週刊あはきワールド 2015年4月15日号 No.422

〈黄帝と老子〉雑観 第16回

音楽と暦法が出逢うとき宇宙が構成される

『黄帝内経』の謎を解く鍵は数術にある(その4)

『黄帝内経』研究家 松田博公 


 
 中国古代人は、早くから音楽という形なきものの不思議な力に魅了されてきた。奏でられれば人々の情動を揺り動かし、鬼神も泣かせては天空にひるがえり消えていくマジカルなパワー。気の思想の深まりとともに、天の気の流動である風はあらゆる音の源であり、人においては呼吸であり声に当たるとされた。そして天の気に由来する音楽は天の気と感応し、天帝の心を癒し、地上の王の心身を清静にし、民を養い、国家を安泰にする媒介と考えられていく。周代の歴史書『国語』には音楽の政治的な効用が次のように記載されている。宮廷では瞽官(ごかん)という盲目の音楽家が宇宙と交信するこの技術を取り仕切っていたのである。
 
 「夫れ政は楽に象り、楽は和に従い、和は平に従う。声は以て楽を和し、律は以て声を平らにす。(略)かくの如くにして之が金を鋳、之が石を磨き、之が糸木(しぼく)を繋け、之がほう竹をうがち、之が鼓を節して之を行い、以て八風をしたがわしむ。ここにおいて、気に滞陰なく、また散陽なし。陰陽序次ありて、風雨時に至り、嘉生繁祉し、人民和利して、物備わりて楽成り、上下はなれず、故に楽正という」
 (政治は音楽のかたちをもって現象し、音楽は楽器が調和しなければならず、調和は音が乱れず平正でなければなりません。五声(五音=宮、商、 角、 徴(ち)、 羽)は音楽を調和させ、十二律は五声を平正にします。(略)かくして金属を鋳て鐘を作り、石を磨いて磬を作り、糸を木にかけて琴瑟とし、ひょうたんと竹に穴をあけて笙や笛を作り、各種の鼓によって長短大小を節し、正しい音楽を奏で、八風の風が順調に吹くようにして、天地は調和します。かくして気のめぐりが順調で陰気の滞積がなく、また陽気の発散もありません。陰陽の気の巡りは秩序を保ち、風雨は時を得て、五穀は繁殖し、人民は平和で幸福を享受し、器物が完備して、音楽が完成し、国王と民の上下が分裂しません。これを音楽が正しく行われていると申します。)(『国語』周語下)
 

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