週刊あはきワールド 2017年9月13日号 No.537

新米鍼灸師の研修奮闘物語 File.5

Resident.SeのBSL(Bed Side Learning) Diary(5)

~帯脈腰痛と分かっていればあ!~

鍼灸レジデント1年目 平岡遼 


◎過去記事≫≫  もっと見る
 
 新米鍼灸師としてスタートしての「はじめての腰痛」はなんと尿路結石からくる腰痛(特異的腰痛)患者さんでした。患者さんが必死にいろいろな表現で「私の腰痛は安静時痛です。」と訴えていたのですが、そのメッセージをしっかりと受け取れずに、結果よくある筋筋膜性腰痛(非特異的腰痛)と思い込んで治療してしまいました。特異的腰痛、非特異的腰痛、そして腰痛のレッドフラッグなどは学校で習って知っていたのですが、臨床の現場では分かっていての応用ができませんでした。(File.3

 さらにカンファレンスの翌日、臨床の神様は典型的な尿路結石からくる激しい痛みの腹痛患者を送ってくれたのですが、今度は「医療人としての常識的お作法」を知らずに対処してしまい、先生方にさらなるご迷惑をかけてしまいました。このお作法は鍼灸学校では教えてもらえない事柄で、しかし医療者ならば習得しなくてはいけない基本的な医療常識でした。(File.4

 ところが、さらにカンファレンスで分かったことは東洋医学知識も欠如していたことでした。「帯脈腰痛」の概念を持っていたならば、これらの患者さんの臨床推論はさらに容易であったのです。西洋医学知識と東洋医学知識の両者を知ることが大事だとつくづく分かった腰痛デビュー戦でした。

【座談会参加者】
萱間洋平(日本鍼灸理療専門学校専任教員)
木村朗子(ともともクリニック院長)
石川家明(友と共に学ぶ東西両医学研修会主宰)

症例1)49歳女性 腰痛(File.3
症例2)48歳男性 腹痛(File.4

■鍼灸師としてのプロを目指そう

平岡今回はいろいろご迷惑をかけてしまい申し訳ありません! 反省します。

石川たくさん勉強になったことでしょう。

木村私達にはちっとも迷惑はかけてはいないのですよ。西洋医学も東洋医学もしっかり医療者としての自覚を持って研修をしないと、患者さんに迷惑がかかることなのです。

石川鍼灸師の世間話で、あそこの医者はヤブとか言っているのを聞いて、傍らで聞いていていつも思うのですが、「あなた達は大丈夫なの?」と聞きたくなります。学校では学生が同じように話しています。

萱間人ごとなのですね。(笑)教員の一員として反省しなくてはいけないのですが、ちょっとした笑い話ですね。

石川笑い話です。(笑)当事者感覚の消失なのでしょう。あなたも患者からヤブかどうか問われる身であることを忘れてしまっている。

木村ブラックユーモアです。

石川さらに、思う現象は、例えばNHKのプロフェッショナルという番組に出てくる医療者や福祉関係者に感動して涙を流すのですが、感銘を受けて明日から一所懸命勉強するのかなと思うと、必ずしもそうではない。自分も同じ種類の職業なのになあと思いますね。

萱間TVに出てくるのはスーパースターだけど、先生のおっしゃることはよく分かります。

石川これも人ごとなのですね。TVで感動しても自分の世界とは関係ないと思っている。

木村TVに出てくるのはスーパースターだけど、さて自分達は何ができるだろうかということですね。画面の中の話で、自分に置き換えられなくなっている。

石川スーパースターでなくていい、名もない鍼灸師が「一隅を照らす」治療家になって、すこしでも苦痛を軽減してあげてほしいですね。鍼灸治療はこれだけのものだぞと患者やその周辺に知らしめてほしいですね。

萱間そのためのプロとしての研修ですね。

石川医療、福祉だけの話ではなくて、どの分野にもプロが少なくなってきたなと思います。

木村接客業もそう感じることがあります。

石川夜間伊豆の山中でボロ愛車がエンストを起こしたことがあって、近くの修理工場のシャッターを叩いて依頼したのですが、つなぎを着た若い人が出てきてくれました。状況を二言三言聞いた後、Tレンチの一方を耳に、一方をエンジンに当てて、片方の手のモンキーレンチで叩いて聴診をし出しました。僕は心配で横から口を挟んでしまったのですが、僕の方をちらっと見て「今、診断をしています。」と冷静に言い放ちました。感動しましたね。

平岡カッコいいですね。プロですね。

木村石川先生が東洋医学を広めたいと鍼灸師プロ養成を目指してTOMOTOMOをお作りになって合宿勉強会を始めたのが16年ぐらい前でしょうか? あの時は、3泊4日ぐらいで、熱気がありましたね。鍼灸師達の頑張ってる姿に、医師や医大生も感銘を受けて、負けてはいけないと勉強しましたね。私も医大生の時でそのうちのひとりでしたが。

石川先生、僕の講義の時に眠っていました。(笑)

木村あら、ここでばらすのね。(笑)毎晩遅くまで皆と楽しくやっていたので、思わずコックリとしてしまいました。でも、それだから、反省して石川鍼灸院の勉強会に参加するようになったじゃありませんか。

平岡へえー、そうだったんですか。何年生のころですか?

木村3年生ぐらいの時です。

石川木村先生は、医学生のうちに舌脈診をマスターすると目標を定めていました。研修医になってからも、忙しい中で時間のつくれる土曜日にはお出でになっていました。

平岡私も3年生時ですが、鍼灸学校は6年制ではないので一緒ではありませんね。1年生時から研修に来るべきでした。

木村医大生も1年から来ているひともいましたよ。先生は「花の18歳が来た」とはしゃいでいました。(笑)年に4~6回開催していましたが、全出席の方でした。

石川ばらし合いの様相になってきた。(笑)今では彼女は立派な産婦人科専門の総合診療医になって活躍しています。

■患者を不幸にしないために西洋医学を、
  患者を幸せにするために東洋医学を学ぶ

木村今までの来た道を振り返ると、石川ゼミは研修としては良い方法であると思います。

石川いまでは、木村先生に院長になっていただきクリニックも開設しました。“石川ゼミ”から“ともともゼミ”に名を改めて、名実ともに、西洋医学と東洋医学の両方が一緒に勉強できる場を作ろうとしています。

萱間せっかく高い授業料を払って鍼灸師になったのですから、プロとして誰かが病気になった時に少しでも苦痛をやわらげる事ができる人になってほしいですね。

石川「一隅を照らす」は、偉い人にならなくてもいい、目の前を照らす人になれ、という最澄の教えですが、鍼1本で人を救える仕事を選んでしまった事実を多く学生や初心者鍼灸師に考えてほしいですね。

平岡ごめんなさい。腰痛だけでも照らせる鍼灸師になりたいものです。

木村でも鍼灸治療の良いところは特に医療資源も少なく、簡便にできることです。

石川それに普通の腰痛(非特異的腰痛)と分かれば、適当に打ってよく効くことです。学生も卒業したても、10年選手も、流派の違いも、関係なく治っているという事実に眼を開いて見る必要があります。事実を認めることからスタートしないと何も見えません。

木村私が打っても患者さんは治っています!

平岡・石川ほんとうです!

萱間そうすると、むしろ特異的腰痛なのか、非特異的腰痛なのかの鑑別が重要となりますね。ガンの骨転移による腰痛だったとあとで分かって慌てる鍼灸師の話を散見します。

石川同じ腰痛でも原疾患やその病態によって治り方や治療方針が違うから、当然患者への説明が違ってきます。しっかり鑑別しなければいけません。

萱間鑑別次第では救急搬送も必要ですね。

石川それに、鑑別しないと鍼が効いたかどうかも分からない。果ては、置鍼したから悪かったんだとか、わけのわからない考察をすることになります。

平岡私が学生の時分に、鍼灸師も西洋医学的に鑑別できなければいけないのでは、と感じたのはまさにこの部分でした。鍼灸師は、やれ「俺が治した」「この治療法なら治せる」という話になりがちですが、そもそもその評価はどうやっているの? と疑問に感じたのです。しかし鍼灸師には西洋医学を学べる場がとても少ないです。鍼灸学生2年のときに中医学会で石川先生と木村先生のセミナーを初めて聞いたときは衝撃でした。それがきっかけで2年の終わりくらいからともともゼミに頻繁に顔を出すようになったわけです。

木村あのときは、背の高い人が来たなあと思っていました。(笑)私が前身の石川ゼミにお世話になった学生の頃からある「患者を不幸にしないために西洋医学を学び、患者を幸せにするために東洋医学を学ぼう」という呼び掛けは、その後十数年経っても、色あせない素敵なモットーだと思います。励みになりますね。

石川まだ、いくつか感動するゼミのモットーはもっとーあるんですよ。(笑)

平岡モットーあるのですね! 新入りなので全部聞いてないです。教えてください!

石川「灸すれば通じる」とか、「灸鼠、猫を噛む」とかもお薦めです。

萱間「窮すれば通ず」をもじったのは意味が分かりますが、後者の意味は?(笑)

石川ねずみに灸をすると、元気になって猫をも噛む。両方ともお灸の効果を謳ったものです。(笑)

木村話がまた横にそれていますよ! 元に戻しましょう。

■「非特異的腰痛」と「特異的腰痛」

石川平岡さんの「はじめての腰痛」が幸か不幸か内臓由来の腰痛で「特異的腰痛」でした。それもクリニックの患者さんではなく、鍼灸院にやって来た患者さんでした。「非特異的腰痛VS特異的腰痛」について、平岡さん、説明できますか?
 

(続きはログイン・ご購読後にお読みいただけます)

この記事の続きをお読みいただくためには、週刊『あはきワールド』(有料コンテンツ)のご購読手続きが必要です。

ご購読の申し込み ログイン(ご購読済みの方はこちら)




トップページにもどる