| 2012年1月4日号 No.263 | |
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良導絡治療ってなぁに 第22回 膝関節疾患と良導絡治療
鍼灸治療院に、膝関節の痛みや不調を主訴として来院される患者さんは、腰痛、坐骨神経痛、頚・肩こり、五十肩等の肩関節周囲炎などと並んで多いと言われています。
なぜ、これほど膝関節疾患の患者さんが多いのでしょう。これには、日本特有な畳の上での生活習慣なども関係していると思いますが、やはり、体重を支えながら屈伸運動を行う関節であるということ、そのための膝関節の複雑な構造、機能そのものにも原因があると言えるでしょう。 膝関節には、普通に歩くだけで体重の約3倍の負荷がかかり、階段の昇降やジャンプなどの膝に負担のかかる運動を行った際には、体重の7~8倍の負荷がかかると言われています。 今回は、実際に臨床現場で遭遇することの多い「変形性膝関節症」を中心に、良導絡測定(良導絡チャート)に見られる特徴や、良導絡治療のポイントについて述べていきたいと思います。 1.膝関節の構造上、機能上の問題点①大きな可動性がある。膝関節は、屈曲・伸展するだけでなく、内旋・外旋運動(いわゆる捻じり運動)します。実際の屈曲、伸展時には、脛骨が内旋、外旋しつつ、その上を大腿骨が「ころがりと滑り」の運動を行っています。 ②可動性は大きいが不安定である。 大腿骨の内・外側顆は凸面であるのに対し、それを受け止める脛骨の内・外側顆面はわずかに凹面であるもののほぼ平面なため、動きが不安定になります。 ③内側半月は脛骨と強く結合し、動くゆとりがない。 外側半月は小さくO字型で、外側側副靭帯に付着していないために可動性がありますが、内側半月は大きくC字型で、内側側副靭帯に付着しているために可動性がほとんどありません。 ④多くの関節構造物で構成されている。 左右の動きを安定させる内・外側側副靭帯、前後の動きを安定させる前・後十字靭帯、クッション作用、すべり性、適合性のための内側・外側半月板、膝蓋骨を固定する膝蓋靭帯など、多くの関節構造物で構成されています。また、関節面には多くの血管や神経も走行しています。 膝関節は、このような複雑な機能、その機能を可能にする複雑な構造のために、加齢に伴う変性、スポーツなどの関節への過剰な負荷により、多くの障害、疾患が発症すると考えられます。 2.代表的な膝関節疾患膝関節は、スポーツ障害や外傷も非常に起こしやすい部位であるため、靭帯損傷(特に断裂)や半月板損傷といった疾患の場合、手術も含め整形外科的処置が第一選択となる場合もあります。そのためにも、患者さんの主訴である膝関節の痛み、不調の原因疾患が何であるかを、的確に鑑別することが重要です。 以下に、良導絡治療の適応症となる代表的な膝関節疾患を挙げてみます。 1)関節症:①変形性膝関節症。 2)膝内症:①半月板損傷②内・外側側副靭帯損傷③前・後十字靭帯損傷。 3)炎症性疾患:①膝蓋靭帯炎②滑液包炎③鵞足炎④慢性関節リウマチなど。 今回は代表的な膝関節疾患の中から、臨床現場で遭遇する機会の多い「変形性膝関節症」および「膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)」の症例をもとに、良導絡の測定結果(良導絡チャート)に見られる特徴や治療法のポイントなどについて述べてみたいと思います。 ●変形性膝関節症の病態および特徴と主な臨床症状 関節軟骨の摩耗という「退行性変性」と、摩耗した骨の表面に異常な骨(骨棘)の増殖が起こる「増殖性変性」が混在して起こる疾患です。関節軟骨をはじめ、軟骨下骨、半月板、靭帯、滑膜、関節包、関節周囲の筋など、関節を構成するあらゆる部位の変性・破壊をきたし、痛みと関節機能の障害に至る、複合的な疾患と言えます。 ①患者の大部分は、50歳以上の中高年です。 ②圧倒的に女性に多く、男性の約4倍です。特に肥満傾向の女性に多い。 ③階段昇降時痛(特に降りる時の痛みが強い)、正座痛、立ち上がり時痛、歩行痛、動作開始時痛が多くみられます。 ④他覚的所見として、内反変形(O脚)、腫脹、膝蓋骨圧迫痛、大腿四頭筋の萎縮などがみられます。特にO脚は患者さんの約80%に観察されるという報告もあります。 ●膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝)の病態および特徴と主な臨床症状 バレーボールやバスケットボール、頻繁にジャンプを行う陸上競技などでは、過度の膝屈伸運動による負荷から、特に膝蓋骨と膝蓋靭帯接合部に痛みや不調を訴える疾患です。 ①膝蓋骨下縁と膝蓋靭帯との接合部に圧痛を訴えることが多く、場合により腫脹・熱感も呈することがある。ジャンプ時はもちろん、着地時など急に動作を停止した際にも症状が増強する。 ②膝関節の伸展がしにくい、また伸展時に症状の増強を呈することが多い。 3.膝関節疾患の症例●症例1:変形性膝関節症本症例は、私の治療前にすでに、T病院・整形外科で画像診断により「関節軟骨の摩耗があり、骨棘の新生も見られる。特に左膝は内側半月板の摩耗・変形もある」として、変形性膝関節症と診断されていた症例です。 ・患者:N.N、女性、53歳 ・主訴:両膝の階段昇降時痛、屈伸時痛(特に伸展時)、膝以外では頚・肩こり、便秘 <初診時所見> ・身長・体重:160cm、67kg ・BMI=26.2 ・視診・触診:両膝の腫脹・熱感、左膝内側(関節裂隙部)の圧痛 ・内反変形(膝間):3横指 ・大腿周径:左44.5cm、右47.5cm ・外反試験:左・内側(+) ・膝蓋圧迫:左(+)、右(-) ・圧アプレー:左(+)、右(-) <初診時良導絡チャート>(図1) ![]() 図1 <良導絡チャートに見られる特徴・診断> ①平均電流量は28μAと年齢に比して低く、交感神経低下傾向で身体機能の低下、一般的に元気度の低下が窺われます。また、測定値のほとんどが生理的範囲内に入っていない点も気になります。 ②興奮はH系のH5(三焦)H4(小腸)H6(大腸)、F系のF2(肝)F6(胃)に、抑制はH系のH2(心包)H3(心)、F系のF1(脾)F4(膀胱)F5(胆)に見られます。良導絡症候群表では、膝関節に痛みや異常がある場合は、F2、F6の興奮、F1の抑制が見られるとされており、その特徴が確認されます。また、H1~H3の抑制に対してH4~H6の興奮があり、F2の興奮、F5の抑制が見られることから頚、肩および上肢の異常の特徴(頚肩腕症候群のパターン)も確認できます。 <治療法> ①全良導絡調整療法は全身的な元気度を高め、特にF1、F3を高めるためにF1-14(腹結)、F3-7(復溜)が加わっている基本Ⅳ型を施術。 ②膝局所の治療に関しては、内側関節裂隙および、鶴頂(奇穴)、F6-12(梁丘)、F6-11(外膝眼(犢鼻))、F5-11(陽陵泉)、F6-10(足三里)、F1-9(陰陵泉)、F5-5(丘墟)に置鍼した状態で、内膝眼(奇穴)とF1-10(血海)に低周波置鍼通電治療(1Hz、10分)を行った。また、膝関節疾患には灸治療が有効なため、置鍼部位に対して棒灸による施灸(鍼の刺入部位を棒灸で温める「灸根鍼」術)を行った。さらに、F5-12(膝陽関)からF3-10(陰谷)に向けて透刺鍼治療を行った。 <12診時良導絡チャート>(図2) ![]() 図2 <12診時の良導絡チャートに見られる特徴・診断> ①平均電流量が40μAに高くなり、H1~H3など抑制を示していた良導絡が調整され、全良導絡の測定値が生理的範囲内、あるいはそれに近い値を示すようになってきました。 ②両膝の症状も、関節周囲の腫脹・熱感が無くなり、歩行時、階段昇降時の痛みも改善してきています。 ●症例2:膝蓋靭帯炎(ジャンパー膝) ・患者:Y.T、女性、39歳 ・主訴:右膝外側痛及び右膝伸展障害とツッパリ感、膝以外では弾発指、股関節痛の既往あり。 ・現病歴:長年フラメンコ教室に通っているが、フラメンコの着地の際に右膝の痛みが増強。 <初診時所見> ・身長・体重:155cm、51kg ・BMI=21.2 ・視診・触診:右膝の膝蓋骨下縁外側(外膝眼部)の圧痛および腫脹・熱感 ・内反変形(膝間):1横指 ・大腿周径:左43.0cm、右43.5cm ・内反試験:右・外側(+) <初診時良導絡チャート>(図3) ![]() 図3 <良導絡チャートに見られる特徴・診断> ①平均電流量は51μAと正常値であり、身体機能の低下もなく、平均的な元気度と言えます。また、測定値のほとんどが生理的範囲内に入っていませんが、これはH4(小腸)H5(三焦)H6(大腸)の3良導絡が逸脱して興奮を示しているためと思われます。 ②興奮はH系のH5(三焦)H6(大腸)H4(小腸)に見られ、抑制はH系のH2(心包)H3(心)、F系のF5(胆)F6(胃) F1(脾) F3(腎)に見られます。症例1.の解説にも記載したように、膝関節に痛みや異常がある場合のチャートの特徴、F2、F6の興奮及び、F1の抑制とは、F1の抑制のみが合致しています。ただし、H5、H6、H4の次に電流値が高いのはF2であり、F6が抑制となっている以外は、良導絡チャート全体の興奮・抑制のパターンは症例1.初診時のパターンと類似しています。 <治療法> ①全良導絡調整療法は、平均電流量がほぼ正常値であることから、基本Ⅲ型を施術。 ②膝局所の治療に関しては、鶴頂(奇穴)、F1-10(血海)、内側関節裂隙、内膝眼(奇穴)、F5-11(陽陵泉)、F6-10(足三里)、F1-9(陰陵泉)、F5-5(丘墟)に置鍼した状態で、F6-14(伏兎)とF6-11(外膝眼(犢鼻))に低周波置鍼通電治療(1Hz、10分)を行った。また、上記の置鍼部位に対して棒灸による施灸(「灸根鍼」術)を行い、さらにF5-12(膝陽関)からF3-10(陰谷)に向けて透刺鍼治療を行った。 ③右膝外側部痛・腫脹・熱感が治まるまで、フラメンコの練習を休止するように指導する。 <8診時良導絡チャート>(図4) ![]() 図4 <8診時の良導絡チャートに見られる特徴・診断> ①平均電流量は48μAとほとんど変化がないが、主にH4~H6の興奮が低下したことにより、全良導絡の測定値が生理的範囲内、あるいはそれに近い値に調整されています。 ②右膝の症状は、初診時に見られた腫脹・熱感がなくなり、圧痛もかなり軽減しました。また、7診後から、回数を減らしてフラメンコの練習を再開しましたが、ジャンプ時(着地時)の痛みもほとんどなくなっています。 4.膝関節疾患の治療ポイント①中高年者に多い変形性膝関節症では、身体の各機能が低下している場合が多く、良導絡測定の結果も平均電流量が低く、F3(腎)やF5(胆)の抑制を示す場合が多く見られます。膝局所の治療だけでなく、異常良導絡の調整、基本治療点の治療など、全良導絡調整療法をきちんと行うことが重要です。②膝局所の治療に際しては、鶴頂、関節裂隙や膝眼など奇穴が多いので、反応良導点を確実に探索してからの刺鍼が重要です。また、腫脹・発熱など、炎症症状がある場合の深鍼は避けるようにします。 ③膝関節痛には灸治療が効果的です。刺鍼部位には鍼と併せて灸治療(私は前述の「灸根鍼」を実施)を行うことをお勧めします。また症例により、F5-12(膝陽関)からF3-10(陰谷)に向けての透刺鍼治療が効果的です。 参考文献 1)日本鍼灸良導絡医学会誌、Vol.20 No1.P8~13 2)後藤公哉:良導絡療法 基礎と臨床 エンタプライズ社、P280~308 3)疾患別治療大百科 シリーズ2 膝関節痛 医道の日本社、P114~119 ★この記事に対するご意見やご感想をお寄せください≫≫ Click Here!
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