週刊あはきワールド 2017年3月15日号 No.514

『すぐ使える 若葉マークのための鍼灸臨床指針』へのいざない 下

臓腑病? 経脈病? 経筋病? の判断ができれば、鍼灸臨床力がグンとUPする!

『すぐ使える 若葉マークのための鍼灸臨床指針』の「あとがき」より

九州看護福祉大学鍼灸スポーツ学科教授 篠原昭二 


 
 このほど、『すぐ使える 若葉マークのための鍼灸臨床指針~臓腑病、経脈病、経筋病の診察法と治療法~』を上梓いたしました。ここでは、本の紹介を兼ねて、前号の「まえがき」に続き、「あとがき」を転載させていただきます。(編集部)

あとがき

すぐ使える若葉マークのための鍼灸臨床指針~臓腑病、経脈病、経筋病の診察法と治療法~(篠原昭二・和辻直共著)  40年にわたる鍼灸教育の中で、確信したことがある。それは、現代的病態把握、経絡治療、中医学といった鍼灸診断・治療システムを独立して教育しても、限られた教育年限ではマスターすることは困難であり、ほとんどの学生は消化不良のまま卒業していく現実を目の当たりにしてきた。そこで、現代的病態把握や経絡治療、中医学のベースとなる鍼灸臨床のコアの部分をいかに効率的に理解させるかが重要であると考えるに至った。

 それが、本書で紹介するところの臓腑病、経脈病、経筋病の診断と治療である。臓腑の異常がわかれば、中医弁証の根幹をなす臓腑弁証の理解がしやすくなる。そして、経脈の異常がわかれば、経絡治療の理解が深まる。経筋病の判断ができれば、現代的病態把握の理解を深めることができるからである。そして、体を動かしたときに感じる動作時痛があれば、経筋病があることを意味している。さらに、愁訴が特定の経脈上に出現しやすいことから、経脈病の異常の有無も流注さえ理解していれば、正確にツボが取穴できなくても診断は容易である。愁訴が気象や情動に影響されるとともに、臓器の固有症候(内臓器官系愁訴)を伴っていれば、背景に臓腑病があることがわかる。言われてみれば当たり前のことであるが、この3つの原則を忘れなければ診断と治療はとても簡便に行えるはずであり、同時に、卒業後すぐにでも理解することが可能であると考えている。

 また、日本の鍼灸臨床の特徴は「触れる」ことであり、ツボや経脈そして脈、腹部や背部の診察を通して、患者の体が発する声(体表所見)を聞く。飲食の不摂生を続けると臍周の動気(拍動)が触れるようになり、中脘を中心とした上腹部は緊張、圧痛を呈することになる。これらの所見は、消化器系の異常(脾胃の失調)があれば、起こるべくして出現する反応であり、治療によって症状が改善するとともに体表所見も改善することになる。つまり、患者の体の訴える声を四診法を通して、直接認識することができる。紅舌、無苔、乾燥があれば、体に熱があることを訴えているのであり、右関上の浮位に弦脈があれば、肝の疏泄作用が失調して(ストレスから)胃の腑に悪影響を及ぼし、胃の降濁作用を害して胃気上逆(胸やけ、嘔気、嘔吐など)をきたしていることを体が訴えているのである。慢性的に飲食の不摂生をすると、背部兪穴の膈兪から三焦兪にかけて膨隆、硬結、圧痛が出現する。患者さんに聞くまでもなく、脾胃への度重なる負担で体が悲鳴をあげて膨隆、硬結を呈しているのである。これほど優れた診察法があるだろうか? こころや体の歪みが体表所見として、種々の形で映し出されているのである。

 一方、記述してきたこれらのシステムは完成したものでは決してない。さらに完成した診断・治療システム理解のための過渡期的な治療法として活用いただければ幸甚である。

 最後に、唇がかさつき、ひび割れ、口内炎があり、アクチ(口角が切れる)がある学生が来たとき、「君は膝関節の前面痛か股関節前面痛、顎関節痛がないですか?」と。すると、学生は「どうしてわかるんですか? すぐに膝関節が痛くなるんです」。君の唇が「私は胃が悪くて唇が荒れてきて、そのために胃の腑から胃経の異常があるんですと、語っているんですよ~」と答えると、異口同音に「東洋医学って素晴らしいですね」と感心する。伝承医学の素晴らしい世界を読者諸氏とともに、味わいたいものである。

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