週刊あはきワールド 2018年6月27日号 No.575

【新連載】あはきメンタル~動きの心理編~ 第1回

序章

~暗黙知と日本人の学び~

目白大学大学院心理学研究科教授 奈良雅之 


 スポーツ中継で解説者は、選手のプレーの状況について「動きがよい」「動きが悪い」とコメントすることがあります。選手の動きはパフォーマンスとして競技結果に大きく反映するからです。一方、私たちの臨床でも、「動き」は大きな関心事です。例えば、腰痛を訴える患者さんに、安静時に痛いのか、運動時に痛いのかを問うのは、医療面接における重要事項です。また、動くことの妨げは、日常生活の質を低減させる大きな要因となることから、動きをよくすることに目標を置いた治療も成立しています。

 筆者は、スポーツ科学、心理学領域を経て鍼灸臨床の道に至りました。その間、体育教師、スポーツコーチの体験を通して、「動き」に関する気づきはたくさんあるつもりです。しかしながら、「動き」は言語化しにくいという特徴を持つため、筆者は「動き」に関する内容の発信を避けてきました。

 あはき領域においても2020年に向けてスポーツ支援への関心が高まってまいりました。そこで筆者は、スポーツの根底を支える事象であり、あはきの技法にとっても重要な「動き」という問題に取り組んでみたいと思うようになりました。

 お話していくテーマは「動きの心理」とし、心と身体の両面から「動き」という問題に迫ってみたいと思います。

 今回は序章として、暗黙知と日本人の学びについてお話します。

1.暗黙知とは

 あるコーチは、シュート練習をしている生徒たちのシュートを放つ前の動きを見て、入るかどうかを9割近く言い当てました。生徒たちの上達を日々見ているコーチは、シュートが入ったとき、入らなかったときの動きの特徴をとらえていました。しかし、コーチは、その見極めの根拠を具体的に表現することはできませんでした。

 このような「動き」に関する知、あるいは身体技法のような言葉で表現し尽すことの難しい統合的な知をマイケル・ポランニーは暗黙知と呼びました。
 

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