鍼灸マッサージ師が自分たちの免許で在宅ケアにかかわる場合、医療保険(療養費)を取り扱って介入するわけだが、実際に患者さんに接してみるといわゆる「マッサージ」や「鍼灸」(だけ)ではなく、「変形徒手矯正術」を施す必要性があるケースが多いことがわかる。幸いなことに、マッサージ師が施術する「変形徒手矯正術」に療養費が支給されるが、この「変形徒手矯正術」っていったい何だろう。不思議だが、それを知る術はほとんどない。
マッサージ師の養成施設で「変形徒手矯正術」を教えているところがあるだろうか。「変形徒手矯正術」について解説したマニュアルがあるだろうか。「変形徒手矯正術」はどのような症状に対して行うのか、そして、それはどんな手技なのか、どのようにして正しく理解すればいいのだろうか。本書が上梓されるまでは、マッサージ師やマッサージ師を目指す学生が「変形徒手矯正術」について学べる機会がほとんどなかった。
本書は「PartⅠ 療養費の取扱と変形徒手矯正術」「PartⅡ AZPの意義とその臨床応用」「PartⅢ 運動機能不全による末期肢位に至るプロセスとそれを回復させる変形徒手矯正術の実際」の3部構成になっている。PartⅠでは療養費の取扱を行ううえで変形徒手矯正術の支給基準がどのようになっているのかなど保険取扱について解説している。PartⅡでは変形徒手矯正術を有効に施すために必要な解剖学的肢位(Anatomical
Zero Position:AZP)について理解を深める。PartⅢでは、変形徒手矯正術の適応となる関節拘縮がなぜ起こるのか。そして関節拘縮はどのように進行し末期肢位に至るのか。そのメカニズムを詳細に分析し、また関節拘縮を改善させる変形徒手矯正術の技を骨モデルと人モデルを使いリアルに図解している。
本書を熟読して、正しく保険を理解し、正しく施術を行う。AZP理論に基づく変形徒手矯正術を施して関節拘縮が改善されれば、おむつ交換や衣服の着脱が容易になる。膝関節が90度になれば、必ず座れる。座ることができれば、縦の重力の影響を受け、体の状態が改善される。関節拘縮のメカニズムとAZPを理解することができれば、施術は確実なものとなる。「座りたい」「立ちたい」「歩きたい」「せめて自分で用が足せたら……」。そんな患者の思いが、本書を読めばきっと実現させられるだろう。
Part Ⅰ 療養費の取扱と変形徒手矯正術
Chapter 1 変形徒手矯正術は療養費の対象である
療養費の取扱について正しく理解する/療養費の対象となる施術はあマ指師が行う施術であること(第1章 通則)/療養費の支給対象となる適応症は筋麻痺・関節拘縮等(第2章 療養費の支給対象)/変形徒手矯正術は医師の同意書が必要(第3章 医師の同意書、診断書の取扱い)/変形徒手矯正術による療養費の支給は初療(再同意日)から1カ月 6大関節を対象とし1肢ごと(最大4肢)に支給(第4章 施術料)/往療料は歩行困難などで通所が困難な場合に支払われる(第5章 往療料)
Chapter 2 関節拘縮と変形徒手矯正術
変形徒手矯正術は関節拘縮に対して行う/骨の役割/筋肉の役割/関節の役割/寝たきりになると最終的に胎児様の姿勢に変形する/変形徒手矯正術でQOLが向上する/維持期の施術はくれぐれも慎重に/関節拘縮のいろいろ
Part Ⅱ AZPの意義とその臨床応用
Chapter 3 AZPの有効性を実験で確認する
AZP(解剖学的肢位)とはどんな肢位か/重力を骨で支え、動きは筋肉が作る/AZPが有効な理由/足の第3指が正面である理由/AZPの有効性を確認する実験
Chapter 4 AZPの臨床応用
浮腫による関節拘縮とAZP/足切断による関節拘縮とAZP
Part Ⅲ 運動機能不全による末期肢位に至るプロセスと
それを回復させる変形徒手矯正術の実際
Chapter 5 このPartを学習するにあたって
長期臥床患者がなりやすい末期肢位に至るプロセスが理解できれば自ずと治療プログラムが見えてくる
Chapter 6 片膝関節拘縮(4の字拘縮)に至るまでのプロセス
仰臥位でのAZP/変形のプロセス1/変形のプロセス2/変形のプロセス3/変形のプロセス4/変形のプロセス5/変形のプロセス6/変形のプロセス7/変形のプロセス8/変形のプロセス9/変形のプロセス10
Chapter 7 片膝関節屈曲拘縮(4の字拘縮)に対する矯正術
片膝関節屈曲拘縮患者/手技1…体幹の矯正(頭部)/手技2…体幹の矯正(胸郭部)/手技3…体幹の矯正(骨盤)/手技4…大腿骨の牽引/手技5…足底位置の矯正/手技6…大腿骨の牽引/手技7…足底位置の矯正/手技8…膝関節の伸展/手技9…股関節の内旋・外旋/手技10…足関節部の矯正/手技11…下肢全体のAZP矯正
Chapter 8 両膝関節屈曲拘縮(内また拘縮)に至るまでのプロセス
仰臥位でのAZP/変形のプロセス1/変形のプロセス2/変形のプロセス3/変形のプロセス4/変形のプロセス5/変形のプロセス6/変形のプロセス7
Chapter 9 両膝関節屈曲拘縮(内また拘縮)に対する矯正術
両膝関節屈曲拘縮患者/手技1…Th10・11・12での回旋矯正/手技2…足底位置の矯正/手技3…大腿骨の牽引/手技4…膝関節の伸展/手技5…股関節の内旋・外旋/手技6…足関節部の矯正/手技7…下肢全体のAZP矯正
Chapter10 上肢の拘縮に至るまでのプロセス
立位での上肢のAZP/変形のプロセス1/変形のプロセス2/変形のプロセス3/変形のプロセス4/変形のプロセス5
Chapter11 上肢の拘縮に対する矯正術
上肢の拘縮患者/手技1…肩関節の矯正/手技2…体幹の矯正/手技3…肩甲帯0ポジションへの矯正/手技4…肘関節・手関節の矯正/手技5…上肢全体の矯正
Chapter12 届かないところに手が届く「手の平返しの術」
手の平返しの術の方法
Chapter13 寝たきり患者の臨床例
施術前の患者/施術の実際/施術後の患者
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