| 2012年1月11日号 No.264 | |||||||
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■症例報告 熱鍼治療の症例 (2)寺子屋お産塾 田中寿雄 熱鍼は経筋が寒の邪気を受けて発する病変に適応する。治療は流注の上流である手足の末端から体幹の順に、治療部位となる経筋穴へチョン・チョンと熱刺激を点状に接触刺激を2~3回施す。今回報告する症例は受診者が初産を迎える妊婦さんで、さらに鍼灸治療の経験がなく不安そうな様子だったので点状刺激ではなく、経筋の流注上を走行方向に従って7㎜程度の帯状に撫でる感じで温熱刺激を施すだけにした。
症例 36歳 妊娠7カ月の妊婦さん聞診 : 6日前から右殿部が痛み出して、初産で妊娠7カ月を迎えているので産婦人科を受診。坐骨神経痛と診断され、腹帯をしっかり巻いて対処するよう指示されたが徐々にひどくなって起居に難渋しているとのこと。問診 : 妊娠ライフは今回の症状が発症するまでは順調で、出産予定日は3月24日とのこと。鍼灸治療の経験はなく、周囲の人に妊娠中でも大丈夫なのか尋ねても分からず心配されている様子。ご主人が過去3度腰痛のたびに受診されたことから夫婦揃って来院。 切診 : 経筋症の有無を入江式FTで診察すると右顔面部がSt(ステッキ―=異常あり)。次いで右足の陽経筋上にそれぞれFTを行うと、膀胱経筋と胆経筋がSt。 冷えが原因しているはずだと尋ねると、妊娠中も大学職員として勤務を続け、痛みが発症した前日、大学で催しがあり会場内の温かさと室外の寒さの温度差を出入りのたびに感じましたと話してくれた。
診断 : 右膀胱経筋・右胆経筋。 治療 : 膀胱経筋・胆経筋ともに足先から殿部までを流注に従って帯状に熱刺激で撫で上げて、殿部に感知した直経8cmほどのStの周囲を熱刺激で帯状に撫でて、円の中はクロス状に熱刺激(写真1~4)。 ![]() 写真1 写真2 ![]() 写真3 写真4
術後 : 右上の側臥位から起き上がった時、「あれ、痛くない」と安堵した表情だった。念のため殿部にモグサを当てておくようにアドバイス。 第2診 (1週間後)痛みは初診以降ないとのことで、赤ちゃんの応援にお灸をやってみたいと来院。掌の中央部にある奇穴「手心」に円筒灸と「三陰交」に半米粒大を3壮ずつ施灸。以後は自宅で続けるよう指示。![]() 写真5 (ただし、もぐさは法的には灸治療以外に使用することは禁忌であることを通知した上で、心地良い感じ・装着感がない場合は体自身が受け入れている反応であり、もし違和感があれば体は拒否している反応であり、外すよう指示している。違和感を感じて外された妊婦さんは20年以上になるが現在まで一人もいない) まとめ『意釈黄帝内經霊枢』(小曽戸丈夫著)の経筋篇第十三には、経筋の病症に対して「焼針を用いて速刺速抜する」と書かれてある。しかし、本症例の経筋治療は温熱刺激で撫でるような接触刺激でも効果があることを示すものであった。Tさんを治療した2日後、同じく初産で出産予定日が3月16日という妊婦さん(37歳)が来院され、右仙腸関節から右下肢外側と股関節が痛いとのこと。経筋の異常が足の胃と膀胱に感知されたので、流注に沿って帯状に殿部までを撫でただけで著効した。術後、「高齢出産になるので、できる限りのことをしたいです」と言われたので、「手心」と「三陰交」へのお灸を薦めた。(※就寝前「手心」に灸をすると、体が求める睡眠の質への効果があるように感じている) 「高齢出産と言われたが、お産は誰がするの?」と問うと、「私と赤ちゃんです」と模範的な返答だった。 東洋医学は陰陽五行説と臓腑経脈説を原理原論とする医学であるが、陰陽説には絶対的陰、絶対的陽はなく、陰の中に陽があり、陽の中に陰がある。さらに、陰陽が50%ずつもない、と公理にある。 陰陽説に基づいてお産を考えれば、主はお母さんか、赤ちゃんのどちらかとなる。つまり、お産はお母さんと赤ちゃんのどちらかがメインであり、一方はサブである。もし、お母さんが主でお産を迎えるのであれば初産が37歳といえば高齢出産の範疇に入るかも知れない。しかし、赤ちゃんが主であれば高齢出産ではない。 お母さん自身がお産をしたい日を決めて産むことができればメインであるが、実際は赤ちゃんが最善の時を握っていて産まれてくるのだろう。この状況こそが生理的なお産の姿であるとすれば、赤ちゃんがメインである。 「スーパー・サブとしてしっかり応援してあげて」と話すと、「産むのではなく、産まれてくるのですね。気持ちがとても楽になりました。お灸をやってみます」と言ってくれた。
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