週刊あはきワールド 2018年4月11日号 No.565

新米鍼灸師の研修奮闘物語 File.12

Resident.SeのBSL(Bed Side Learning) Diary(12)

~鼎談:花粉症の治療を語る~

鍼灸レジデント2年目 平岡遼 


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 鍼灸学校を卒業した方は新しい生活が始まったでしょうか。鍼灸やマッサージに関係する仕事に就いた人、教員養成科に進んだ人など色んな方がいると思います。鍼灸マッサージは卒後の教育体制が整っておらず大変なことも多いかもしれませんが一緒に頑張っていきましょう! 私も鍼灸師2年生となり、ともともクリニックでの1年間を振り返ってみると、もっともっと一人の患者さんから学べたことはあったんじゃないかと強く感じます。学校では教科書で学びますが、現場では患者さんが何よりの先生です。訴えられた疾患の知識が少ないとつい患者さんと仲良しになろうと雑談してしまいます。私も「医療と関係ないことを長々と喋ってるんじゃない!」と怒られています。日常生活の話から医療的な情報を引き出したり生活指導に結びつけるのは実は高度な話です。その前に、医療的な情報はしっかりとれているのか、この患者さんは注意すべきことはないか、など考えられるようになることが先決です。去年、はっきりしない腰痛を訴えていた方が実は尿路結石だった話を書きましたが(BSL Diary 3を参照)、今年はこのような見落としがないように医療面接を大切にしていきたいと思います。

【鼎談参加者】
木村朗子(ともともクリニック院長)
石川家明(友と共に学ぶ東西両医学研修会主宰)

■春の風とともに患者さんの訴えも変わっていく

 今年は桜の開花が観測史上3位の早さだったようで、桜の花びらももう大方散ってしまいましたね。毎年1~2週間だけの短い見頃ですが、何回見ても美しいものです。クリニックに目を向けると、そんな春の訪れとともに患者さんの訴えも少しずつ変わってきています。感染症は寒さも和らいだ3月後半には大分落ち着いていましたが、代わりに急増しているのが花粉症です。今年は去年よりも花粉量が多いようで症状の重い方が多いようです。

 他にめまいや頭痛の訴えも増えています。どちらも東洋医学的に風邪(カゼじゃないですよ!)と関係した症候ですので、春になると増えているという事実に東洋医学のすごさを感じますね。さて、今回は花粉症について書いていこうと思います。

■安易に花粉症としてはダメ!

 この時期に「花粉症で鼻水が辛い」と言う患者さんは多いですよね。私も花粉症が増えてきた2月下旬頃、患者さんにこう言われるとちゃんと医療面接することなく「花粉症です」と木村先生に伝えて怒られました。どの疾患でもいえることですが、それらしい疾患だけでなく別の鑑別疾患を少なくとも1つ念頭に置いて診察をする、ということができていなかったのです。花粉症の鑑別疾患はなんでしょう。真っ先に挙がるのはカゼです。もしかしたらもっと重い感染症の初期症状かもしれません。それと忘れてはいけないのが鼻炎の鑑別です。大きく分けて、アレルギー性と非アレルギー性があり、アレルギー性の中には季節性と通年性があります。いわゆる花粉症というのはアレルギー性季節性鼻炎のことです。非アレルギー性鼻炎の中には寒冷刺激で症状が出るタイプがあり、花粉症と誤診しないよう注意が必要だと教えていただきました。初診で「花粉症です」という患者さんには、感染症を考慮に入れ、上気道症状が揃っていないか、熱は出ていないかなどを確認し、花粉症らしさを確認するには、毎年同じ時期に症状が出るのか、くしゃみ・水様性鼻漏・鼻閉の3主徴に加え目のかゆみの程度は聞くようにしています。

 「目のかゆみ」を訴える花粉症の患者さんは多いのですが、長年臨床をされてきた石川先生によると、目のかゆみを訴える方が増えているのは最近の話だそうです。昔は水様性鼻漏の訴えのみであることが多かったそうで、これは寒証でシンプルだった病態が、寒熱挟雑で複雑な病態に変わってきているのだろうと教えていただきました。

■逆に花粉症の訴えがなくても花粉症はあるかもしれない

 さきほどは患者さんの「花粉症です」を鵜呑みにするな!という話でしたが、今度は逆の例です。2月の下旬頃でしたでしょうか、カゼっぽくて38℃台の熱があって上気道症状(咽頭痛、鼻閉・鼻汁、咳です! 必ず暗記!)も揃っている患者さんが来院されました。倦怠感が強く食欲も低下しており、旦那さんがインフルエンザとのことで、これはインフルエンザだろうなと思って予診を取っていたのですが、その後木村先生の処方を見て「しまった!」と思いました。インフルエンザの処方に加え、花粉症の処方もされていたのでした。思い返せば、上気道症状の中でも鼻汁が強いということをおっしゃっていました。上気道症状が“同時期”“同程度”でない場合には立ち止まらなければいけないのにすっかり素通りしてしまっていました。西洋医学であろうが東洋医学であろうがしっかり鑑別ができているほど治療の狙いが絞れ、治りが早いのは先生方の診療を見ていて常に感じることです。患者さんの訴えだけでなく、そのときの季節や流行から先回りして医療者から聞き出すことの重要さを感じる例でした。

■ここまで進んでいる! 西洋医学の花粉症治療

平岡石川先生は40年以上臨床現場で花粉症の患者さんを見てきてらっしゃいますが、なにか変化を感じますか?

石川今の患者さんの症状は随分軽くなってきています。昔に比べるとかわいいものですね。

平岡そうなんですか!? 意外でした。いまや4人に1人がスギ花粉症1)で日本の国民病だなんて言われているようなので、ひどくなっている印象でした。

石川昔は鼻水がひどくて外に出られない人や、目の周りが腫れてハニワのようになっている人が相当量いましたよ。

平岡そう言われてみれば、マスクをして眼を真っ赤にしながら四六時中鼻をかんでいる人って最近あまり見ない気がします。

石川テレビなど露出が多い仕事をしている芸能人などは、ステロイドを注射していたなんて話があるほど昔は大変でした。

平岡なぜ今はそんなに症状が軽くなっているのでしょうか? 患者数自体は増えている印象なのですが。
 

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