週刊あはきワールド 2018年1月24日号 No.554

全力で治す東西両医療 第21回

ともともクリニック全力カンファレンス中継(10)

~曲泉、陰谷の反応で何がわかる その1~

ともともクリニック 諸星公恵 


◎第20回 ともともクリニック全力カンファレンス中継(9)
      ~チョコノート紹介~
      (諸星公恵・木村朗子・石川家明)
◎第19回 ともともクリニック全力カンファレンス中継(8)
      ~実習に出た医学生からのメール症例相談~
      (木村朗子・石川家明)
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 前回からご紹介しているチョコノートの紹介No.2です。今回は鍼灸治療のなかで、経穴診断をさらりと入れて病症を推測する鮮やかな方法があるんだという私の目からの鱗の驚きのBSL経験(Bed Side learning臨床実習)をお話します。

■チョコノート2 継続して来院している患者さんの余病を診断する

48歳・女性 Sさん
 両肩痛の治療でいらしているSさんが、今回は「頭がボーっとする」とのぼせのような症状を訴えていました。石川先生が問診の中で以前もあった左膝痛について聞いたところ、正座をした後に痛みが出たことを訴えたため、膝関節の裂隙の圧痛を確認されました。

 関節に痛みがあると患者が訴えた場合、痛みが関節由来なのか関節周囲由来なのかを鑑別することが大切になります。関節裂隙の圧痛が認められる場合、通常は裂隙に沿って順に圧痛が直線的に並びます。本症例では左膝関節内側の裂隙に圧痛が数カ所検出されるものの、直線線上には並んではいませんでした。むしろ裂隙をまたいで鵞足に停止する筋腱の圧痛があり、近くのツボにも反応があることが分かりました。そこでツボとしての反応をみると、曲泉と陰谷に著明な圧痛があり、反対側の同ツボにも反応がありました。次に「曲泉・陰谷」という組み合わせから「下焦の問題」と考えられ、下焦の問題の中でも罹患率の高い膀胱炎を疑い、さらに「頭がボーっとする」という症状がのぼせではなく感染症による発熱ではないかと考えていらっしゃいました。そこで、体温の計測や問診を行うと、軽度の発熱があり、2、3日前から残尿感、頻尿、下腹部痛、灼熱感がありました。さらに肋骨脊椎角の叩打痛を調べて(CVAの叩打痛)、章門の圧痛を調べていました。

 私は臨床経験を積んでいったおかげで医療面接と身体診察にかかる時間が短くなったものの、新患や新しい症状出現時にはどうしても20分以上は費やしています。まだまだ先生方の流れるような診察が必要だといつも痛感しています。この時も問診から始まり、脈舌診、検温から種々の圧痛検出、さらに腹診までわずか7~8分です。一連の症状から、急性膀胱炎や腎盂腎炎の可能性も考えられるため、Sさんは鍼治療後、内科の木村先生の診察も受診しました。急性膀胱炎の診断でしたが、今回は抗生剤を出さずに漢方と鍼灸治療だけで治癒に至りました。

■先輩のメール応答
 ともともグループメールにチョコノートを報告したところ、先輩荒川先生から下記の投稿メールがありました。

 <48歳女性Sさんの「頭がぼーっとする」をどうとらえるか、発熱を想起した場合、体中のどこで感染が起きているのかを探しに行きますが、曲泉・陰谷のなんとありがたいことか! 曲泉・陰谷の反応は、下焦の問題、特に下焦の湿熱のうち、膀胱湿熱の時に高率に反応が現れる、と石川先生からご指導いただいたことがあります。
 確かに臨床で曲泉・陰谷の反応をランダムにみても、膀胱炎の患者さんにははっきりと2穴の反応が著明に出ていることを幾度か経験します。>

■討論
 患者さんは、何か体に変調があっても「気のせいだわ」とか「関係ないと思って」と、全ての症状を話してくれるとは限りません。また、患者さん本人自身も変化に気がついていないことがあります。その変化を見逃さないためには、普段の「問診、身体診察とその評価」をいかに意識的に、小さい違和感も見逃さずに丁寧に扱い、次の行動につなげていくか。

 今回の症例では、圧痛の出現の仕方から全く症状を訴えていない膀胱炎を発見するための思考と身体診察を学ばせていただきました。すぐに体温計を手渡せなかったのが悔やまれます。また、この曲泉、陰谷の2穴の反応についても知りませんでした。下焦の湿熱を疑ったら、この2穴を確認しようと思います。

荒川和子:山田整形外科・胃腸科・肛門科
木村朗子:ともともクリニック院長
石川家明:TOMOTOMO(友と共に学ぶ東西両医療研修の会)代表

・最初のなぜ?を作ろう
木村前回の症例でも「そもそもなぜバビンスキーを診にいったのだろうか」とカンファレンス冒頭に質問をしました。今回も同じような質問です。患者さんが「頭がボーっとする」と訴えたのですが、それを受けて石川先生はなぜ膝痛を聞いたのでしょうか?

諸星そういえば、何も考えていませんでした。

木村せっかくBSLに入っているのですから、一緒に考えましょう。ぼーと入っているのではなく、一緒に医療思考を駆使していなくてはいけません。医療現場で自分の考えが至らないときは、必ず「なぜなんだろう?」と自問自答しなくてはいけません。

石川臨床上では「ん?」が大切ですね。必ず立ち止まるべきです。そのまま流されてはいけません。たいてい、特に難しい症例ほど「ん?」から紐解けることが多いのです。また同時に自分の未熟さへの気づきも「ん?」から始まります。

諸星「そういうこともあるかもしれない」と思って流してしまうところから反省します。

木村それではこまります。先輩荒川さんの<48歳女性Sさんの「頭がぼーっとする」をどうとらえるか>がとっても大切な問かけですね。

石川諸星さんは「<頭がボーっとする>という症状がのぼせではなく感染症による発熱ではないかと考えていらっしゃいました。」とメールで報告してくれたけど、ぼくはそうは考えていませんでした。

諸星おっ! それならば体温計を持ってきたのは何でしょうか?

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