する。△足のこむら返りを起こした者を治す。足の内側がこむら返りを起こしたときは内踝の上に灸をし、外側のときは外踝に灸をする。思うに、前に記した外側のこむら返しを治す「外踝尖」のツボと互いに考えるべきだろう)

 以上の主治を見ると、これらのツボは「こむら返り」の名灸穴のようである。冷えに関わりがある記載は「踝尖穴」の「寒熱」だけであるが、足の冷え(特に足首まわり)には有効なツボだと思う。また、面白いのは灸の代わりに刺絡の指示があることと、「踝尖穴」の主治に下牙痛(下歯の痛み)があることである。

足趾のツボ

 実は、Nさんが来院したとき、「少し息切れがする」とのことだった。まず、左右の内関に金の鍉鍼(球状のほうの鍼先)を30秒ほど接触してみたが、特に変化がみられなかったので、動悸、息切れなどの名灸穴として知られているツボの反応を調べることにした。このツボは、背部や胸部にあるのではなく、足趾にあるのだ。私も頻用しているツボだが、詳しい場所は足の第2または第3趾(圧痛を調べて顕著な圧痛があるほうを選べばよい)の裏の付け根の横紋の中央である。今回のNさんの場合は、第3趾のほうに顕著な反応(圧痛およびこちらで触れたときの感触)があったので、ここに金の鍉鍼(尖ったほうの鍼先)を当て、十数秒ほど旋撚を加えた。

 なお、Nさんには肺癌の手術の既往があり、この半年ほどの間に数回入院し、抗癌剤の投与や放射線治療などを受けている。また、Nさんの普段の治療は、主に非刺入の鍼法(毫鍼での接触鍼や撫で鍼、鑱鍼、員鍼、鍉鍼など)と灸点紙2枚重ねでの施灸だけで行っている。

Nさん:「ああ、楽になりました」
私:「本当? 動悸、息切れにお灸で使うツボなんだけど……」
Nさん:「ええ」
私:「実は、鍼でも効くんですよ」
Nさん:「不思議ですね」
私:「本当に……」

 ちなみに、『名灸穴の研究』(深谷伊三郎著)には、「第三趾には、経絡穴はない。八兪経、第二厲兌説は別とする。この第三趾裏根部横紋中央に小灸三壮を施灸すると、動悸や息切れという症候を緩解させることができる」、「手の中指に心包経があるように、第三趾にもやはり心臓に関係するものがある。だから足裏に、いきぎれ、動悸調節の穴があるということがいえる」、「また、いきぎれ、動悸という症状は毎日継続施灸一週間で消失することを、はっきりと感じとれる」という記載がある。

 今回は、施灸ではなく鍉鍼でのアプローチであり、しかも、ほとんど瞬間的に劇的な変化が起きたのには驚いた。このあと、灸点紙2枚重ねで各7壮ずつ施灸を加え、再び足趾の圧痛を確認してみたところ、全く消失していた。

 今年も残すところあとわずかになったが、来年も鍼灸治療の地位向上に微力ながら尽力してみたいと思う。特にお灸については、ことわざの「苦あれば楽あり、楽あれば苦あり」に似た主題歌を持つ、先日、惜しまれながら幕を閉じた超長寿国民的時代劇TVドラマ)のように日本国民に(いや世界的にも)愛される治療法となれるように……。

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