週刊あはきワールド 2016年12月21日号 No.502

全力で治す東西両医療 第10回

バイタルサイン簡単症例集(4)

~総集編~

山田整形外科・胃腸科・肛門科 鍼灸師  荒川和子 


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 前回は高血圧に注目したいくつかの症例をご紹介しました。今回は総集編として、バイタルの見方を総括できる症例です。鍼灸師のハム子先生から相談を受けた症例を、時系列で追っていきますので、皆さんも是非、実際に患者さんを診ている気持ちで読み進めてみてください。

【座談会参加者】
ハム子(仮名)
木村朗子(ともともクリニック院長)

■「いつもとの違い」からバイタルを測りにいく

荒川今回は、鍼灸師のハム子さんが臨床で悩んだ症例があるそうなので、紹介していただきたいと思います。ハム子さん、どんな症例ですか?

ハム子はい。よろしくお願いいたします。患者さんの情報を提示します。

【症例1】
89歳の女性 Yさん
主訴:咳嗽
現症:2~3前から咳が出てカゼっぽい。体調は良いがまだ咳が残っている。
既往:脳梗塞後遺症(右上肢麻痺)

《バイタル》
BP109/64mmHg、HR89/min、BT36.3℃、RR24/min、SpO2 93%


ハム子元々は、腰痛を主訴に来院されている患者さんで、11月22日に受診されたのが上記の情報です。介護施設に入所中の方で、ヘルパーさんと一緒に受診されています。

荒川今回は咳の訴えがあったのですね。

ハム子はい。2~3日前から咳が出てカゼっぽいとのことなのですが、来院時は「体調は良い。まだ咳が少し残っている」という訴えでした。

荒川お聞きしたいのですが、ハム子さんはなぜこの患者さんのバイタルを取りにいったのですか?

ハム子バイタルを取ろうと思った理由は、Yさんが咳について話すそのお声がいつもより小さかったからです。ちょっとおかしいな、と思ったことがきっかけでした。

荒川いつもと違う、という変化に気がつかれたからバイタルを取られたのですね。

ハム子はい。

荒川「声が小さい」という情報から肺炎を発見した症例を、以前Student.SeのBSL(Bed Side Learning )Diaryシリーズで紹介してくださいました。ハム子さんもまた、聞診から気づきを得たのですね。興味深いです。ところで、他の上気道症状はないんですか?

ハム子鼻水がありました。

荒川それはここ2~3日の症状ですか?

ハム子それが、わからないんです。咳のもっと前からあったのかもしれません。

荒川このバイタルを感冒だけで説明するのは難しいですね。今回の咳以前に先行感染があったのかもしれません。

ハム子あとはYさんを観察すると、呼吸が「はかはか」していることに気がつきました。それで、呼吸数とSpO2の測定を最初に行いました。

荒川呼吸数が24回、SpO2 93%は明らかに異常な数字ですね。普段はどのくらいなんですか?

ハム子それもわかりません。今まで測定したことがありませんでした。何とか情報がほしくてYさんが入所している施設に電話をかけたりもしたのですが、それでも普段のバイタルはわかりませんでした。

荒川普段との比較ができれば、バイタルから得られる情報はさらに増えますからね。ハム子さんの行動力を私も見習いたいと思います。

ハム子分かったのは、施設では感冒が流行っている、ということぐらいです。ですので、現在の状態から判断をするしかありません。

荒川比較は難しいようですね。平熱はわかりますか?

ハム子平熱は確認しませんでした。認知機能はしっかりした方ですので、聞くべきでした。

荒川なるほど。あとは、内服による影響が気になります。

ハム子薬も不明です。薬手帳等は拝見したことがなく、また実際の薬は一包化されていて何を飲まれているか、ご本人も把握していません。

荒川わかりました。内服薬がわかれば、既往歴を推測することもできると思いましたが残念です。

ハム子被災地のボランティアに参加していても実感することです。カルテに薬の記録が残っているかどうかで、後から振り返った時に拾える情報量がかなり異なりますね。

■その咳、後鼻漏?肺炎? 鑑別疾患を挙げてみよう

荒川Yさんの訴えは2~3日前からの咳ですね。さらにバイタルで異常を示す呼吸数やSpO2の情報を一元化して考えると、普通の感冒による咳とは考えにくいですね。

ハム子そうなんです。私は肺炎を疑ったのですが、発熱はしていないし違うのかな、と。

荒川私も肺炎は考えました。確かに、一般的に肺炎の症状は、咳、発熱、喀痰、呼吸困難等の症状が挙げられると思いますが、発熱がないことが肺炎を除外できることではないと思います。

ハム子うーん、では肺炎の可能性は捨てきれないですね。荒川先生、あとは副鼻腔炎も考えましたがいかがでしょうか。鼻水があり、後鼻漏等の刺激で咳になっている可能性もあるのではないかと思います。

荒川ハム子さん、副鼻腔炎だけだと、呼吸数やSpO2の説明がつきにくくありませんか。

ハム子そうですね…
 

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