週刊あはきワールド 2015年9月23・30日合併号 No.443

あはきメンタル~基礎編~ 第6回

あはき臨床と自己愛(3)

~自己愛の不適応的要素への対応~

目白大学大学院心理学研究科教授 奈良雅之 


 
 自己愛とは自分自身を愛することであり、自分自身に対する肯定的感情と密接に関わる心の働きです。前回、自己愛には誇大性と評価過敏性という2つの捉え方があることをお話しました。そして、このうち評価過敏性は、他者からの指摘・評価に対する過剰な反応や不安を表すもので、この要素が高いと対人恐怖などを呈しやすいといった不健康な状態に陥りやすいことについて述べました。

 自己愛は発達的側面があり、10代でピークを迎え成人するとともに徐々に低下することがわかってきました。自己愛の誇大性は、自己評価を高める方向に作用するので、周囲はともかく本人にとっての不健康に結びつきにくい要因です。しかしながら、大人になっても誇大性と評価過敏性という2つの要素の両方が高いままの人は、プライドが高いと同時に人の評価に過敏になる傾向があることから、日常生活や職場において対人関係等の問題を抱えるリスクが高くなるといえます。

 誇大性と評価過敏性という2つの自己愛の要因が高く、しかもその関連が小中学生のように未分化なまま入社してくる新入社員にとって、上司からの仕事上の叱責は、仕事のモチベーションを下げるばかりか、自分を脅かす危機的状況の原因と認識して、敵意や逃避の対象となります。中間管理職者は、そのような部下を上手に働かせることができないと管理職としての評価に影響するばかりか、ハラスメントで訴えられかねません。うつや不眠、肩こりで来院する患者さんの中には、自己愛に関連する問題が原因となって二次的にそれらの症状が生じている場合もあります。

 今回は、自己愛の不適応的要素である評価過敏性について発達的側面に起因する問題にも触れながら、あはき師としての対応についてお話します。

1.基本は傾聴だが

 医療面接では、まずは患者との良好な関係を構築するために患者の話を批判したり評価したりせず、合槌を打ちながら傾聴することが重要とされています。傾聴が、あはき臨床において有効であることの背景については、『あはき心理学入門』(ヒューマンワールド刊)をご覧いただければ幸いです。
 

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