週刊あはきワールド 2016年11月2日号 No.496

鍼灸学生の研修奮闘物語 File.6

Student.SeのBSL(Bed Side Learning )Diary(6)

~「日本中医学会熊本支援プロジェクト」東洋医学編その3~

鍼灸学生3年 平岡遼 


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 前々回から、熊本でのボランティアで出会った肺炎疑いの患者Nさんの症例をもとに、東洋医学的に様々な観点から検討してきました。前々回は診察手順から、元気の話、鑑別の話、環世界の話など、前回は「八綱」の観点から見ていく中で、鍼灸がプライマリケアの最先端の現場であることや、浮脈の臨床的意義、東洋医学用語の意味の多重性など、多岐にわたりお話してきました。今回は、最後に「症候」の観点からNさんを見ていきます。そのために、素問『咳論』や中国の大学の教科書である『中医内科学』を読む宿題をもらいました。

 患者を目の当たりにしたベッドサイドで診察を先輩達と共にしながら、後にカンファレンスを皆で行い、症例を討論すること。そして、その過程で教科書を再び読みこなす、参考書や論文を調べる、そしてまた討論をするといった臨床からカンファレンスにいたる一連の学びの姿を、医療ボランティア活動を通して経験できました。

座談会メンバー

ともともクリニック院長 木村朗子
TOMOTOMO(友と共に学ぶ東西両医学研修の会)代表 石川家明

症例提示)74歳 男性 Nさん
3~4カ月前にカゼをひき、その後咳嗽が続いている。喀痰あり、白色。
毎年、夏場は食欲が落ち、夏に体重はわずかに増減する。今年はいつもより体重が減っているかもしれないと感じているが、測定していないので詳細はわからない。
震災前までは大工をしていたが、今はボランティアをしながら、自らは全壊した自宅の解体作業を行っている。数日前に壊れた家の片づけに行ったときに雨に降られてから咳がひどくなっている。夜中に咳で目覚めることがある。時折笑みは見せるが、声は弱く小さい。

脈診:右弦滑・寸有力、左渋
舌診:舌大、黄膩苔、舌下静脈怒張
BT37.6℃、BP118/64mmHg、HR78/分、SpO2 95%、RR40/分

■創造主となって症候から考えよう


ハロウィンの日に仮装した筆者(左)と石川先生(右)
石川この患者さんの病症を診断するのに、まず<声が小さい>から「あれ、おかしいぞ」と気づきました。つまり気の病証から入りました。次にonset(発症様式)からは環境や七情を考えていきました。しかし、<声が小さい>は主訴ではありません。主訴は咳嗽です。それでは今度は「咳嗽」の知識から入っていきましょう。

平岡教科書を持ってきていいですか?

石川もちろん! こうやって実臨床と教科書の間を行ったり来たりするのが大事なことです。でも、すぐ飛びついちゃだめ。でも、あなたは学生だから、教科書を見に行ってもいいよ。でも、BSLに入ったんだから、まず自分の脳で考えること! 古代医学なんだから、素朴に考えることが大事です。まず、参考書を見ずに、腰蓑いっちょうで考えてごらん。

木村石川先生、無茶ぶり! でも、大事な訓練になりそうです。平岡さん、一緒に考えましょう。

平岡咳嗽は肺気が上逆していることを表しています。咳嗽の原因は大きく外感と内傷に分かれます。急性咳嗽は「外感」の場合が多いが、慢性咳嗽は「内傷」の場合が多い…。そして外感咳嗽が治らないと慢性咳嗽になることもある。Nさんは慢性の「内傷咳嗽」になってしまった。

石川そうです、そんな調子です。でもね、「肺気は上逆」って言うけど、このこと自体は病態生理を話しています。分かっていて話してくださいね。

木村今、何を議論しているということを認識しているって大事です。議論を論理的に噛み合わせるためにも。病棟での指導医相手の報告でも、仲間同士のカンファレンスでもコミュニュケーション能力ですね。これもBSLでの日々訓練です。

石川それでは、症候から見るまとめをしてみよう。咳嗽には「外感咳嗽」と「内傷咳嗽」しかない。それでは「外感咳嗽」をさらに分類してみよう。教科書を見ないで、基本思考から考えるとどうなる?
 

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