週刊あはきワールド 2016年12月14日号 No.501

週刊『あはきワールド』500号記念評論 第2回

世界鍼灸学会連合会学術大会(東京/つくば)2016からの展望

「持続可能な鍼灸」から「持続可能な社会のための鍼灸」へ(中)

 松田博公 


第1回 世界鍼灸学会連合会学術大会(東京/つくば)2016からの展望
     「持続可能な鍼灸」から「持続可能な社会のための鍼灸」へ(上)
第2回 世界鍼灸学会連合会学術大会(東京/つくば)2016からの展望
     「持続可能な鍼灸」から「持続可能な社会のための鍼灸」へ(中)
第3回 世界鍼灸学会連合会学術大会(東京/つくば)2016からの展望
     「持続可能な鍼灸」から「持続可能な社会のための鍼灸」へ(下)

日本鍼灸界20年の精華の総カタログ

RCTは浅刺、軽刺激の効果を証明する


矢野忠氏
 5日の基調講演「日本鍼灸の形成とこれからの社会における鍼灸の役割」において、矢野忠氏は、1500年に及ぶ日本鍼灸の歴史を、伝統医学派、現代医学派、折衷派の三潮流から総括し、「グローカルな鍼灸療法こそ日本鍼灸であり、その国の事情に合わせて多元的に取り入れることができる日本モデルは、世界モデルである」と語った。矢野氏の講演は、いつ拝聴してもそうなのだが、周到で説得力に満ちていた。それを踏まえて、わたしの身勝手な注文が許されれば、矢野氏の技術論からの日本鍼灸の説明に加えて、もう一つ、技術の背景にある宗教、思想を解説し、日本鍼灸はこの国の文化に根ざした伝統医療だと位置づける基調講演があればよかったと思う。

 日本の鍼灸師が、誇りを持って日々の臨床に携わり、自信を持って患者さんに「養生」を指導していくために、そして外国の鍼灸師に、単に治療効果だけでなく、日本鍼灸に宿るスピリチュアリティを説明するためにも、それが絶対に必要だからである。

中国の「構造」と日本の非「構造」

 そこまで考えれば、中国伝統鍼灸の体系が、戦国~漢代の思想をパラダイム(思考の枠組み)として誕生したことを解説する、さらに一つの基調講演も欲しい。なぜなら、中国鍼灸の根幹から枝分かれした日本鍼灸の姿は、中国古代鍼灸の鏡に照らし比較することで、よりクリアになるからである。『黄帝内経』(『素問』『霊枢』の便宜的な総称)に結実する中国古代鍼灸の体系は、天人合一観や陰陽五行論などを骨子とする「黄帝思想」やそれと『老子』の無為自然観を結合した「黄老思想」を枠組みとし、数の神秘主義に彩られた厳密な宇宙論的「構造」を持っている。それと比較するとき、日本鍼灸の、自然との一体感や内面的な精神主義への傾き、臨床のその場その場でアドホックに対応する技術の直感的な非体系性と非「構造」が鮮明に浮かび上がるだろう。

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