週刊あはきワールド 2015年8月19日号 No.438

古典の考証 第2回

「病証」の虚実

森立之研究会 山口秀敏 


5.補瀉の指標は「病証」!

 前回は『霊枢』根結篇での「形気」と「病気」の有余か不足の場合の組み合わせの四類型を挙げて、汪機『針灸問対』の説によって大まかな解説をしておきましたが、もう少し古典的な見方を確認してみましょう。

 四類型の①は、「痩せて衰弱し、症状と発作が激しい場合、邪の勢いが(正気に)勝っているので速やかに邪気を瀉しなさい」となっていましたが、それに対しては「体力が衰弱している(正気が虚している)のに瀉のみで良いのか?」との質問を受けることが多いので、まずそこから考えて見ましょう。③の場合には「痩せて衰弱し、病状は弱々しく語言が無力な場合は、鍼してはいけません。刺鍼すれば(正気が漏れて)余計に衰弱させるので、老人には危険であり、壮年者でも難治になってしまう。 → 甘薬で補すべきで、鍼灸は禁忌!」となっていますが、それらも併せて考えれば、「鍼灸は体力を削る」という前提があるようです。基本的に昔の鍼は太く、灸は大きくて現在とは同列に比較できないほどに強刺激が当たり前の世界だったので、補寫で言えば鍼灸は寫法向きの方法だったのだろうと想われる節があります。

 ①の寫法のイメージとしては、「形気不足シ、病気有余スル」は、残り少ない戦力を全開にして奮戦しているが、「是レ邪勝ル也」で敵に押されて苦闘している。その打開には、後方支援の補給部隊派遣(補法)よりも、「急イデ之ヲ寫セ」の的確な直接攻撃(寫法)での短期決戦の方が良い!と例えられると思います。これは、無難さよりも効果を重視する思想ですが、①のように衰弱している場合は、患者への負担を減らすために最低限の瀉だけに絞るべき、と考えたのでしょう。
 

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