週刊あはきワールド 2018年7月18日号 No.578

マッスル鍼法実践コラム 第9回

金沢における実技セミナー実践模様

あんしん堂鍼灸院院長 宮村健二 


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〔ご案内〕

 奇数月の第3水曜日号で、「マッスル鍼法実践コラム」をお届けしています。去る7月1日に、筆者の地元金沢で、マッスル鍼法実技セミナーが行われました。浮き管の技術を取り入れた最初のセミナーであり、注目点も多かったので、今回はこれを取り上げます。参考にしていただければ幸いです。

〔2時間の企画でした〕

 このセミナーは、公益社団法人石川県鍼灸マッサージ師会の主催で、午前10時30分から12時30分まで、2時間の企画で実施されました。鍼・灸・あん摩マッサージ指圧のプロ16名の参加で、筆者にとって金沢では初めてのセミナーでした。前半は両手刺手管鍼法、後半はマッスル鍼法を取り上げました。

 たった2時間でどこまでやれるか心配でしたが、「当たって砕けよ」の精神で思い切ってやってみました。35度を超える猛暑の中、汗だくの2時間でしたが、結果は大成功だったと思います。

〔前半の両手刺手管鍼法〕

 会場は長机がロの字に並べられており、参加者一人一人の前に、刺鍼練習器1台とディスポシャーレ1枚、それにディスポの寸3・3番鍼1本が置かれています。筆者はロの字の中に入って、移動しながら全体を進行させました。両手刺手管鍼法のベテランであるT女子と筆者の妻がアシスタントとしてこまごま手助けしてくれました。

 臨床では斜刺が主体ですが、参加者全員が初めての経験なので、扱いやすい直刺から始めることとしました。まずは、弾入です。示指腹を鍼柄頭の上、手根を鍼管下端と同じ高さに置き、肘を手根より低い位置に置くのがコツですと説明しましたが、言葉だけではなかなか正確に伝わりません。一人一人上刺手の形を確かめ、特に肘の位置については十分念押ししました。

 弾入が終わって今度は浮き管です。こちらも言葉だけでは上手く伝わらない人もありましたが、大半の人はスムーズに実行し、皮膚(練習器)の上方2cmにセットできました。浮き管状態では、上刺手も下刺手も鍼にも組織にも触れていないこと、鍼管だけが鍼に触れており、鍼と組織は重力以外何の力も受けておらず、完全に自由であること、したがって組織は仮にひずみがあっても自らの弾性でそれを消し去り、ひずみのない自然体になっていることを丁寧に説明しました。ひずみなしが両手刺手管鍼法の命であり、浮き管がそのキーポイントだからです。

 次は、いよいよ序盤刺入(鍼道ができるまでの10mmの刺入)です。苦労する人もいるかなと心配でしたが、やってみると、全員簡単に田植え圧鍼に成功しました。3mm幅で3回押し下げるという方法です。これぞ浮き管の効用と感動しました。

 序盤刺入ができれば、残る中・終盤刺入は訳なく実行できます。

 そこで、刺鍼練習器を卒業し、今度は筆者の前腕に1本ずつ刺鍼してもらうこととしました。結果から述べると、全員成功できました。初めての1本を受けてみて、気付いたことを書いてみます。

弾入は上手な人が半分くらい。残り半分の人は、叩打が弱い、跳返りが弱いと感じました。痛いのではと用心してのことかと思います。ひずみのない状態では、弾入叩打は痛くないことを、練習を通して分かっていただければと思いました。

浮き管の下での田植え圧鍼は、皆さん上手くできました。ただあまりに鍼がするする入るので、3mm幅を超えて入れ過ぎと感じられるケースがかなりありました。ひずみのない状態では、いかに鍼が入りやすいか、このことを早く自覚して、入り過ぎにならないようにセーブすることが大切と感じました。入り過ぎは、患者さんにとっては、刺激が強い、乱暴な刺鍼と感じられることがあるからです。

弾入に先立って下刺手で鍼管を固定しますが、このとき押手の癖が出て、ついつい力を入れ過ぎる人がありました。長年慣れ親しんだ押手から、いきなり押手をしない方法への切り替えは難しい面があるなと感じました。

〔後半のマッスル鍼法〕

 参加者の中から、モデルを募りました。男性の方が立候補してくださいました。上半身裸でベッド上で側臥位を取っていただきました。もう一人、検査役を募りました。筆者の隣にいて、刺鍼前後の体の変化を触診で確かめる人です。これには女性の方が立候補してくださいました。

 モデルは、右肩がコルと訴えられましたので、右上の側臥位とし、触診しました。検査役の女性は僧帽筋下部の過緊張を指摘されました。筆者はそれに加えて肩甲挙筋縦走部のコリを指摘し、この2カ所を対象にマッスル鍼法を試みることとしました。

 マッスル鍼法は、三つのステージで展開します。このことを説明し、その後に施術に取り掛かりました。

①ステージ1:深部軸索反射性充血を目指すステージ。そのためには、正に両手刺手管鍼法が適していることを強調しました。その理由は、(1)技術が簡単であること、(2)刺鍼感覚が穏やかであること、(3)斜刺の角度の誤差が少ないこと。以上を丁寧に説明しました。

②ステージ2:汚染血ドレナージを目指すステージ。軸索反射性充血で集まってきた奇麗な血液は、コリ筋の中に溜まっている乳酸などの代謝物質を洗い出し、汚れた血液に変身します。そこで、リトミックマッサージの絞り手技を用いて、この汚染血を静脈側へ追い出します。ドレナージは、排液という意味です。ドレナージを怠ると、乳酸などの代謝産物が筋内へ逆流し、コリを再現してしまう可能性があります。

③ステージ3:リトミックマッサージのリズム手技をフルに用いて、快刺激を脳に投射し、高位脳のリラックスを図ります。筋の過緊張は局所だけの問題でなく、高位脳が絡んだストレスなどが背景に考えられるので、高位脳のリラックスを念頭に置いた快刺激マッサージは不可欠のステージです。

 最初に僧帽筋下部です。この筋は、皮膚の直下に存在するいわゆるアウターマッスルです。2寸5番鍼で、外縁のキョロの部分から筋腹を横断するように、12°の筋線維直交斜刺を3本実施しました。この段階でドレナージを施し、検査役にみてもらいました。すっかりコリが取れていたので、驚いた様子でした。

 次は、肩甲挙筋縦走部です。この筋も皮膚の直下に存在するアウターマッスルです。こちらは乳様突起の下から第6頚椎横突起先端を目指し、前と同じく2寸5番鍼で、12°の筋線維並行斜刺を2本施しました。これもドレナージを行った後検査役にみてもらいましたが、コリはゼロとの判定でした。

 快刺激のリズム手技を次々施しながら、ステージ1・ステージ2の実感についてお話しました。モデルはコリは自覚しているものの健康人であり、短時間の施術でコリ取りに成功できたこと、それにしても鍼と筋を長く接触させることで、深部軸索反射が広い領域に誘発され、効果的な筋軟化が得られることをお話しました。

 これは口にしなかったことですが、本当のことをいうと、参加者一人一人全員に被術者になっていただき、その方の主訴に対応するマッスル鍼法を体験していただけると最高だと思います。コリが取れる実感もさることながら、両手刺手管鍼法の穏やかさ、安定感、心地よさを味わっていただくことにより、両手刺手管鍼法の魅力を実感していただけるのにと、2時間という時間の短さにはがゆさを感じたしだいでした。

〔後日談〕

 後日参加者のお一人から、次のようなメールをいただきました(7月2日時点)。

 「明くる日早速臨床で両手刺手管鍼法をやってみました。患者さんは痛いとは訴えませんでした。これからも試してみたいと思います」

 ありがとうございます。たった2時間の実技セミナーでしたが、少しでも皆さんの技術向上に資するところがあれば嬉しいです。

 最後に、東京でのマッスル鍼法実技セミナーは、来る8月5日(日曜)に西東京市民会館で開催します。午前10時から午後4時までです。金沢のときより時間がありますので、より充実した内容を期待しています。
 
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マッスル鍼法セミナー
2018年8月開催
日 時 2018年8月5日(日) 10時~16時
会 場 東京都内
内 容 マッスル鍼法』をテキストにして両手刺手管鍼法と肩背部のマッスル鍼法とリトミックマッサージ等を学ぶ
講 師 宮村健二(あんしん堂鍼灸院院長)
詳 細 http://www.human-world.co.jp/seminer/seminer089.html




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