週刊あはきワールド 2017年7月19日号 No.530

カラダの欲求と操体の私的解釈 第20回

操体の私的解釈

~最終回~

 大隈博英 


◎第18回 操体の不思議
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ありのままの表現こそ操体

 カラダの欲求は、本能の治癒に関わる部分と、深層心理の隠された部分からきているのではないかというのが私の仮説である。

 そして、その普段は隠れている、欲求を表に出すことで、操体法は一つのプロセスが完了する。

 これは何を意味しているのだろうか?

 そもそも、どうして、欲求は隠れているのだろうか? これは、人間とはどういう存在なのか? という根源的な部分に究極は行き着く気がする。あくまで、私見に過ぎないのだが、

結局、私たち、人間は、自分なりの表現をし続ける存在なのではないか?

と、私には、思えてならないのである。

 表現方法は様々である。活字で表現する人、絵画や音楽、コスプレ、化粧、ダンス、歌、スポーツ、ゲーム、各種学問分野の研究など、人は何かをせずにはいられない存在である。

 いや、毎日、TVを見ることと、食べることと寝ることしかしていないよと、多くの後期高齢者は言うかもしれない。しかし、実はその奥で、表現をしたいという隠れた欲求が表に出ては引っ込むということを繰り返しているように見える。

 うごめいているのである。いや、高齢者に限らない。老若男女問わず、それぞれの立場で、私たちは表現をしたい欲求と共に生きている存在なのである。

 隠されていると見えるのは、それは表にはすでにユングのいうペルソナ(仮面という意味の心理学用語。社会的立場で本来の自分とは違う、振舞をしていること)が出ているからである。貴方が教師なら、教師という立場にあった仮面をかぶっているのだ。貴方が公務員なら、規律に従って粛々と職務を追行しなければならない。サラリーマンならヒエラルキーに従って、命令服従が絶対である。皆、自分が表現したいこととは違う社会の一員としての制約の中で生きている。

 これが、欲求を潜伏化させ、感覚を鈍麻させる大きな要因になっているのではないだろうか。

 マグマを小出しにして、隠れた欲求を表に出し、表現していく。そのことで、広い意味でのカタルシス効果が得られる。それが操体なのかもしれない。特に社会というルール、経済至上主義のルールの中で、私たちは右往左往させられている。理想論と現実のはざまで、心は常に揺れ動く。嫌なことを嫌とは言えない。本当は個人、個人の個性と欲求があるのに、集団生活で犠牲になった部分が抑制された隠れた欲求となって凝縮している。

 それは心理的な側面だけでない。純粋に肉体的な部分においても、私たちは原始時代のように生の動植物を生きたままや、死後直後に食べるということもない。所かまわず、動物のように排泄をすることも、もちろん許されない。赤子のようには生きられない存在である。健康な身体の定義も多数派が作った想定に過ぎないのに、それを社会が“個”に強制させていく。やれ運動だ、やれビタミンだ、1日30品目だという用語で、型にはまるように迫ってくる。

 凝縮されたエネルギーはその反発力も次第に強くなっていく。そのため、ある時期にマグマが吹き出すように、爆発する場合がある。

 それが、医師に診断される病名がつく状態になったということではないだろうか。

 もちろん、誰もが欲望に純粋であれということを推奨しているわけではない。ユングのペルソナも社会を円滑に運営するために必要なプラスの側面があるという前提で、その弊害を心理療法的な意味で解説したものである。しかし、社会を運営するために個人が病気になってしまう、いわば社会のために個が犠牲になるという構造が、どこかに歪みを生じさせるのも確かだ。

 いつの時代もどの民族でも、それは変わらない。そう、操体とはそういった社会の枠の中では表現しきれない、個人、個人の抑圧された欲求を表現することで、カラダが癒されていくという、

実は当たり前のことを淡々とやっていく手法そのものではないか?

と思えるのだ。野生動物は常に本能で自由にそれをしているので、わざわざ療法としてする必要がないのである。私達は弱肉強食を避けるために、社会という便利なルールを作った。しかし、その一方で原始感覚を麻痺させ、欲求を潜在化し、病という噴火を起こす弊害も生じさせてしまったのである。

 注意したいのは、本当に自分がしたいことをしなさいとか、ワクワクすることをやりなさいということと同じ意味にとる人が多いことである。操体はもっと、良い意味で原始的なことである。

 原始的な感覚で、普段は隠れている欲求を表現してみる

一言で言えば、操体はそのような存在なのかもしれない。

操体は完治しない

 誤解をおそれずに言えば、見出しの通りである。もちろんきちんと説明させていただくので、最後までお読みいただきたい。

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