週刊あはきワールド 2017年6月28日号 No.527

あはきメンタル~医療コミュニケーション編~ 第7回

治療者と患者の間に発生する問題(後編)

 (1)奈良雅之(2)藤田晶子 


◎第6回(奈良雅之・藤田晶子)
 治療者と患者の間に発生する問題(前編)
◎第5回(奈良雅之・岡田紘未)
 他職種との交流(まとめ)
◎第4回(奈良雅之・岡田紘未)
 他職種との交流(後編)
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(1)奈良雅之:目白大学大学院心理学研究科教授
(2)藤田晶子:鍼灸師、都内大学院 臨床心理学コース博士前期課程在籍

 鍼灸院に来院される患者さんの多くは、腰痛や肩こりの改善など、はっきりとした目的をもって治療を受けにいらっしゃるのがほとんどではないかと思います。

 一方、地域医療では、本人の希望というよりは、家族や他の医療スタッフの勧めで鍼灸治療を受ける場合がまれにあります。

 そうした治療動機が高くない患者さんに対してどう関わるのか。

 前回、藤田晶子氏は、治療者→患者という一方向の働きかけに陥りがちな関係においては、患者が治療者に依存するような関係性が生じやすいと指摘しました。一方、心理臨床におけるセラピストとクライエントの関係にみられるような、セラピストとクライエントとの間に結ばれる治療に関する契約に従って協働して治療に向かう努力がなされる場合は、双方向のコミュニケーションが成立する一方で、クライエントに転移感情が芽生えやすいとしました。

 後編では、「依存」と「転移」について藤田晶子氏の論稿を基にさらに考えてみたいと思います。

 鍼灸臨床における「依存」と「転移」については、『あはき心理学入門』第4章(97頁)を参照ください。

 依存とは、他人の関心、他人との接触、他人からの養護や介助等を求める欲求と行動の傾向であるとされています。治療者と患者の関係において、患者の依存欲求は受療行動を促進することがありますが、治療とともに症状が軽減してくると、依存欲求は低下します。

 しかしながら、患者自身の依存欲求を満たすことが、来院の隠れた目的であるような場合、治療者は患者に振り回されることになります。一方向の働きかけに陥りがちな治療者と患者の関係は、そうした意味で治療の妨げになることがあります。

 極端な例では、依存性パーソナリティ障害があります。依存性パーソナリティ障害は、自分の信頼できる人からの注目を一身に浴びたいと期待して、主体性のない行動や振る舞いをもってその人に強く依存するのが特徴です。また、境界性パーソナリティ障害では、他人に見捨てられるのではないかと強く考えてしまうような「見捨てられ不安」や裏切られたと感じた時に感情が不安定となり強い怒り感情が表出されるような「衝動行為」がみられることもあり、治療者と患者の関係を適正に保つためには知っておく必要があります。

 以下は藤田晶子氏の論稿です。
 

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