週刊あはきワールド 2015年6月3日号 No.428

【新連載】ビギナー鍼灸師事始めの記 第1回

初めて稼いだ!

鍼灸・あん摩マッサージ指圧師/ジャーナリスト 山田寿彦 


2015年5月17日(日)

 治療家として初めて「自分のお客様」を迎える日が来た。レストランを営む60代のシェフ、Sさん(男性)。「山田さんの治療、受けてみたいんですが…」。数日前に突然の電話をいただいた。

 世界の一流ホテルを渡り歩いて来た方である。毎日新聞記者時代、食の取材を通して知り合い、食についての見識の深さに畏敬の念を抱きつつ、新聞社を辞めた後も暇をみてはお店に顔を出してきた。そのSさんが私の最初の患者になることを買って出てくださったのだ。

指圧とお灸の合わせ技で3時間

 張り切り過ぎて私の持てる技術を総動員した。お灸と指圧のコンビネーションで約3時間。あっという間の時間だった。

 右の踵に圧痛点があった。ちょうど失眠穴の位置なので、「睡眠は取れていますか?」と尋ねると、「寝付けないことが多い」ということだったので、透熱灸を30壮ほど据えてみた。もしかすると、不眠症の人は踵に反応が出るため、失眠というツボが発見されたのかなあ、などと考えながら…。

 この日は心ひそかに期していたことがある。最後に眠らせることができるかどうか。まとめのヘッド指圧でSさん、いびきをかいた。してやったり! 手技の技術は未熟でも、これで少しは満足感を持っていただけただろう。

 Sさんは仕事柄、体を酷使することが多く、指圧のたぐいの治療をあちこちで受けてきたという。「お灸と指圧の合わせ技という治療は初めて。良かったですよ」という感想をいただけた。社交辞令も含まれているだろうから、額面通りには受け取れないが、この治療スタイルは自分のオリジナルにしていけるかもしれない。

 初回お試しは2000円と伝えてあったのだが、「正規料金を取って下さい」というお言葉に甘えて4000円いただいた。免許を取って1年余。「1円も稼いでいなかったペーパー鍼灸師」はこの日で卒業し、ビギナー鍼灸師として新たなスタート台に立とうと思う。

 数日後、レストランを訪ね、治療後の感想を伺った。「あの日の夜は熟睡できましたよ。その後も調子が良くて、家内から『山田さんに早く知らせてあげなさい』と言われていました」とうれしいお言葉。次の予約を、奥様を含めて2件いただいた。

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