週刊あはきワールド 2016年9月28日号 No.491

鍼灸学生の研修奮闘物語 File.5

Student.SeのBSL(Bed Side Learning )Diary(5)

~「日本中医学会熊本支援プロジェクト」東洋医学編その2~

鍼灸学生3年 平岡遼 


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 前回は熊本でのボランティアで出会った最初の患者Nさんの診察手順から、元気の話、鑑別の話、環世界の話など話題が広がりました。今回は同じ症例について東洋医学的観点からさらに深く考えていきます。東洋医学的診療で大切にしていることは、Onset時(発症起点、発症様式)の「環境と七情」でした。

座談会メンバー

ともともクリニック院長 木村朗子
TOMOTOMO(友と共に学ぶ東西両医学研修の会)代表 石川家明

 前回の記事でも取り上げた肺炎疑いの患者さんですが、今回は東洋医学的所見をメインに見ていきたいと思います。私と先生方との実際の会話を元にしていますので、学生の方はぜひ私の発言を見る前に自分ならなんと答えるか考えながら読んでいただくと理解がさらに深まると思いますのでお試しください。

症例提示)74歳 男性 Nさん
3~4カ月前にカゼをひき、その後咳嗽が続いている。喀痰あり、白色。
毎年、夏場は食欲が落ち、夏に体重はわずかに増減する。今年はいつもより体重が減っているかもしれないと感じているが、測定していないので詳細はわからない。
震災前までは大工をしていたが、今はボランティアをしながら、自らは全壊した自宅の解体作業を行っている。数日前に壊れた家の片づけに行ったときに雨に降られてから咳がひどくなっている。夜中に咳で目覚めることがある。時折笑みは見せるが、声は弱く小さい。

脈診:右弦滑、左渋
舌診:舌大、黄膩苔、舌下静脈怒張
BT37.6℃、BP118/64mmHg、HR78/分、SpO2 95%、RR40/分

■どこから紐解くか、環境と七情

石川やっと東洋医学に戻れそうですね。

平岡今までの話をまとめると、大工さんだったNさん、一つは「元気をはかる」観点から小さい声を東洋医学的に紐解きました。「元気がない」をどう考察していけばよいかわかりました。二つ目は「環世界を理解する」というお話から、地域そのものの悲しみと、ご自宅が地震で倒壊し、それを雨の中片づけていた、大工さんであるがゆえに余計に悲しみを背負ってしまうのではないかと、想像できました。三番目は「七情」から紐解きました。五情で悲しみは金であり肺です。このことで肺気を傷られたとしても何の不思議もありません。患者の主訴である「咳嗽」と七情の悲しみを司る「肺」が結びつきました。これでよろしいですか?

石川また、一気にいきましたね。このスピードに読者の皆さんがついてこられるか心配な早さです(笑)。

平岡さあ、先を急ぎましょう。

石川まあまあ、慌てずにいきますよ。ここまで出てきた情報で、他に東洋医学的な観点で整理してください。

平岡これまで出ている情報でまだ触れていないところは、咳嗽があり白色の喀痰があるところ、夏場は食欲が落ちること、そして舌脈でしょうか。

 咳嗽があることは肺気が上逆していることを表しています。咳嗽の原因は外感と内傷に分かれます。Nさんの場合、はじめのカゼをひいたときは外邪による外感病だったと思いますが、今の咳嗽は病が裏に進み内傷病となっているように感じます。

 また咳嗽には喀痰が付き物ですが、Nさんの場合は白色の痰ということですので教科書的には寒や湿です。しかし粘稠度は聞いていませんので、無色透明から白色になり粘り気があるとなれば寒ではなく熱の影響も考えられると思います。

 夏場に食欲が落ちることは体質の話ですね。いわゆる夏バテと呼ばれるものかもしれませんが、日本の夏は湿度が高いために湿邪に侵入されることが多く、…。

石川あのねえ、人の質問をよく聞いてくださいね。「ここまで出てきた情報で、他に東洋医学的な観点で」のまとめ方やあなたの考察を聞いています。

平岡なんとなく自覚はしていましたが、やっぱり質問に答えられていないですよね…。他の東洋医学的な観点…、うーん、なんでしょう。

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