週刊 あはきワールド 2009年10月21日号No.155

大会テーマは
「日本伝統鍼灸継承者育成への提言」

第37回日本伝統鍼灸学会学術大会大阪大会開催される


           開会式の様子

日本伝統鍼灸学会(形井秀一会長)の第37回学術大会(大阪大会)が10月17、18の両日、大阪市住之江区のホテルコスモスクエア国際交流センターで開催された。大会テーマ「日本伝統鍼灸継承者育成への提言-教える鍼灸、学べる刺鍼テクニック-」に沿った会長講演、会頭講演、特別講演、テーマシンポジウム、実技供覧などが行われた。


      挨拶する形井秀一会長(左)と藤本蓮風会頭(右)
 会長講演は形井秀一氏による「世界の鍼灸の現状と日本伝統鍼灸のこれから」。多くの国際会議に出席し、世界と日本を社会学的に見つめ続けている形井氏ならでは、の講演で、中医学の国際戦略を「覇権主義」と表現し、そのうえで日本鍼灸の定義や日本鍼灸学の構築に向けての提案を行った。

 会頭講演では北辰会代表の藤本蓮風氏が登壇。「難病治療における臨床知見」をテーマに熱演した。潰瘍性大腸炎などを例に挙げ、「現代医学では難病とされているものも鍼灸では難病ではない。 『難病』を治すことにこそ鍼灸の使命がある」と語り、舌診の診断価値を強調した。

 「中国伝統文化と中国医学」と題した特別講演では、帝塚山学院大学リベラルアーツ学部教授の杉本雅子氏が、「『チャングムの誓い』は、中医学が韓国に波及した証拠として中国でも圧倒的な人気で受け入れられたが、数年後には、中医学が盗まれている証拠として、中国人が最も嫌いなドラマになった」など、専門の中国文化研究者らしい興味深いエピソードを紹介した。中医学には西洋医学の立場から「偽科学」という批判が続いていることや愛国主義の観点から共産党政府が中医学を利用し、孔子を持ち上げる様相なども報告、政治の波にさらされる現代中国医学の深層が浮き彫りになった。


      会長講演を行う形井秀一氏             テーマシンポジウムの様子


 テーマシンポジウムは「日本伝統鍼灸臨床家に求められる資質(臨床能力)」。司会の篠原昭二、奥村裕一両氏の音頭のもと、浦山久嗣、木戸正雄、森洋平の三氏が、専門学校卒業後3年の鍼灸師が備えているべき知識、技術はいかにあるべきかについて議論した。浦山氏は、「中医学を基礎的な教養として身につけると理解が早くなるのではないか」と語り、浦山氏と同じく経絡治療をする木戸氏は「中医学は導入する必要はない。経絡治療にVAMFITや天地人治療の考え方を取り入れていくことで精度の高い治療が可能となる。これからは日本独自の伝統鍼灸としての発展を目指していく必要がある」と異見を述べ、日本の古典派鍼灸家にとって、中医学の位置づけが避けられない課題であることを印象づけた。かといって、浦山氏が中医学でよいと言うわけではない。「中医学では日本の鍼灸師のアイデンティティは得られない。鍼灸師は、日本の伝統文化に根ざした伝統鍼灸の発信者としての地位を目指さなければならない」と語った。


          実技供覧の様子。写真の演者は大浦慈観氏(左)と首藤傳明氏(右)


 実技供覧「教える鍼灸、学べる刺鍼テクニック」では、石原克己(東京九鍼研究会)、大浦慈観(いやしの道協会)、金古英毅(日本内経医学会)、首藤傳明(弦躋塾)、戸ヶ崎正男(蓬治療所所長)、原オサム(積聚会)、村田渓子(新医協鍼灸部会)、油谷真空(北辰会)の8人の講師が4会場に分かれ、同時進行で進められた。演者の多くはまず自分が行っている手作り、からだ作りの修練法を紹介し、その後、体表観察から刺鍼テクニックまで自慢の技を披露した。

日本伝統鍼灸学会のHP:http://jtams.com/



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