週刊あはきワールド 2007年5月9日号 No.34

■座談会

食事療法や運動療法等を併用しなくても
ダイエット・アロママッサージは
ダイエット効果がある!


【出席者】 志茂田典子(武蔵野大学人間関係学部生理人類学教室)
        金子智久(日本指圧専門学校専任講師)
        高邑佳世(メディカルサロンリヴィエール院長)
【司 会】  あはきワールド編集人


 巷に氾濫するダイエット法は食事療法や運動療法、あるいはサプリメント等を用いる場合が多いが、ダイエット・アロママッサージはそれらを併用しなくても十分な効果が出るという。いったいどんな効果がどのくらい出るのか、どんな手技を施すのか。マッサージの新天地を開拓するダイエット・アロママッサージ提唱者の志茂田典子、金子智久、高邑佳世の3氏に話し合ってもらった。


          志茂田典子氏

――志茂田さん、金子さん、高邑さんの3人は、「ダイエット・アロママッサージ」という共通のテーマをもって活動されています。まずはなぜ3人が一緒にダイエット・アロママッサージにかかわるようになったのかを教えてください。

志茂田私が理事をしていた日本アロマセラピー学会や、その関連の日本アロマケア学会で、金子さんとは以前から面識がありました。その金子さんから、東京医療専門学校教員養成科の卒論でアロママッサージをテーマにしたいという相談を受けたのが、「ダイエット・アロママッサージ」のきっかけです。当時、すでにマッサージで開業されていた高邑さんと一緒に卒論に取り組んでいらっしゃいました。

――卒論がきっかけですか。でも、「ダイエット」とか「痩身」というと、「眉唾物じゃないの」という先入観をもつ人もいると思いますが、よくテーマを受け入れてもらえましたね。

志茂田確かに、その頃はまだ「痩身はエステのもの」という考え方が一般的でした。まだ、「メタボリック」という言葉がブームになるちょっと前です。マッサージ師の中にも、「なぜわざわざアロマを使う必要があるのか」というように、精油(エッセンシャルオイル)の効果に対する懐疑的な声が少なくありませんでしたから、このテーマで卒論指導担当教官を説得するのはなかなか大変だったようですよ。

金子そうですね……。

志茂田でも、アロマセラピーがすでに医療現場に取り入れられている状況を知っている私たちは、マッサージ師がアロマをもっと積極的に活用することで、彼らの活躍の場がもっと広がることを確信していました。

 そんな中で、「メタボリック・シンドローム」が社会問題として大きく取り上げられるようになったのです。そこで、一番効果が見えやすい「ダイエット・アロママッサージ」が研究テーマに決まったというわけです。

ダイエット・アロママッサージは
メタボリック・シンドロームにも効果がある

――ダイエット・アロママッサージは「食事療法や運動療法等を併用しなくても、ダイエット効果がある」と謳っていますが、具体例を示して説明できますか。


          金子智久氏

金子2003年に行った実験があるので、簡単に紹介しましょう。日本肥満学会肥満症診断基準検討会の肥満判定基準に従い、肥満度Ⅰ度に相当するBMI25~30にあてはまる基礎的疾患のない中年女性を被験者として、3カ月間にわたってダイエット・アロママッサージの治療効果を確かめる実験を行いました。

 方法はオイルマッサージの基本手技にアロマセラピーを融合させたもの、つまり今私たちが提唱しているダイエット・アロママッサージを行い、マッサージとアロマセラピーの相乗効果を狙いました。もちろんこのとき、食事制限、運動療法、サプリメント等は一切用いませんでした。

――アロマセラピーを融合させたということは、精油を使用したのですね。

金子もちろん、そうです。

――何を使ったのですか。

金子キャリアオイルは安全性とコストを考慮した結果、グレープシード(メドウズ社製、スペイン原産)にし、精油は脂肪分解促進作用、収斂作用、神経刺激作用、気分高揚作用を合わせもつローズマリー・カンファー(サノフロール社製、スペイン原産)を使いました。

――精油の濃度はどのくらいにしたのですか。

金子アレルギーや皮膚過敏性を考慮して2%としました。ただし、2カ月目からは3%へ濃度を上げました。被験者への安全性が確認されていることと、施術回数が1週3回から1週1~2回へ減ったためです。

――評価はどんな方法で行ったのですか。

金子体格指標として、身長、体重、BMI、ウエスト周径、ヒップ周径、大腿部周径を術前に測定し、また、一般検査として血圧、脈拍数、体温を術前、術後、安静閉眼10分後に測定しました。

――結果は?

金子一例、写真と実験データを紹介しましょう。図1は実験に協力してくれた被験者Aさんのデータです。上の写真3葉が側面から撮ったもので、下の3葉が正面から撮ったものです。それぞれ左から実験開始日(8月4日)、実験途中(8月29日)、実験終了日(10月31日)に撮影したもので、写真の下には体格指標となる各測定値が示してあります。


                              図1 


――なるほど、効果が出ていますね。誰にでも、このような効果が出るのですか。

金子一概には言えません。個人差があります。このときの被験者には体重が少し増えた人やBMIがほとんど変わらなかった人がいましたが、ウエスト周径値は全員減少しました。

――食事制限や運動療法をしなくても、効果があるということですね。

金子そうです。ダイエット・アロママッサージの最大の特長が「食事療法、運動療法、サプリメント等を全く用いない」点です。肥満症の患者にとって食事制限や運動療法は一番辛くストレスを感じる部分です。それを行わなくても効果が出るのがダイエット・アロママッサージです。

 ストレスから開放された治療、さらには気持ちのよいマッサージとアロマの程よい香りに包まれた治療、これが自律神経を安定化し、異常食行動や日常生活をも正常化していきます。使用した精油、ローズマリー・カンファーの気分高揚作用つまり交感神経を刺激する点も重要です。これにより脂肪細胞から分泌されるレプチンが正常化され、またその他のアディポサイトカイン、特にアディポネクチンの働きが正常化され肥満治療を可能にしていると考えています。

――ダイエット・アロママッサージで使う精油はローズマリー・カンファー以外のものではダメなのですか。

志茂田いわゆる、「ダイエットに効果がある」といわれている精油にはいくつか種類があります。たとえばグレープフルーツなども一時期ブームになりましたね。でもこれは、効果が出る濃度で使うと、ちょっと肌には刺激が強いのです。また、光感作性があり、日光にあたるとシミができるおそれがありますから、日中の治療では使わない方が無難です。

 その辺を考慮すると、ダイエット・アロママッサージにはローズマリー・カンファーの方が使いやすいと思います。

――厚生労働省はメタボリック・シンドローム対策に積極的に乗り出しましたが、メタボリック・シンドロームに対しても有効性がありますか。

金子もちろん有効です。メタボリック・シンドロームの診断基準の1つにウエスト周径(男は85cm以上、女は90cm以上)が言われますが、ダイエット・アロママッサージの治療では体重やBMIに比してウエスト周径の減少が顕著であることが先ほど紹介した実験でも確認されています。これは、食事制限、運動療法を用いない点と、マッサージとアロマオイルの相乗効果によるものと考えています。

 つまり、食事制限、運動療法を用いた場合のように一元的な体重、BMIの減少はありませんが、ダイエット・アロママッサージの効果により異常食欲や日常生活が正常化される点、そしてマッサージの触圧刺激により脂肪細胞が小さくなり、逆に筋細胞が大きくなって体が引き締まっていく点、この2つが体重やBMIの減少に比してウエスト周径が大幅に減少し、内臓脂肪をも減らしていくと考えます。したがって、メタボリック・シンドロームには大きな効果があると考えます。

ダイエット・アロママッサージは
しっかりした圧をかけて筋肉をマッサージする

――ダイエット・アロママッサージの有効性はよくわかりました。ところで、昨年の日本アロマセラピー学会で、「ダイエット・アロママッサージ」について発表したそうですね。

志茂田昨年11月にさいたま市で行われた第9回学術総会の鍼灸・マッサージ師グループマッサージブースで発表しました。金子さんが「ダイエット・アロママッサージの治療効果」について口演し、高邑さんが実技を披露し、私が司会をしました。

――実技も披露したんですか。参加者の反応はどうでしたか。


          高邑佳世氏

高邑参加された方はとても熱心でベッドの回りぎりぎりまで近寄ってきて、私の手と体験者の体を食い入るように見ていました。そして、最初に出た言葉が「すごい圧がかかっている!」でした。

 ダイエット・アロママッサージは従来のアロマ・トリートメントでは考えられない圧がかかります。その場で体がどんどん変化していきますから、皆さん、びっくりしていましたね。

――アロマ・トリートメントの撫でさするようなソフトタッチな手技をイメージしていたのですが、そうではないのですね。

志茂田代謝を上げるための刺激だから、結構強いんですよ。


       腹部への鋸切状揉捏法

高邑ダイエット・アロママッサージはすべての手技にしっかりした圧をかけて筋肉をマッサージしていきます。ですから、ダイエットだけでなく、頚・肩などの“こり”にも変化がみられます。

 たとえば、手技の1つに鋸切状揉捏法があります。両手根部で(部位によっては両四指も加えて)筋を交互に鋸切していきます。背部であれば、脊柱起立筋を脊柱からはがすような感覚です。やや強めの刺激ですが、効果は高いですね。

――高邑さんの臨床ではダイエット・アロママッサージをメインに行っているそうですが、どんな形態でやっているのですか。

高邑治療院での施術がほとんどですが、ときどき出張もあります。

――出張でもできるのですか。

高邑はい、できますよ。

――出張の場合、オイルのほか、どんなものを持っていくのですか。準備するものを教えてください。

高邑オイルのほかには、拭き取り用のペーパータオル、それに顔・胸当てようのマットです。

ダイエット・アロママッサージは
痩せるための過程のすべてにアプローチできる

――ダイエット・アロママッサージを身につければ、今までにない新しい活路が開けそうな気がしてきました。どういう展開が考えられますか。

志茂田ダイエットは美容のためだけではないということですね。たとえば、膝関節症の患者さんは、病院では必ず「まず体重を落としなさい。運動をしなさい」といわれるでしょう。ところが、膝が痛くて運動できないというのが現実です。

 ここにダイエット・アロママッサージを取り入れることで、膝に無理な負担をかけずに体重を落としながら、運動療法を進めていくことができるはずです。これは在宅でもできますね。

 また、ダイエット・アロママッサージの結果、異常な食欲が抑えられたという効果も見られましたが、このことも、生活習慣病で体重制限や食事制限が必要な場合に役立つはずです。

 つまり、痩せるという結果そのものだけでなく、痩せるための過程のすべてにアプローチできるのがダイエット・アロママッサージなのです。(終)

志茂田典子(しもだ・のりこ)

鍼灸師・介護支援専門員・健康心理士。武蔵野女子大学大学院博士課程修了。東京福祉大学・武蔵野大学講師。日本アロマセラピー学会評議員・AR乃木坂鍼療室院長。


金子智久(かねこ・ともひさ)

あん摩マッサージ指圧師・日本アロマセラピー学会認定あマ指師。中央大学卒業、日本指圧専門学校卒業。東京医療専門学校教員養成科卒業。現在、浪越学園日本指圧専門学校専任教員。


高邑佳世(たかむら・かよ)

あん摩マッサージ指圧師。長生学園卒業。東京医療専門学校教員養成科卒業。現在、メディカルサロンリヴィエール院長。ダイエット・アロママッサージ専門で日常の臨床を行っている。



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