週刊あはきワールド 2018年6月20日号 No.574

【新連載】症例で学ぶ入江FTシステム 第1回

入江式奇経治療による症例(1)

~眩暈・耳鳴り・頭痛・食欲不振・眼精疲労を訴えて来院したOさんのその後~

寺子屋お産塾 田中寿雄 


はじめに

 『あはきワールド』の2018年4月4日号(No.564)と4月11日号(No.565)の「◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例」で、入江FTシステムによる治療法と症例を紹介しましたが、2回の連載で説明するのにあまりにも制約が多く、内容は私の理解の範疇に過ぎません。そして次第に「伝えたいことは山ほどあるのに」との思いが募り、編集部に新たな連載を打診したところ、この企画がスタートすることになりました。

 先生の没後15年が過ぎた今年の1月、御子息から連絡があり「父が残した湯液・鍼灸に関する資料ですが、整理しようと思います。もし関心があればお越しください」という申し出を受けて早々に出向き、未発表のままであった数々の臨床例・研究論文を手にして感慨深い気持ちで持ち帰りました。

 東洋医学に携わっている方々は周知されていますが先生は生前、湯液・鍼灸の各専門誌に投稿を続けられたことから、改めて入江式に魅せられた仲間たちと伝えていきたい思いです。

 今月から入江FTシステムを紹介しながら、その魅力をお伝えできればと考えています。月1回ですが、よろしくお願いいたします。

奇経治療は素晴らしい効果を実感できる治療システム

 奇経治療を臨床に取り入れている鍼灸師の方々は、素晴らしい効果が得られることを実感しておられることと思います。奇経治療は実践してみれば素晴らしい治療シスレムであることが臨床を踏まえて納得できますが、初学者の多くは鍼灸学校のカリキュラムになく、臨床時間が少ないために利用されていないのが現状のようです。奇経は非常にシンプルな処置ですが、一般的な鍼灸治療と異なる一面がありながら、素晴らしい効果を臨床で実感できるパワーを持っています。その一部を列挙してみます。
 
奇経は東洋医学の原理原論である陰陽説に基づいた処置であり本治法である(※『あはきワールド』565号では奇経を紹介された間中博士の考察を一部紹介しています)。

奇経は鍼灸医療が従来の【経穴主体】の対処法だけではなく、経脈を念頭に【流注主体】の視点が、治療基盤となることが臨床結果から納得できる。

奇経は8脈だが、任脈-陰蹻脈・督脈-陽蹻脈・衝脈-陰維脈・帯脈-陽維脈とそれぞれペアにして利用することから、4組の診察・診断で処置できる。

入江式ではI・Pコードを利用して対処することから、鍼術の手さばきによる技法習得の比重よりも、まずは診察力の研鑽に比重を置いて取り組むことができる。

 初学者の方々は以上4点が臨床で実感できることが大切であり、論語読みの論語知らずに陥らないため、最初は効果が得やすい症例から取り組むべきでしょう。難治の病態では術後に症状の改善・消失が得にくいため、診察・診断・処置の検証が容易でないからです。

 以上の理由から、身近な生理現象に目を向けて関心を持つことにより、奇経治療に限ったことではありませんが、鍼灸医療の効果を受診者が体感される機会につなげるという姿勢も必要なはずです。

 具体的には上記4点が日常の生理作用に異常が自覚されるレベルの症状に、納得できる臨床例として取り組む姿勢を持つことは意義があります。入江FTシステムのガイドブックとしてまとめた拙著(『入江FTシステム入門 初学者のための入江式経脈・経別・経筋・奇経治療』)では母乳改善・月経改善を取り上げましたが、睡眠・飲食・排便などの生理現象が奇経処置により、どのような好転が自覚されるか? という視点です。

 特に母乳改善の症例は、I・Pコードを10分間の接触刺激による処置直後から授乳タイムが「癒しの時間」に変化したことを納得できます。ガイドブックでは鍼灸師の本人が奇経治療を「授乳に乳首を当てても泣きじゃくっていた我が子が、処置から3分ぐらい経った頃からスカスカだったおっぱいが満たされてきて、ぐびぐびと音を立てて飲み始め、最後は自分で乳首を離し満足して寝てしまい、明らかに「質」が向上したのだと実感しました」という自身の症例を紹介したのも、そのような思いからです。

症例)
眩暈・耳鳴り・頭痛・食欲不振・眼精疲労を訴えて来院したOさんのその後

 では、多岐に及ぶ愁訴の症例に対して奇経治療で経過観察しようという視点から、『あはきワールド』565号で報告した眩暈・耳鳴り・頭痛・食欲不振・眼精疲労を訴えて来院されたOさん(66歳、主婦)のその後の経過報告です。
 

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