週刊あはきワールド 2017年3月8日号 No.513

『すぐ使える 若葉マークのための鍼灸臨床指針』へのいざない 上

40年に及ぶ鍼灸教育の経験から構築した若葉マークが失敗しないための鍼灸臨床ガイドブック

『すぐ使える 若葉マークのための鍼灸臨床指針』の「まえがき」より

九州看護福祉大学鍼灸スポーツ学科教授 篠原昭二 


 間もなく、『すぐ使える 若葉マークのための鍼灸臨床指針~臓腑病、経脈病、経筋病の診察法と治療法~』を上梓いたします。ここでは、本の紹介を兼ねて、本書から「まえがき」と「あとがき」を今号と次号の2回にわたって転載させていただきます。(編集部)

まえがき

すぐ使える若葉マークのための鍼灸臨床指針~臓腑病、経脈病、経筋病の診察法と治療法~(篠原昭二・和辻直共著)  1978年にはり師・きゅう師の資格を取り、爾来、今年(2017年)で40年目を迎える。スタートは経絡治療から入り、現代医学的病態把握に魅了されて、一時は1本の鍼で症状を変えてやろうと必死で取り組んだ。しかし、膝のOAを有する患者さんの一言にショックを受けた。「先生の鍼は杖を忘れて帰るくらいよく効くけど、2日しか持たへん(持続しない)」とのこと。そこで、再度東洋医学的な治療に切り替えたところ、膝関節に1本も刺さないにもかかわらず、1週間楽になったとのこと。そこから、新たに中医学に取り組み、東洋医学の基本的な理論の理解に努めた。

 そのうち、ある柔道部の学生が汗をかいた柔道着のまま遊んでいて風邪をひき、肩関節痛をきたし、下宿で先輩の治療を受けたものの、オーバードーゼで肩が動かなくなったと来院した。肩関節前面には痛々しいほどの内出血斑がみられる。ところが、浮腫状態になった列欠に指をあてた途端、肩関節は自由に動き、指を離すと痛みは再現する。そこで、切皮置鍼を列欠に施したところ、肩関節痛は消失してしまった、このとき、どうしてこんなことが起こるのか全く理解できなかった?!

 しばらくして、風邪と関節水腫を伴う膝関節痛を訴える女性が来院した。曰く、「東洋医学では、どうして水が溜まるのですか?」と。そのとき、面食らって答えたのが、「炎症で膝に熱がこもり、冷やすために水が集まっているのです?!」と。すると、「それなら、熱を冷ますツボはないのですか?」と問われ、「指の先の方に滎穴というツボがありますが、少し痛いかもしれませんよ」と答えると、「それなら是非やってください」というのが、滎穴への鍼治療のスタートとなった。

 初めは陰主陽従の経絡治療の常識から、脾経の大都に刺して見事に発赤、腫脹、熱感等の症状が悪化した。そこで、藁にもすがる思いで内庭その他に刺鍼した。治療後、「ここまで腫れたら、一度整形外科で水を抜いてもらってください」と指示して帰っていただいた。2週間後に来院したとき、膝関節の炎症は見事に引いていた。思わず、「水(関節水腫)を抜いてもらったのですか?」との問いに、「いいえ、この前の治療後、とても膝が軽くなり、帰るときから楽に感じ、次の日には腫れは引いていましたよ!」との答えに、もしかしたら本当に内庭が効くのかもしれないと思うに至った。

 その後、片端から関節水腫に内庭を使うようになり、さらに、動作時痛に対して滎穴や兪穴を使うようになった。滎穴や兪穴の応用は、『霊枢』(邪気臓腑病形篇)の記述に基づくものであるが、東洋医学的な治療の面白さを改めて思い知らされた出来事であった。

 そして、経筋治療の症例研究や実験的な遅発性筋痛に対する経筋治療の研究等を通して、経絡の不思議さを思い知らされる毎日となった。

 鍼灸臨床の世界では、週に1、2回しか臨床をしない教育者、研究者の実力などタカが知れている。しかし、何としても効果を出して、患者さんを獲得しなければならない開業臨床家と異なり、考えながら、研究的な要素を踏まえた臨床が実践できる環境の中で行う、種々のアプローチの積み重ねは、鍼灸臨床のあり方の一つの視点として価値があると思うに至った。熟練した臨床家から見れば、未だ駆け出しではあるが、教育者、研究者の視点から見た初学者向けの臨床方式について、ご一読を勧めたい。

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