週刊あはきワールド 2016年6月15日号 No.478

【新連載】鍼灸学生の研修奮闘物語 File.1

Student.SeのBSL(Bed Side Learning)Diary

鍼灸学生3年 平岡遼 


 
 某鍼灸専門学校の平岡遼と申します。4月から橫浜にある石川鍼灸院で週1回研修する機会を得ました。この日記は鍼灸院でBSLに入った記録を自分の学習ノートとして書き留めたものです。鍼灸業は医療職のなかでも公的に研修制度のない珍しい職業だから、多くの学生は研修そのものが、実際どのようなのかが想像もできないのではないかと石川先生からお話がありました。それならば、一鍼灸院で何を研修するのかを発表してみたらどうかと促されました。

 そこで、私の研修奮闘記を書かせていただきます。正式にこの4月から研修生と認められて入ったある一日のベッドサイドで学んだことを思いつくままにまとめてみました。

 「学んだこと」「分からなかったこと」をもとに「感じたこと」を書いていますが、記載は逆に「感じたこと」から書き起こしています。内容が重複するところがありますが、ご了承ください。

 また、TOMOTOMOゼミ内でメールを流すと、先輩達が励ましやご意見を頂けます。これも大変ありがたいことです。ノートのあとに、先輩達のメールでのやりとりも抜粋して記載させていただきます。

 あっ、それと私はTOMOTOMOゼミでは“Se”と呼ばれています。“SE”(System Engineer)を辞めて鍼灸学校に入ってしまったことと、「背」が高いことからホーリーネームがつきました。リングネームではありません(笑)。

 全国で学ぶ鍼灸学生に「現実の鍼灸院」の日々の臨床風景をお伝えしながら、東洋医学の学びかたのひとつの参考としていただき、医療を学ぶモチベーションが高まればと願っています。

1.感じたこと

● 整形疾患のない患者さんへの鍼治療を見た時にその鍼数の少なさに違和感を感じてしまった。それほど整形疾患を持っている患者さんが多いということに気づかされた。整形疾患に対応できる技能と知識を持つ重要性を改めて感じた。(1-1)

● 脈診で、BSLに入るまではまったく診察できなかった滑、渋などが少しずつ体得できるようになってきた。触った瞬間の第一印象というのはなかなかパッとわからないことが多い。滑・渋・弦が混在しているときなど、診れば診るほど迷ってしまう。まだ触った時に一つ一つ考えている自分がいる(滑はどうかな? 渋はどうかな? 遅数はどうかな? 浮沈はどうかな? など)。パッと触ったときにできるだけ多くの情報を拾えるようにならないといけない。(1-2)

● 望診だけでわかることも多い。お腹が張っているな(腹脹)、膝の稜線がぼやけているな(腫脹)、湿疹が出ているな(皮膚病変、皮膚紅斑)など。まずは見て気づけること、次にそれぞれ何を意味しているのかの考えられる選択肢を複数持っていること。(1-3)

● 舌脈診が少しずつわかってきたので、なぜ先生が患者さんにその質問をしたのか、なぜそこに鍼をしたのか、ということも意識的に見ていく。特に患者への質問はすべてに意味があるので、質問を聞いていてなんでその質問をしたのか分からないときはメモしておく。 的を射た質問は聞いていると自然すぎて意識が向かないことがあるので「自分ならその質問ができるか」と自問しながら先生の問診を聞く意識を持つ。(1-4)

● 西洋医学の現状を知っていることは患者さんからするととても信頼できるように感じた。リウマチの治療薬が今はとても良いものがあるからぜひ治療を受けてみてください、と言えたり、その副作用まで考えた上で提案できたり。また手術の不安があっても、股関節の手術なら概ねどこの医者でも大丈夫でしょうと言ってもらえれば不安な気持ちを落ち着かせることができるかもしれない。(1-5)

● 学校では骨の異常は鍼の適応ではないと習うし、整形外科でも骨がダメになっていたら諦めてしまう(リウマチによる関節破壊など)ことがあるが、鍼は軟部組織に効かせることができるので、骨がダメでも筋や靱帯がしっかりしていればまだアプローチできる猶予は残されている。(1-6)

● 悲観的になっている患者さんを引き上げることも大事。現状はそこまで悲観的になるほどひどくはないことを伝えたり、昔に比べたら格段に予後が良くなっていることを伝えたり。「鍼をすれば治る」とは言えないが、冷静に現状を受け入れてもらう努力が必要。(1-7)

● 言っていることがちぐはぐな患者さんを見た時に、「なんか変だなー」と流してしまうのではなく、それ自体がひとつの情報であることを意識する必要がある。なにか生活の中でいつもと違うことがあったのではないか。心因性なのではないか。気づくことで行動も変わる。(1-8)

● プロ意識が足りない鍼灸師は多く、何がプロ意識なのかもわかっていない。その感覚を養っていく必要がある。(1-9)

● この日最後に来院した患者さんはかなり広範囲に帯状疱疹が広がっていて、印象に残った。上腕の二頭筋内縁にも痛みが出ていて、背中に出ている帯状疱疹とは別の原因なのかと思ったが、実は肋間神経の枝が上腕にも走っているため痛みが出現しうるということを初めて知った。知らなければ患者さんにも、原因がわからないもしくは違う原因で痛みが出ていると伝えてしまうことになるため、知らないことの怖さも感じた。また、そのためにBSLに入って実際の症例をたくさん見ることの意義を強く感じた。(1-10)

● 早期発見、早期治療が予後をよくする例が沢山あることを感じると同時に、早期発見するためには患者さんの出している色んな情報を見落とさないこと、その情報を自分が処理できること(知っていること)が必要で、それは常に研鑽していてさえできないことがあるという難しさを感じた。(1-11)

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