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2012年2月1日号 No.267

症例から学ぶ在宅ケア“生”情報 その2


「どんな状況でも生きるための施術が必要である」と確信させてくれた
四肢関節拘縮の独居女性Iさん


㈱訪問リハビリ研究センター 小田真理

症例:股関節屈曲拘縮Iさん 76歳 女性

主訴

体調不良のため1カ月半入院。退院してくると今までとは違い完全な寝たきりとなり、おむつ交換ができないほど関節拘縮が一気に進んだ状態となり、寝返りも自力でできず床ずれが出現しケアマネジャーから当社での訪問リハビリ(在宅ケア)を申し込まれてきた。

既往歴
 右先天性股関節脱臼があり、同じく右の足先は子どもの時に大怪我をして自由に歩行ができていない。また高齢のために栄養が足りず全体的に生命レベルが低下している。しかし、大きな病気はしていない。


初回アセスメントまでの経過
 2010年4月に嘔吐と下痢が長引き体調不良で入院。その前までは、4点杖とベッドの柵や部屋内に付けた手すりを頼りに玄関までの移動は可能で、トイレは時間がかかるものの自力で移動して用を足していた。週2回デイサービスを利用してそこで入浴をしていた。ところが、吐き下しで栄養が取れず、水分摂取も悪く、意識レベルが低下し、脱水症だとして入院。入院中に認知症状が出現した。ベッドで完璧な寝たきりとなった。

 退院後は、独居のため朝昼夕晩の4回ヘルパーが交代で入り、おむつ交換、食事介助、掃除、洗濯、買い物。入浴サービスは週1回利用。医療で訪問看護が床ずれの処置を行っている。おむつ交換で股関節が開かなくなり清潔保持が難しくなった。

初回アセスメント(2010年5月13日)
 意志の疎通は時間をかけてゆっくりと行うことができる。手はかろうじて動かせることは可能であるが動かせる範囲はすこぶる狭い。

 両股関節の可動域が狭く、開こうとすると「痛い痛い」を連発する。皮膚は弛緩していて皮がだぶついているようで急激に体重が減ったのが窺える。全身が緊張して動かないように力を入れているのがわかる。

 ある程度、全体状態が改善するまでの間4回/週で対応することになった。


          5月21日の訪問時











短期目標
①両下腿と骨盤の角度の改善を図る。
②良肢位はAZPを保持する。
③関節リラクゼーションテクニックで血行促進を図る。
④筋力増強。
⑤痛くない肢位でのリラックスを模索。
⑥自力での寝返りができるようにする。
⑦電話を掛けることができようにする。
⑧自力で水分補給ができるようにする。

施術内容
①首の上げ下げ運動で、後頭部の重力の負荷を軽減させる。
②肩甲骨の位置を正しくし、背腰部の重力負荷を軽減させる。上半身の緊張を改善し、背部腰部の筋肉の結構を改善させるために手を深く差し込み、刺激を与える。
③股関節の運動は両膝から大腿骨の長軸方向にわずかな力を加え骨盤の凹部に大腿骨の骨頭をはめ込ようにリズミカルに左右交互に押すテクニック(『AZP理論に基づく変形徒手矯正術』参照)などを行う。
④Iさんに直接「膝を開くよ」と声かけをして股関節を開く運動を反復して行う。
⑤下肢の関節リラクゼーションテニック(『あはき師のための在宅ケア実践マニュアル』参照)
足趾関節 → MP関節 → 足関節 → 膝関節 → 股関節 と股関節の運動テクニック(50回キャンペーン)をできる範囲の角度でできるだけゆっくり丁寧に動かす。“筋肉は血液を動かすポンプ”というイメージで片足につき10分ほどかけて行う。
⑥ゆっくりと両膝をくっつけたまま、声かけをしながら、手を身体が向く方向に伸ばさせて寝返り運動を3~4回行う。
⑦枕の位置を整えて枕やクッションを挟み込み良肢位の保持を行う。

施術経過
2010年5月13日(初回施術)~約1カ月
 初めの頃はヘルパーさんや看護師さんなどとの違いが分からず話もしない状態であったが少しずつコミュニケーションが取れ出し、水分補給の要請が出てきた。声が出てきた。緊張と不安で睡眠不足になって昼夜逆転もあったようだが少しずつしっかりしてきた。

2010年6月1日~11月末日
 体調が比較的安定してきて、ヘルパーさん達と身体の動かし方などの協議も重ね小康状態のまま日々を送っていた。普段は訪問日誌ノートを常設し、ヘルパー・看護師・私それぞれ担当した時間ごとにコメントを書くことにして、Iさんの状況を記入し、お互いの連絡を行った。


                          6月9日の施術後











2010年12月~
 寒さが加わると保温対策が重力負荷を増大させ体調管理が難しくなった。いつ緊急の事態になってもよいようにお互いの緊急連絡網を確立させ、業種を飛び越えての連絡体制や緊急対応の準備などの会議も行われた。独居であるため自分が緊急の場合に立ち会う場合も想定しておかなくてはならないので、窓を開けての声かけが、結構緊張していたと思う。

 しかし、体調がすこぶる悪くなったときに主治医が入院を決意され、年末に病院で最後を迎えられた。


最後に
 どんな状況でも生きるための施術が必要であると確信した。生きて生活をしている間は少しでもリラックスできて、人としての尊厳を守って生きていてほしいと思う。

 この仕事を通じてIさんから人生を学んだ。また他職種のプロとしての介入の仕方やサービスの提供の重要性も生の現場から経験させてもらった。まだまだ知らないことが多いと実感した。やりがいのある充実した日々を体験させていただきました。

◎ご質問・ご意見・ご感想は≫≫ こちらまで

第12回あはき師のための在宅ケア実践セミナー
2012年3月開催
日時 2012年3月10日(土)午後1時~午後5時(受付12時30分~)
2012年3月11日(日)午前10時~午後5時(受付9時30分~)
内容 あはき師のための在宅ケア実践マニュアル 』をテキストにして“解剖学的肢位(AZP)理論に基づく在宅ケア”の実技習得を目指す
講師 西村久代(株式会社訪問リハビリ研究センター代表取締役)
会場 東洋鍼灸専門学校
詳細 http://www.human-world.co.jp/seminer/seminer028.html



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