週刊あはきワールド 2019年4月17日号 No.614

臨床万事塞翁が馬 その11

宗教パワーに脱帽!

大阪漢方鍼医会 森本繁太郎 


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1.Nさんの思い出

 今を去ること34年前ぐらいでしたでしょうか、Nさんという男性の患者さんが来院されました。主訴は「帯状疱疹後神経痛」でありました。

 なぜにこのような病になられたかですが、この方は建築会社の社長を長らく務めていらっしゃいました。65歳を期に社長職を息子さんに譲られて、隠居の身になられたんですが、その途端「帯状疱疹」が発症し、これに続いて「帯状疱疹後神経痛」も発症してしまったようです。とてつもない痛さで夜もほとんど寝られないとのことでありました。大学病院でも色々と治療は受けていらっしゃったようですが、一向に好転しないという事で来院されたようです。

 この患者さん、息子さんに社長職を譲られた事が心の空洞化、そして体調の変化を引き起こしたんではなかろうかと考えましたので、ドーゼに気を配る事を主眼にしながら治療を進める事にいたしました。

2.診察

 全身の切経をしてみますと、痩せていらっしゃいましたので「随分細いんですね!」と水を向けましたところ、「筋肉質ですが、今よりも以前はもっともっと体重はありました!」とのことでありました。つまりは痛さを我慢する事からの消耗などが原因だったんでしょうか、この半年間で相当痩せてしまわれたようです。患部を慎重に切経いたしましたところ、水疱の治癒した跡の瘡蓋が左側の肩から腰まで、そして脇から左胸部全体に、まるでアトピー性皮膚炎のような感じの手触りで残っておりました。それに、その折も痛さを堪えていらっしゃったようで、診察中ずうっと言葉少なな受け答えをされておりました。

3.治療

 その頃の私の実力ではこのような患者さんの場合、何をどうすれば緩解方向に進むのかの見当が全くつきませんでしたので、とりあえず悪化させないことだけに注意を払いながらやるしかないと決めて臨みました。つまりはドーゼ過多にならないことだけに気をつけたわけであります。プラスできれば少々でも楽になってほしいなーとの私の願いもあって、「日に朝夕の2回来院してください!」と告げました。

 治療内容を具体的に申しますと、私は古典鍼灸理論をベースにした治療をその頃からやり始めておりましたので、これだと気や血に問題があるんじゃなかろうか、臓で言えば、肺や肝辺りの精気が虚しているんじゃなかろうかなどと考えて、鍉鍼を使って原穴を主に補い、患部には軽く接触鍼を施す程度にしておきました。

4.経過と結果

 週に2回ないし3回のペースで2カ月間ぐらいは来院されたでしょうか。私もその頃ちょうど自分の治療院の引っ越しがありましたので、公私ともにばたばた状態になっておりました。したがって、このNさんという患者さんがそう言えば最近来院されていないなーとは時折思い出してはおりましたが、申し訳ないことに私の記憶の中から徐々に霞んで行っておりました。

 それから3年以上も経ったでしょうか、ある日の夕方の6時ぐらいに突然そのNさんが私の引っ越し先の治療院の受付にニコニコしながらやって来られたではありませんか。
 

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