週刊あはきワールド 2016年7月27日号 No.483

鍼灸学生の研修奮闘物語 File.3

Student.SeのBSL(Bed Side Learning )Diary(3)

~「日本中医学会熊本支援プロジェクト」に同行して~

鍼灸学生3年 平岡遼 


 
 今年4月14日に発生した熊本地震。3日にわたり震度7を超える大きな地震が続き、その後も長く余震が続きました。東日本大震災のときのような津波はなかったものの、揺れによる家屋への被害は大きく、7月14日時点で全壊8,305棟、半壊26,094棟、一部破損125,846棟もの被害が確認されています。また、倒壊した家屋の下敷きになったり土砂崩れに巻き込まれたりするなどで55名の方が命を落とし、震災後における負傷の悪化や身体的負担による疾病によっても20名の方がお亡くなりになりました。

 それから3カ月たった7月16日から18日にかけて、中医学会とTOMOTOMOの共同プロジェクトとして鍼灸師4名と医師1名と学生の私1名というメンバーで熊本の西原村と南阿蘇村に赴き2泊3日の健康相談・鍼灸ボランティアを行ってきました。また、地元の中医学会理事の医師と奥様の鍼灸師の方々と現地で合流してご参加いただきました。そこで私が学生として同行させていただき見てきたこと、感じたことをご報告いたします。

座談会メンバー

日本中医学会事務局長、アキュサリュート高輪院長 瀬尾港二
日本中医学会事務局、東京医療福祉専門学校教員 小髙直幹
TOMOTOMO、鍼灸あん摩マッサージ師 小澤伸枝
ともともクリニック院長 木村朗子
TOMOTOMO(友と共に学ぶ東西両医学研修の会)代表 石川家明

東北と熊本の違い~正常と異常の混じる空間~

 熊本空港に着くと、くまもんに出迎えてもらい熊本に着いたんだなと実感しました。外は少し小振りの雨が降っていて、湿気と気温の高さにやはり同じ日本だなと感じるとともに、大雨による土砂崩れの恐れから自宅に帰れない方や避難所に寝泊まりしている人がいることが思い出されました。旅の直前に調べた統計では熊本県全体の避難者数は少しずつ減ってきてはいるものの、7月13日時点で依然として4,692名にも及んでいました。これからボランティアを行う西原村では311名、南阿蘇村では1,036名と決して少なくない数の方がいまだに避難所生活を続けています。

 さて、そんなことを思い出しつつレンタカーでまずは宿泊施設へ向かうがてら町並みを眺めていました。私は今年の5月の頭に東日本大震災でも大きな被害のあった大槌町でのボランティアに初めて参加させていただいたのですが(TOMOTOMOでは東日本大震災の直後から継続して大槌町で健康相談&鍼灸ボランティアを行っています)、そのときの町の様子は震災から5年たった今でも津波による壊滅的な被害がいまだに残されていました。流された建物の瓦礫が撤去されて何もなくなった土地にやっと少しずつ建物が建てられ始めていますが、仮設が多くまだまだ活気が戻るには時間がかかるだろうなという印象でした。


自然に囲まれた美しいところ、奥に謎の看板が


震災の中にユーモアを発見
 そんな大槌町に比べると熊本空港の周辺は一見すると町並みは元気でした。しかしよく見ると、ブルーシートで覆われた瓦屋根や石垣があったり、もう住めないためか家の中が空っぽになっている住宅が点々と見受けられました。しかしさらにその隣の建物では観光客向けにたこ焼きが売られたりしていて、正常と異常が交じり合った異様な空気でした。また家屋の入り口やお店の中には被害判定の黄色や赤の張り紙が貼られていて震災の影響がいまだ続いていることを感じさせました。

 宿泊施設のある西原村の山中にくると、車窓からは青々とした山々やそれらを反射して映し出す水田などが飛び込んできて、その自然の美しさや農業を営む人々を想像して少し気分が上向きになってきました。

ボランティア初日に出会った見落としてはいけない見落としがちな症例

 初日の午後は避難所の近くにある身体・知的・精神の三障害共生型の自立支援センター「たんぽぽハウス」の場所をお借りして活動させていただきました。たんぽぽハウスは震災前から食堂として障害のある方が接客や盛り付け、配膳などを行うことでコミュニケーションを図る先駆的な活動を行っている施設です。私達が伺ったときも「きずな食堂」という名前で高校生以下は無料で食べられる食堂として、ボランティアの方と障害のある方が一緒に働かれていました。


災害地は狭いスペースでも施術
 施設の方に色々とお話を伺っていたときに気になる人がいるとのことで詳しく聞くと、同じボランティアの高齢の男性がカゼのあとずっと咳が抜けずにいたが最近咳が悪化しているということを教えてくださったのでぜひ来てもらうようにお願いしました。その方からまず伺った情報が下記です。

症例)74歳 男性
ボランティアで皿洗いをしている。震災前までは大工をしていた。3~4カ月前にカゼをひき、その後咳がずっと続いている。咳は最近ひどくなっている。本人は呼吸苦をさほど感じておらず、受け答えははっきりとしているが、少し聞き取りづらい。冗談を言うと反応して笑っている。


 このように一見して大したことがないように見えますが気になる点がありました。それが「声の小ささ」です。実はこの所見をきっかけに先生方は少し緊張感を持って問診と身体所見を取りに行ったそうなのですが、隣で聞いていた私はというと、高齢の方で訛りもあったので「聞きづらい」という印象にさほど違和感を感じることができませんでした。しかし言われてみれば確かに声は小さいのです。

 またもう一つの気づくための大事なポイントは、カゼは1カ月も続かない、ということです。長く咳だけ続く場合、カゼの後に別の感染や疾患が発症している可能性がある、と考えなければいけません。こういうときには、先週号の『あはきワールド』(「全力で治す東西両医療 第5回 バイタルサインは生きているサイン(3)」)でもお話がありましたが、喫煙歴を聞かなければいけません。喫煙歴があることでCOPDの疑いも出てきますし、肺炎のリスクも上がるからです。

 実際この方は40年間毎日20本ほど吸われていたようです。さらに食欲低下、夜に咳で目が覚める、白い痰が出る、などの症状もありました。ここでバイタルを取ったものが次になります。
 

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