週刊あはきワールド 2019年3月6日号 No.608

東京2020オリンピック・パラリンピック大会に向けて 第6回

スポーツ選手に対する鍼治療(1)

~東京2020大会に向けて~

筑波大学オリンピック・パラリンピック総合推進室 宮本俊和 


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Ⅰ.はじめに

 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会は、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)」、一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)」、「そして、未来につなげよう(未来への継承)」を基本コンセプトとしている。

 この連載では、これまで、女性スポーツ、パラリンピックスポーツなどの多様性と調和に関連する内容を取り上げた。また、東京2020大会のボランティアは想像した以上の参加申し込みがあり、面接による説明会が始まっている。視覚障害ボランティア希望者は、ロンドン大会を超えて過去最大数となっている。また、選手村での鍼マッサージのボランティアの申し込みも終わり、今後の活動内容が徐々に明らかになってくる。

 今回から数回にわたり、スポーツ選手に対する鍼治療について取り上げる。最初に、1)スポーツ分野全体に起こる鍼治療について取り上げ、次に2)スポーツ外傷・障害について部位別の鍼マッサージ、3)コンディショニングの鍼施術について連載していく。

Ⅱ.現代社会とスポーツ

 現在、スポーツはオリンピックを頂点とした競技スポーツから健康保持増進を目的としたスポーツまで幅広い目的で行われている。また、年齢層を見ても発育期の子供たちのサッカーや野球から、退行性変成を有する中高年者のゴルフや登山、ウォーキングなど様々なスポーツが行われている。しかし、健康を目的に始めたスポーツでケガをし、日常生活上にも支障を来す場合もある。

 超高齢社会を迎えた現在では、医療費の高騰や生活習慣病の増加により、各自が健康を保持・増進し、病気にならないための努力をすることが重要になっている。過剰な栄養に加え運動不足が問題となり、肥満、高血圧、糖尿病、心臓病、脳血管障害が増えている。これらの生活習慣病に対してはメタボリックシンドロームに対する対策がなされてきたが、近年、介護予防対策の観点からロコモティブシンドロームなど、循環・代謝疾患から運動器系の疾患に関心が持たれるようになってきた。

 これらの健康の保持増進や予防の対策に対しては、薬物療法や外科的治療よりも、運動、栄養、休養などによる自己対策や温めたり冷やしたりなどの物理療法や鍼灸マッサージに期待が寄せられている。

 スポーツの分野においても、1)スポーツ外傷・障害などの病気の治療、2)健康状態と半健康状態との間を移行する過程でのコンディションの調整、3)スポーツパフォーマンスの向上など、健康、半健康、病気の各領域での対応が求められている(図1)。
 

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