週刊あはきワールド 2015年10月14日号 No.445

鍼灸マッサージボランティア活動報告

関東東北豪雨災害における鍼灸マッサージ治療による支援活動(その2)

災害鍼灸マッサージプロジェクト代表 三輪正敬 


支援活動は10月10日終了の予定から継続へ


水位の分かる常総市役所の花壇
 「関東東北豪雨災害の発生から間もなく1か月、まだ血圧の高いままの職員がこんなにいるのか」

 10月5~8日の間に水海道公民館にて治療した市職員の方々の血圧データを整理していて、災害鍼灸マッサージプロジェクト(以下、災プロ)スタッフは驚いた。


水海道公民館
 「地元行政の安定」は、災プロの撤収基準の一つである。これが満たされないまま、途中で放り出して終了にはできない。10月5日に急遽決まった常総市役所内2部署への支援活動、罹災証明発行のほか避難所運営、通常業務に忙殺されている状況は変わらず、10月10日終了の予定をさらに延長することとなった。



水海道公民館治療スペース










支援活動継続の理由

 活動の継続にあたり、災プロスタッフの嶺先生が市役所の当該部署の課長とお話をし、以下の点を確認した。

①あらためてのニーズの有無
②勤務時間が地元の一般的な治療院の営業時間外であること
③災プロとの窓口となってくださっている市職員の通常業務に支障をきたさないこと
④現在の治療および荷物保管スペースが引き続き使用可能であること

 結果として、

①ニーズについて
 10月5日以降に治療した職員の6割に血圧異常が見られる。また、東日本大震災時のような他県からの職員支援はなく(県内からの支援は多少あるものの)職員たちの疲弊は強く、鍼灸マッサージ活動継続の希望が伺えた。

②業務終了時間について
 職員は朝8時前に入庁、早ければ19時半、遅いと23時前後まで業務であり、土日祝日も休みがなく、地元の一般的な治療院の営業時間外である。

③災プロとの窓口となってくださっている市職員の通常業務に支障をきたさないこと
 ボランティアは時に相手にとって負担となることがあり、細心の注意を払う必要がある。担当の職員さんから、積極的に協力してくださる旨の了解を得ることができた。

④スペースが引き続き使用可能であること
 市の都合で急な引っ越しの可能性はあるものの、現在のところ使用している部屋を引き続き使用可能。

 以上で条件はそろったため、継続を決定した。

避難所での支援活動は10月5日に終了

 このように災プロは現在、市職員の限定された部署のみを対象として活動しているが、避難所での活動は、以下の理由から10月5日に終了としている。

①避難所の環境
 活動の拠点としていた石下総合体育館では鍼灸の再受診も多くなっており、慢性期に入っていると判断した。地元医療機関への受診継続の予定が立っている患者さんも複数おられ、鍼灸マッサージによる継続的な支援は不要と感じられた。

②もう一つの統合避難所
 活動の展開を検討していたもう一つの統合避難所(他の避難所を閉じるにあたって、避難者が集約されていく避難所)の「あすなろの里」だが、無資格を含めた複数のマッサージ系ボランティアが連日のように入っている様子が感じとられ、医療ニーズも看護協会から交代派遣されている看護師によりフォローされていたことから、やはり鍼灸マッサージを通した医療支援が特に必要な状態ではないという印象を受けた。

③避難所運営の職員
 9月19日現在では、収縮期血圧が普段よりも30ほど高くなっていた避難所運営の職員だが、避難所の統合などにより交替人員が確保されたことを受け、9月26日時点でほぼ平常通りの血圧となっており、さらなる支援は不要と判断した。

④地元鍼灸治療院の復活
 スタッフにより調べることのできた市内すべての治療院へ電話調査を行ったところ、現在、常総市には7つの鍼灸マッサージ治療院が開院しており、調べた限りで被災したのはこのうち2院、そしてそのどちらもすでに営業を再開していることがわかった(9月25日時点)。もちろん、自宅を失った被災者が有料の治療を受けるのは難しいため、継続する意義はあるものの、職員は休みがとれるようになってきたため、7院のうち、直接了承を頂いた6院の鍼灸院、マッサージ院、その後の現地調査で判明した、浸水により一時休院するも再開院した、鍼治療を提供できる医院を加えた「治療院リスト」を、市役所を含めた各活動場所に掲示している。

 以上のように、医療的、社会的観点から、10月5日を以て避難所での活動終了を決定した。

 なお、これらは外部からのボランティアである災プロの撤収基準であり、今後も活動を続けていかれる地元の先生方や、その他の外部ボランティアの基準とは異なることをご理解いただきたい。

現在の活動形態について特筆すべきこと

 現在の活動形態について特筆すべきことがある。

 災プロの活動は参加者それぞれ日々の仕事を融通してのボランティアであり、交通費などは持ち出し、繰り返し現地入りしなければならないスタッフの活動費はHPの「募金ページ」をご覧になった方などからの有り難い募金によってぎりぎりで支えられている。

 しかし、常総市での1カ月近い活動を通してご縁をいただいた地元の先生方が活動に参加してくださるようになった今、筑波技術大学の先生、県内無所属の先生、茨城県鍼灸師会・茨城県鍼灸マッサージ師会の有志の先生らと共に、「オール茨城」の体制で、日を置きながらも継続した活動となっているため、“ちょっとの無理”により継続することができている。

 前回の報告でも書いたように、大規模な災害時に地元の鍼灸マッサージ師だけでボランティア活動を継続するのは不可能であるが、ボランティアに動けるのがたとえ少数であったとしても、こうして力を合わせることで、必要な場所に必要な医療支援を届けることができる。

 もはや所属も関係なく、ただ、手当ての必要な人のところへ。鍼灸マッサージ師の原点に立ち還っての活動となっていると言ってよいだろう。ありがたいことである。


 南三陸町の仮設住宅からいらした柔整師
の阿部先生と
 もう一つ、本当にありがたいことがあった。

 東日本大震災の折、南三陸町の被災者であった柔道整復師の阿部琢磨先生が、仮設住宅から車を飛ばして常総市に駆けつけてくださり、ともに活動したのである。こうした、かけがえのない関係があちこちに作られていくことが、現地の苦境に何とか寄り添おうとする災害支援活動を通した、掛け値のない価値そのものであり、災プロが存在する理由の根幹の一つとなっている。



◎災害鍼灸マッサージプロジェクトホームページ→http://sinkyu-sos.jimdo.com/
 
この記事に対するご意見やご感想をお寄せください≫≫ Click Here!




トップページにもどる