週刊あはきワールド 2018年4月4日号 No.564

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.48-1

鍼灸院で見受けられる症状を入江FTシステムで治す!(1)

~入江式経別治療とその症例~

寺子屋お産塾 田中寿雄 


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 ◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例。この企画は、鍼灸医療に対するさまざまな視点から考察されていることを参考にされて、日々の臨床に役立てておられる鍼灸師の方にとって意義あるあはきワールドの看板企画であろう。

 鍼灸師として新たな道を歩み始めた人達は近い将来、鍼灸院開設を念頭において取り組んでいる初学者の方々に、開設から40年、当院が歩んできた姿を赤裸々に紹介することは、反面教師の意味で意義があるかも知れない…、という思いから述べてみることにします。

 昨年、ヒューマンワールドから『入江FTシステム入門』と題して初学者の方々に入江式経脈・経別・経筋・奇経治療のガイドブックをまとめてみましたが、私自身が入江システムから学んだことを述べてみます。

 私は鍼灸学校の入学を勧めてもらったとき、深刻な体調不良に悩んでいなかったこともあり、鍼灸治療を受診した経験は一度もなく、実際に見学したこともありませんでした。そういうわけで、卒業後に鍼灸院を開設しようという思いはありませんでした。ところが、入学した学校では2年・3年には臨床の時間があり、学生が外来受診者を治療するという授業がありました。診察・診断・処置は生徒にすべてお任せで、担当教師に質問しない限り指示や指導は一切ありませんでした。それでも、処置後「楽になりました。いいお仕事ですね。頑張ってください」と、嬉しい言葉をかけられることがありました。

 授業では臨床時間に興味を持ったことから、卒業した年に臨床時間の延長といった気持ちで鍼灸院を開設したというのが本音でした。

 ところが、鍼灸院を開設して実感したことは、学校という看板の下とは違い、私個人に託される受診者の思いをダイレクトに痛感するたび、学校で気軽な気持ちで得た知識・能力は、真剣に取り組めば1カ月もあれば誰もが修得できるレベルに過ぎないことに気づくのに月日は必要ありませんでした。

 確かに0番鍼の刺入・半米粒大の艾柱での施灸はでき、筋肉の緊張の有無が少しは把握できることで、新米鍼灸師の資格に該当する能力と言えるのか。つまり、プロとして必須能力のレベルでないことが、さまざまな症例との出合いで身に沁みて実感した思いでした。

 開院後、このような心境の折、入江正先生の『経別・経筋・奇経療法』の著書と出合い鍼灸医療の世界を初めて垣間見たような気持ちになりました。
 
 鍼灸学校では東洋医学は望・聞・問・切の4診で診察することを学びましたが、4診により何を得るのか? 言い換えれば、鍼灸治療は何を目標に治療するのか? ということを模索も理解もなく鍼灸院を開設したことは、臨床現場に何も持たずに身を置いた状況でした。

 現代医学は科学の進歩に併せて発展を遂げ続けていますが、著書との出合いは東洋医学が2000年前に完成された医学として、全く異質の生理学・病理学・診断学・治療学によって構築されている医学であることを初めて知ることができたという心境だったのです。私が学校での臨床時間にやっていたことは、痛いところに手を当てるといった手当の範疇で民間療法レベルを痛感した心境でした。

 しかし、初めて著書を読み終えた時、私がそれまで手にしていた本とは全く違っていたのです。私と同様、その違いに戸惑う鍼灸師の方がおられかも知れないという思いから、私が迷走を繰り返した歩みとなった大きな原因から述べてみます。

 著書の素晴らしさがヒシヒシと実感できるまでには時間が必要だった理由は、12経脈と督脈・任脈を加えた14の経脈上にある経穴は、さまざまな病態にそれぞれ有効な経穴であるという≪経穴主体の視点≫で鍼治療を捉えていたことに尽きると思っています。ところが、著書には≪経脈の流注と方向性≫の重要さが繰り返し述べられているにもかかわらず、そのことの意義がなぜ大切であるかという視点が希薄だったことに尽きます。そのような状態から少しずつ抜け出せるに従い、これが鍼灸医療の根幹であり、生理学・病理学・診断学・治療学だ、とつながり始めたのです。

 現在も拙い感性ゆえに悪戦苦闘が続いているのは誠に遺憾ですが、多様な愁訴と向き合いながらも、素晴らしい効果に驚かされる症例に出合うと興味は増すばかりで、現在も道半ばを自覚しながらも鍼灸医療の奥深さに魅せられて日々取り組んでいるのが現状です。

入江FTシステムによる診察・診断について

 医療は診断が90%を占めるということから、次のように取り組み始めました。
著書に紹介されていた経別・経筋はそれまで一度も見聞したことがなく、奇経は8脈あり夫々一対として利用するということ以外は何も知らずにいました。しかし、興味が持てたことは何にも増して励みとなり、ゼロから取り組んでみようとワクワクした気持ちでした。

 その理由は著書には六部定位による脈診だけではなく、切診の解説には圧迫診の方法が事細かに実践的に説明されていたので、これならできそうだと取り組み始めました。

 経別治療を臨床で試みてもらうには、12経別の診察・処置法を紹介するのが順序ですが、入江システムを知っている初学者の方々は少ないと推測されることから、順序は逆であることを承知しながらも診察・処置の様子から紹介することにします。(※入江システムは1990年に『臨床 東洋医学原論―入江FTによる診断と治療-』を発表されて、現在は診察に入江FT(Finger・test)をメインにしていますが、当初は圧迫診で行っていたので、症例を紹介する目的で当時実践していた圧迫診で行いました)

経別治療の症例

1)症例1:保険会社の所長で日々奮闘されている44歳
愁訴:背中の真ん中辺りが常に重く、お酒が翌日に残るとのこと。既往歴は特になし。

問診:発症時期を問うと2カ月ほど前からですと。パワフルな体型から学生時代のクラブ活動を問うと、高校・大学とラクビ―をしていたとのこと。

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