週刊あはきワールド 2016年12月21日号 No.502

週刊『あはきワールド』500号記念評論 第3回

世界鍼灸学会連合会学術大会(東京/つくば)2016からの展望

「持続可能な鍼灸」から「持続可能な社会のための鍼灸」へ(下)

 松田博公 


第1回 世界鍼灸学会連合会学術大会(東京/つくば)2016からの展望
     「持続可能な鍼灸」から「持続可能な社会のための鍼灸」へ(上)
第2回 世界鍼灸学会連合会学術大会(東京/つくば)2016からの展望
     「持続可能な鍼灸」から「持続可能な社会のための鍼灸」へ(中)
第3回 世界鍼灸学会連合会学術大会(東京/つくば)2016からの展望
     「持続可能な鍼灸」から「持続可能な社会のための鍼灸」へ(下)

鍼灸は世界に広がり地域固有の花に

人助けの熱い心が日本鍼灸界の希望

 さて、ここで、この大会の開会式から閉会式まで、ずっと気になっていたことを述べておこう。日本の鍼灸界が持てる力量を最大限注ぎ込んだWFAS東京/つくば大会は、大成功だったと思う。過去10年、20年の日本鍼灸の達成を総括し、これから10年の方向性を指し示す貴重な一里塚が得られたといえるだろう。しかし、これは不思議な大会でもあった。

消えていた中国鍼灸界の大勢力


劉保延氏
 2004年のオーストラリア大会、翌年のポルトガル大会、2007年のWFAS設立20周年記念北京大会などを見てきたわたしには、今大会に対するWFAS理事会の関わり方がよく分からない。これまでの大会の開会式のように、世界各国の理事、役員がずらっと壇上に並び(その多くの出自は中国だが)、中国のTCMの大物が次々と記念講演、基調講演をするという光景もなかった。TCMの側からは、劉保延会長の基調講演「鍼灸の臨床研究プラットホーム構想とその実践」があっただけである。いつもの大会会場で目につく中国鍼灸界の大勢力は、潮を引くように消えていた。講演も発表もほぼ日本一色であった。それを実現するために、関係者がWFAS理事会とどんな折衝をされたのか、どれだけのご苦労があったのか、楽屋裏のことは知らない。わたしは、今大会で、TCMが威信を賭けて展開してきた世界鍼灸標準化戦略の進展状況を知りたかったし、豊富な人材を擁する中国鍼灸界の、経絡・経穴の最新研究、古代医学史を書き変える出土文献、考古学的遺物の知識、『黄帝内経』の伝統思想に則る読み方なども学びたいと願っていた。それらの期待はすべて肩すかしに終わった。

世界中で地域に即した鍼灸が生まれる

 わたしは、どう考えるべきなのか。材料を与えてくれたのは、6日の特別セッションで、「北米東洋医学誌の出版とその意義—英文と日文対訳の日系鍼灸雑誌」の報告をした水谷潤治氏の発言である。水谷氏はカナダ・バンクーバーで開業するかたわら、1994年から『北米東洋医学誌』を発行し、アメリカやヨーロッパでも日本式の透熱灸を教える世界鍼灸の事情通である。マーリン・ヤング氏が、原志免太郎の三里の灸を知り、アフリカの結核患者の治療をしようと思い立ったのも、水谷氏との出逢いを通してだという。彼はこう語った。
 

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