週刊あはきワールド 2017年12月6日号 No.548

追悼文

ただ、天のみが継ぐ ——石田秀実さんのこと

鍼灸ジャーナリスト 松田博公 


 

2006年11月4日、日本伝統鍼灸学会大分大会で
講演する石田秀実さん
 石田秀実さんの思い出は、故井上雅文先生の思い出に繋がる。1980年代までの井上先生は、経絡治療家の多くがそうであるように、「気」について語ることがなかった。その先生が、90年代に入ると、「気」を語るようになる。あるとき、わたしは問いかけてみた。

 「気を口にされるようになったのは、石田さんの著書『気・流れる身体』に出逢ってからですか」

 井上先生は、見透かされたように、少し驚いた顏をして、「そうなんですよ」とおっしゃった。

 『気・流れる身体』の出版は、1987年の暮れだった。わたしはそれを手にすると、すぐに北九州の石田さんの下宿を訪問した。そのころ、「気」について鍼灸師、気功家に聴く、5回の連載インタビューを企画していて、第1回に、石田さんの「気」論をあてたかったからである。

 小さな木造家屋の2階が石田さんの部屋だった。ガラス窓からは、外の樹林が広く見渡せ、棚には、漢方薬の入った瓶が沢山並んでいた。石田さんは、近くの山に生薬の採集に行くと話した。「ここで採れるミシマサイコはとても質がいい。土地の気が良いのでしょう」。石田さんが、中国古典学にとどまらず、作曲をし、英文で現代音楽評論を書く多才なひとであると知ったのも、このときだった。
 

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