週刊あはきワールド 2019年1月9日号 No.600

◎◎はこう治す! 私の鍼灸治療法とその症例 File.57-1

婦人科系のトラブルに対する鍼灸治療(1)

~局所も大事だけれど、それよりも大事な全身を診るという思考が私の治療スタイル~

鍼灸治療院和み堂院長 井上和哉 


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1.はじめに

 このシリーズは著名な先生方も多く執筆されており、私ごとき若輩者が執筆させていただくことになり緊張しつつ筆を取らせていただくことにしました。私は現在、鍼灸マッサージ業界に身を置いていますが、以前は全くの異業種にいました。施術を受けることはあっても施術を行う側になるとは全く想像していませんでした。では、なぜ施術する側になったのかというと、それは視力を失ったことがきっかけでした。私が完全に視力を失ったのが十数年前となります。それから鍼灸マッサージ師の養成施設を経て国家試験をパスし、鍼灸院を開院し現在に至ります。これまで多くのご協力があっての現在ですが、私の経験が何かお役に立てれば幸いです。

 さて、タイトルには「婦人科系のトラブルに対する鍼灸治療」と書きましたが、例えば月経前困難症や更年期障害を主訴として来院される患者さんは頚肩部痛や腰痛といった運動器疾患を訴えて来院される方に比べれば数は少ないと思います。しかし、問診を行ってみると程度の差はありますが婦人科系のトラブルを抱えている方は多いと思います。主訴症状が寛解、軽減することはもちろん大切なことですが、患者さんのQOLを考えると主訴ではない症状も改善していくことが望ましいですし、全体の調子が向上していくことでさらに患者さんのQOLは上昇していきます。鍼灸治療の適応疾患と言うとまだまだ肩こり、腰痛、膝痛……というイメージを持った方が多いですが、婦人科系、自律神経系やアレルギーなどにも対応できるということがもっと認識されるようになれば業界の活性化にもなりますし、経営を考える上でもプラス要素は多いと思います。

 しかし、こういったことは運動器疾患だけでなく婦人科系や自律神経系などに対する施術ができ、そう言ったことを患者さんときちんと共有できていることが必要です。また、運動器疾患であれば比較的に局所へのアプローチだけでも一定の効果は出せると思いますが、婦人科系や自律神経系等の施術においては全身へのアプローチが必要になってきます。「病気を診るのではなく、病人を診る」という東洋医学のアプローチを念頭に施術することが重要で、全身を診ることは局所も網羅している訳ですから症状が一局所であったとしても全身で診ていく、全身で診ていくことを実践していると主訴ではない別の症状にもアプローチすることとなり患者さんにも有益となりますし、鍼灸の効果が婦人科系や自律神経系の症状にも期待できるということが認識されていくと思います。

 今回、第1週目は私が普段行っている施術や考え方をお伝えし、第2週目に主訴ではなかった婦人科系のトラブルが改善した症例をいくつかご紹介したいと思います。

2.基本的な考え方

 一口に鍼灸治療と言ってもさまざまな考え方、治療方法があるというのは鍼灸を学んだ方なら周知の事実だと思います。そして、さまざまな治療方法で効果が出ていることも知られていることです。

 私は経絡治療を主軸に行っていますが、中医学で行っている方もあれば現代医学の解剖学や神経学でアプローチしている方などもあると思います。どのような治療手段を選択するかということは学生時代の指導教官の影響が大きいと思いますが、基本的にはどのような方法を選択してもよいと思っています。自身にしっくりくる方法を選択することが大切だと思います。そして、学習や研究を深めていく中で、自身に合わないと思えば他の方法へ切り替えてもいいと思いますし、取り入れられるものは取り入れていけばよいと思います。

 ただし、気をつけなければならないことはベースの考え方、方法をしっかりと定めるということです。上記に「経絡治療を主軸」と書いたのはベースになる治療方法は変えないという意味で、経絡治療は私にとっては屋台骨であり、中心の考え方です。そこに他の考え方や治療方法があったら取り入れられるものは取り入れるというスタンスで、その他はベースの治療に肉付けを行う材料と考えています。

 ベテランの先生方はご自身の治療スタイルが定まっていると思いますが、私もそうでしたがビギナーの方は少しでも治療効果を上げようといろんなところに目移りしがちです。基礎の土台、屋台骨がしっかりしていないとそこにいろいろと肉づけしようとしても身にはつかないですから気をつけたいところです。

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