週刊あはきワールド 2015年7月15日号 No.434

【新連載】古典の考証 第1回

改めて「虚実」を考えてみよう!

森立之研究会 山口秀敏 


1.はじめに

 古典の考証を中心にした勉強会である森立之研究会(場所:東京医科歯科大学)では昨年9月からの合意事項として、鍼・灸・薬の統合的な理解推進のために湯液系と鍼灸系の講座を交互に開催しています。鍼灸を担当して私も拙い講義をさせていただき学んだ中から、印象に残ったことを選んでこれから投稿していきたいと思います(ですから、紹介する内容には明記がなくとも他の参加者の成果も含んでおり、またそれらに因る部分も多大であることをお断りしておきます)。

2.序論

 日中の伝統医学では、鍼灸と湯液(薬物療法)で共に「虚実への補瀉」が治療の基礎とされています。しかし日本では、その「虚実」概念に変遷と混乱があります。

 日本の漢方(湯液)では、元来は「病証の虚実」を治療対象としていたのですが、昭和初期には「体力・体質の虚実」としても用いられるようになりました。

 日本の経絡治療(鍼灸)は、昭和初期に漢方に倣って虚実の「証」を創出したのですが、それは脈診による「経絡の虚実」概念です。そして、補瀉の順序については『難経』六十九難の「当先補之、然後瀉之(当ニ先ズ之ヲ補イ、然ル後ニ之ヲ瀉ス)」を定式化して補法優先の立場を採りましたが、そのための虚証重視が行き過ぎた故なのか、『難経』による鍼灸治療としては補陰に偏重しています。

 従来の定説的な考え方からすれば、唐突で衝撃的な概括かもしれませんが、残念ながら日本の鍼灸における「虚実補瀉」論では、効果的な補瀉選択の拠所とすべき基準が未発達のままです。名実ともに真に「伝統医学」であろうとするならば、いわゆる六十九難方式や六部定位脈診等の定式に終始することは不自然であり、豊かな歴史と様々な考え方を包含している東洋医学の古典の中には他にも検討すべきことが少なくはないはずです。

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