マッスル鍼法 両手刺手管鍼法・インナーマッスルがセールスポイント
著者:宮村健二
定価:3,850円(本体3,500円+税)
判型:B5
頁数:170頁
発行:2015年10月発行
ISBN978-4-903699-53-0
本の紹介
タイトルから想像できる通り、本書はいわゆる「ツボ」をターゲットにした刺鍼法の解説書ではない。「マッスル鍼法」には「ツボ」の概念は不要。鍼を刺すターゲットはあくまで「筋肉」である。「筋に刺鍼し、筋内微小循環の改善を図る鍼」は古くから広く行われている極めて平凡な技術だが、著者はこれに大きく3つの改革を加え、今までにない「マッスル鍼法」を誕生させた。
改革の1つ目は、メカニズムの科学的理解とその合理的活用である。筋への刺鍼によって筋肉のこりや痛みが取れるメカニズムは鍼による深部軸索反射であることがこれまでの研究で明らかになっているが、個々の症例の個体差に対応するメカニズムの合理的活用は課題として残されていた。この課題に対し、著者は明確な具体策を提唱した。
改革の2つ目は、押手との訣別による管鍼法の技術革新である。1990年代以降、ディスポーザブル鍼の登場により、銀鍼主流からステンレス鍼主流へ、重くて壁の厚い金属鍼管から軽くて壁の薄いプラスチック鍼管へ、管鍼法の道具が変化した。ところが、管鍼法のやり方は従来の「重厚」の管鍼時代と同じやり方のままだった。著者はこの道具の変化に着目し、その「軽薄」の特徴を活かした両手刺手管鍼法を考案。押手の上下圧から解放された自然体の組織に刺鍼する技術を開発した。両手刺手管鍼法は、いつ入ったか、どこまで入ったか分からない低ノイズの「いつどこはり」をたやすく実現できる。
改革の3つ目は、インナーマッスルへの注目である。スポーツ医学やリハビリテーション医学の世界では、インナーマッスルに光を当てたトレーニング法が重視されるなど、インナーマッスルへの注目度が増しているが、著者も鍼臨床の立場からこのインナーマッスルに着目。インナーマッスルを「隠れ疲労の場」として捕え、その隠れ疲労を解消するための施術法を開発した。
さらには、この3つの改革をベースにして、著者は改革の最終ゴールともいうべき「ニューモデル臨床鍼灸システム」を構築。その2本柱が「ニューモデル本治法」と「ニューモデル標治法」で、そのこともわかりやすく解説している。本治法・標治法という捕え方は古典の言葉で語る鍼灸に独自のものという認識が一般的だったが、ニューモデル臨床鍼灸システムの開発によって、この常識がついに打破されたのである。現代科学の言葉で語る鍼灸においても本治法・標治法という組み立てが可能になり、今後、ニューモデル臨床鍼灸システムは鍼灸の現代的発展の有力な拠り所となり得るだろう。
●関連記事(週刊あはきワールド 2015年10月7日号 No.444)
『マッスル鍼法』へのいざない
両手刺手管鍼法等の新技術で“ハリ”が変わる
“マッスル鍼法”の世界へようこそ!
『マッスル鍼法』の「プロローグ」より/宮村健二
目次
第1章 鍼灸院の花に名前をつける
1.名前が欲しい/2.命名のメリット/3.あんしん堂式マッスル鍼法
第2章 道具の変化と技術の変化
1.銀鍼主流からステンレス鍼主流への変化→二頭叩打の案出/2.重い金属鍼管から軽いプラスチック鍼管への変化→押手との訣別、田植え圧鍼、両手刺手管鍼法の案出/3.厚い鍼管壁から薄い鍼管壁への変化→広角刺法の案出
第3章 あんしん堂式マッスル鍼法を構成する三つの技術
【第1節】 いつ入ったか、どこまで入ったか分からない鍼尖移送
-両手刺手管鍼法-
1.両手刺手管鍼法の作業工程に関する基本的な用語と解説/2.両手刺手管鍼法の作業工程/3.両手刺手管鍼法の長所/4.両手刺手管鍼法練習のコツ
【第2節】 筋内ポリモーダル受容器を発火させる鍼手技
-深部ひずみ作り手技五術-
1.学問の進歩と技術の進歩/2.LST回旋術の作業工程/3.LST回旋術から深部ひずみ作り手技五術への拡大/4.鍼体径との結合/5.鍼のドーゼランク表
【第3節】 局所の血液を入れ替えるリトミックマッサージ
1.二つの誘導作用/2.リトミックをマッサージに応用する/3.リトミックマッサージの技術的原点/4.リトミックマッサージの基本手技/5.リトミックマッサージの拡張手技/6.各手技共通の要件/7.手技の選択/8.リトミックマッサージの生体作用/9.リトミックマッサージのNG
第4章 あんしん堂式マッスル鍼法の作業工程
1.工程1 標的筋の設計/2.工程2 角度と深度の設計/3.工程3 ドーゼの設計/4.工程4 鍼尖移送の実行/5.工程5 筋内ポリモーダル受容器発火の実行/6.工程6 リトミックマッサージの実行
第5章 インナーマッスルを臨床のメニューに位置づける
1.インナーマッスルは今静かなブーム/2.インナーマッスルとは/3.インナーマッスルは黒子/4.インナーマッスル・アウターマッスルの施術/5.ここまでのまとめ/6.インナーマッスルを組入れた新しい施術計画
第6章 筋群触診マップ
【第1節】 頚背腰部筋の触診マップ
1.第1エリア-頚椎棘突起列傍筋隆起エリア/2.第2エリア-頚椎横突起列後方エリア/3.第3エリア-頚椎横突起列外方エリア/4.第4エリア-頚椎横突起列前方エリア/5.第5エリア-後頭下筋エリア/6.第6エリア-僧帽筋上部エリア/7.第7エリア-僧帽筋中部エリア/8.第8エリア-胸椎棘突起列傍筋隆起エリア/9.第9エリア-肋骨角列内方エリア/10.第10エリア-肋骨角列外方エリア/11.第11エリア-腰椎棘突起列傍筋隆起エリア/12.第12エリア-腰椎横突起列後方エリア/13.第13エリア-腰椎横突起列外方エリア/14.第14エリア-側腹筋エリア/15.第15エリア-仙骨後方エリア
【第2節】 肩関節周囲筋の触診マップ
1.第1エリア-伸展・外旋筋エリア/2.第2エリア-外転筋エリア/3.第3エリア-屈曲筋エリア/4.第4エリア-内転・内旋筋エリア
【第3節】 股関節周囲筋の触診マップ
1.第1エリア-伸展・外旋筋エリア/2.第2エリア-外転筋エリア/3.第3エリア-内旋筋エリア/4.第4エリア-屈曲筋エリア/5.第5エリア-内転筋エリア
第7章 リトミックマッサージモデル
【第1節】 頚部のリトミックマッサージモデル
1.頚背腰部筋第6・第7エリアの扱い/2.頚背腰部筋第1エリアの扱い/3.頚背腰部筋第2・第3・第4エリアの扱い
【第2節】 背部のリトミックマッサージモデル
1.僧帽筋下部の扱い/2.頚背腰部筋第10エリアの扱い/3.頚背腰部筋第8・第9エリアの扱い
【第3節】 肩関節周囲のリトミックマッサージモデル
1.三角筋の扱い/2.広背筋・大円筋の扱い/3.棘下筋の扱い/4.大胸筋の扱い
【第4節】 腰部のリトミックマッサージモデル
1.頚背腰部筋第11・第12・第13エリアの扱い/2.頚背腰部筋第15エリアの扱い
【第5節】 殿部のリトミックマッサージモデル
1.大殿筋および中殿筋の扱い/2.梨状筋および内閉鎖筋の扱い
第8章 マッスル鍼法周辺の技術
【第1節】 マッスル外誘導鍼法
1.概念/2.メカニズム/3.やり方
【第2節】 消炎鍼法
1.概念/2.メカニズム/3.消炎鍼の六条件/4.病巣境界単刺多刺の実技/5.適応
【第3節】 転調鍼法
1.概念/2.転調鍼法に関する二つの研究報告/3.転調鍼法の実技/4.考察
【第4節】 反射鍼法
1.概念/2.効果器と効果器髄節の特定/3.受容野髄節の特定/4.反射鍼法の課題/5.内臓髄節/6.ミオトーム(筋節)/7.髄節支配一覧
【第5節】 筋パルス
1.概念/2.メカニズム/3.臨床上の特徴
第9章 ニューモデル臨床鍼灸システム
【第1節】 ニューモデル本治法
1.皮膚ポリモーダル受容野(皮膚ツボ)ネットアップ鍼法/2.インナーマッスルネットアップ鍼法
【第2節】 ニューモデル標治法
1.二段マッスル鍼/2.病巣境界単刺多刺/3.未来への夢