全身二十四経絡や、全身に走向する任脈・督脈、そのほか超脈など、本書で語られている経絡は、古典のそれと大きな違いがある。タオ指圧はなぜ既成概念を壊す経絡理論を提唱するのか。著者はこれらの経絡全てについて「今の時代の経絡手技臨床には、どうしても必要なもの」とし、こう語る。
「気と経絡の世界は、知的に理解することができません。純粋経験によってしか、把握できないものです。医療にとって大切なのは、治病効果であって理論ではありません。タオ指圧は、あくまでも最も効果的な手技による経絡治療を追求し、その結果として、これまでの東洋医学の常識を覆すものになったのです」
タオ指圧は、全身十二経と、腹証による指圧の診断体系を確立させた経絡指圧の創始者、増永静人師の教えを受け継いだ著者が四半世紀にわたる指圧と経絡の研究によって体系づけたもので、本書はその集大成ともいえる一冊である。「第1部 タオ指圧の精神的地平」「第2部 気の技法と超脈」「第3部 実在の全身二十四経絡」「第4部 証診断と経絡臨床」の4部構成で、タオ指圧の歴史や、気の技法、超脈、全身二十四経絡の理論、基本手技、腹証、経絡治療パターンなどが序章から第12章にわたって詳しく解説されている。また、「気の技法」「超脈走向」「基本手技」「虚の経絡治療パターン」などを収録したDVDが付録でついている。
本書を熟読し、タオ指圧の世界に入り、副題にある「証診断と経絡臨床の真実」を悟ったとき、本書の主題にある『タオ指圧、東洋医学の革命』の真意がわかるはずである。そしてそのとき、あなたは駅伝ランナーのように「タオ指圧」という文化(タスキ)を次世代へとつなぐ伝承者(ランナー)になれるだろう。
●関連記事(週刊あはきワールド 2011年11月23・30日合併号 No.258)
読者からの感想文集 『タオ指圧、東洋医学の革命』を読んで/M.T.ほか
第1部 タオ指圧の精神的地平
序 章 経絡の臨床効果
経絡認識の心と臨床効果/経絡治療の効果/東洋医学の治療とは?
第1章 治療者として立つ
患者さんの目、治療師の力量/病気は火事、症状は警報機/自然科学的世界観が邪魔する/症状は病気か?/症状も取らなければならない/日々の臨床と治療デモンストレーションの違い
第2章 経絡治療の根本にあるもの
証が意味するもの/虚の経絡はどのように見えるか?/虚空が宿る経絡を虚という/すべては患者さんのために/触覚を忘れるほど一心に/共感と圧の深さ
第3章 タオ指圧と手技療法の歴史
導引・按蹻/日本の按摩・導引/堕落しやすい手技/宗教と医療/あなたの死を救うものは?/タオ指圧は堕落しないか?/草創期の指圧/昭和の指圧ブーム/増永静人師のエピソード/増永師による研究/本来の姿に帰った東洋医学/増永師の功績/タオ指圧の成立
第2部 気の技法と超脈
第4章 疲労せずに最大の効果を上げるには?
気の導引の成立/気心道が生まれる/合気法/気の技法/古典の虚実補瀉/タオ指圧、3種の補瀉/瀉点を体感する/補瀉のどちらに力を入れるか/補瀉の精神…母の手・父の手/宇宙の心を一者と呼ぶ/一者の両側面/手技の種類
第5章 超脈とその効用
超脈の効用/超脈を認識する/誰が経絡を認識するか?/自他一如
第6章 タオ指圧の基本手技
基本手技と超穴/基本手技Ⅱ…側臥位/基本手技Ⅱ…腹臥位/基本手技Ⅱ…背臥位(1)/基本手技Ⅱ…座位/基本手技Ⅱ…背臥位(2)
第3部 実在の全身二十四経絡
第7章 経絡の走向と施術
術者の共感に合わせてくる経絡/全身十四経の走向/経絡への施術
第8章 各経絡が意味するものⅠ
肺・大腸経/胃・脾経/心・小腸経
第9章 各経絡が意味するものⅡ
腎・膀胱経/心包・三焦経/肝・胆経/任脈・督脈
第4部 証診断と経絡臨床
第10章 証の精神世界
証と東洋的生命観/心身一如/新しい人生の創造/もう一つの世界/虚と虚空/虚空の心になるには?/触診と切診/手技は東洋医学の本道/経絡は時代に応じて変化する
第11章 腹証
腹部切診/まわり道による診断/意念と証/腹部の虚のシコリ/切診の実際
第12章 経絡治療の実際
無意識レベルの影響/証診断の実状/虚の経絡治療/実の診断と治療/症状の虚実のタイプを診る/虚実混合型Ⅰの治療/虚実混合型Ⅱの治療/症状別治療/証に基づかない治療/証を超えた治療/真脈