週刊あはきワールド 2014年12月17日号 No.406

〈黄帝と老子〉雑観 第12回

『黄帝内経』の身体国家論の完成と風化〜『素問』霊蘭秘典論から『霊枢』師伝篇、外揣篇へ

『黄帝内経』と黄老の「治身治国」思想(後編)

『黄帝内経』研究家 松田博公 


 
 『素問』霊蘭秘典論篇は、ひとの体内の臓腑と国家の官僚制度を対応させ、国家の健康の基礎は君主の健康であると述べる篇である。また、『霊枢』師伝篇、外揣(がいすい)篇は、鍼治療と「治国」は同じことだと主張している。これらの篇は、前回考察した黄老の「治身治国」論の流れを汲む戦国・漢代の身体国家観を前提として書かれているのであり、それを踏まえずに読み解くことはできない。一読してみよう。

 「黄帝問うて曰く、願わくば十二蔵の相使貴賤は如何(いかん)を聞かんと。岐伯対(こた)えて曰く、悉(つ)くせるかな問うや、請いて遂くに之を言わん。心なる者は君主の官なり。神明これより出づ。肺は相傅(そうふ)の官(=宰相)なり。治節これより出ず。肝は将軍の官なり。謀慮これより出ず。胆は中正の官なり。決断これより出ず。膻中は臣使の官なり。喜楽これより出ず。脾胃は倉廩(そうりん)の官なり。五味これより出ず。大腸は伝導の官なり。変化これより出ず。小腸は受盛の官なり。化物これより出ず。腎は作強の官なり。伎巧これより出ず。三焦は決瀆(けっとく)の官なり。水道これより出ず。膀胱は州都の官なり。津液ここに蔵さる。気化すれば則ち能く出ず。凡そ此の十二官は相い失するを得ざるなり」(『素問』霊蘭秘典論篇)
 「(心なる者は、君主の官なり、神明これより出ず。⋯⋯)故に主明かなれば則ち下、安んじ、此れを以て生を養えば則ち寿、世を歿(お)うるまで殆(あやうから)ず。以て天下を為(おさ)むれば則ち大いに昌(さか)んなり。主、明かならざれば則ち十二官危うし。使道(=気血の道)閉塞して通ぜず。形乃ち大いに傷る。此れを以て生を養えば則ち殃(わざわい)あり。以て天下を為める者は、其の宗(=国家、民族)大いに危うし」(同)

 霊蘭秘典論篇の「心なる者は、君主の官なり」は『管子』心術上篇の「心(しん)の体に在るは、君の位なり」および、『春秋繁露』通国身篇の「身は心(しん)を以て本と為し、国は君を以て王と為す」を引き継いでいる。
 

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